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シャチバト考察#2:「先生の一番のファンです」

 どうも、シャチバトの一番の調査員です。[要出典]

 この文句に心当たりのあるそこの皆さん、今回の記事内容がもう分かったんじゃないですか? 分かった人はそういうことなのでもう寝ていいですよ。

 いえ、そうですよね。分かってますよ。内容としては単純明快な今回の記事だけど、前回より理解できる人は絶対に少ないってことは。
 というのも、見出し画像に描いておいた魔法使いのサポメン「コニー・ウィルクス」のことを皆さん知らないんじゃないかってことです。彼女はアプリ版のシャチバトにしか登場しないキャラクターなので……(漫画版にも姿は見せましたが、チョイ役すぎて何も言えることがないです)
 知らない皆さんは攻略wikiで公式絵を見といてください。面倒だぁ? じゃあ俺がサ終前に撮ってたスクショを貼ってやるよぉ!

シナリオ中で立ち絵になっているレアリティRのイラスト

 かわいい……かわいいな……筆者は佐々木知美絵のサポメンが大好きなんですよ。意外と知らない人がいるんですけど、シャチバトのキャラクターイラストには色んな絵師さんが参加しているので攻略wikiから一通り見てみるといいと思いますよ。

 で、今回はこのコニー・ウィルクスに元ネタが存在することが分かったのでお伝えします。

今回のポイント

  • なぜ悪印象しか生まないパロディを試みたのか

  • シャチバトにおいて何が"正しい設定"なのか

  • 厄介ファンは怖い

コニー・ウィルクスとは誰なのか

 元ネタも何も、まずコニーとは何者なのか? と思っている皆さんが多すぎる。それも仕方のないことなので、私から最初に大事なことを伝えさせてもらいましょう。
 彼女はいたって善良な市民です。
 どうかそれだけ信じておいてください。

 コニーの人柄はwikiの説明文の通りとなっています。

独りでも平気なウサギの獣人。
本が好きで大抵図書館にいるか何か読んでいる。
無口で大人しいが人が嫌いなわけではないらしい。

 立ち絵からもわかる通り、コニーは獣人です。アニメしか観ていない皆さんは知らないのかもしれませんが、ゲートピアの民にはなかなかの割合で獣人やエルフなどの亜人種が含まれています。アニメ版及びアプリ版シャチバトのメインストーリーでその存在がガン無視されているのはポリコレ的にどうなの? とか思ったりしますが、後々にしましょう。

 コニーのサポメンシナリオで最も語られるのは「本が好き」という部分です。一般的なサポメンシナリオの形式通りに7つに分かれたイベントの全てが「本」に関わる話であると推定できます。
 出会いイベントでは図書館で本を探している主人公を助けてくれたり、一定の好感度が条件のランダムイベントでは図書館でどんな本を取り寄せるか主人公に意見を求めてきたり、メイン部分となる連続イベントでは行方不明となった推し作家の消息を探ることに情熱を燃やしています。

 この時点で皆さんにもなんとなく分かってもらえると思うのですが、コニー・ウィルクスはサポメンの中でもちょっと掘り下げが足りないキャラな気がしますね。ランダムイベントでは選択肢によって本の好みがわかるくらいしか得るものがないし、連続イベントではコニー本人よりも謎の作家の経歴ばかり暴かれていく始末です。
 獣人として人間種とどれくらい違う暮らしをしているんだろうか? いつも一人でいるらしいけど、冒険者としてカンパニーに所属しているわけだよね。パーティの仲間とはうまく付き合っていけてるのかな? そういうことが全然明かされないんですよ。

一番好きな作家

 連続イベントの中身を紹介させてもらいましょう。
 コニーは魔法使いなのですが立ち絵で抱えている本は魔導書ではなく、彼女がとても気に入っている作家「バックマン」の著書らしいんですね。SSRイラストだとその本、ページ散らばってるんですけど……。
 バックマンという作家はかつてゲートピアの郊外で本を書いていたそうですが、現在一切の活動を停止しており、本名も明かしていないためどこで何をしているのかも不明なのだとか。一番好きな本の続編をどうしても読みたいコニーはバックマン氏の消息を調べ始め、主人公はそれを手助けというか応援することになります。著者近影で顔だけは割れているので卒業アルバムを片っ端からさらっていく作業を一人でやるなど、ちょっと恐ろしくなるような執着ぶりで主人公が手伝えることが少ないという。
 最終的に「バックマン氏は取材の名目で冒専に入学してそのまま冒険者となり、"本物の冒険"を知るためどこかのダンジョンに潜ったきり帰ってきていない」という話を彼(?)の以前の編集担当者から聞かされます。冒専卒業が5,6年前とのことなので失踪から数年経っているように思うのですが、それでもコニーは「強い魔法使いになって先生を助け出す」、「そして本の続きを書いてもらう」と決意を新たにします。

 このシナリオによってこの子がバックマン先生の本に尋常じゃなく執着していることがわかります。どうやらこれがコニーというキャラの核の部分であるようですね。その割に「なぜその本が好きなのか」「その本はどんな内容なのか」をまったく語ってくれないので、プレイヤー的には彼女の熱意を理解してやることができず「なんか謎に特定の作家に執着してて怖いな……」とか思わなくもないのですが。

 それでは、このキャラ付けが何に由来するものなのかという話をしましょう。元ネタの解説に移ります。

『ミザリー』

 スティーブン・キングの小説『ミザリー』をご存じですか。映画だけ観た人が多いんですかね。筆者はホラー映画が嫌いで小説の方しか読んでいませんから、齟齬があっても知りません。悪しからず。

 小説家の主人公が雪道で事故に遭い、そこに居合わせた彼の「ナンバーワンの愛読者」を名乗る元看護師の女にお持ち帰りされてしまいます。一度は怪我を処置してもらったものの、女は主人公が動けないのをいいことに彼に小説を書くように強要。完結済みのシリーズの結末にこの世の終わりみたいな解釈違いを起こして、自分の意に沿う続編を何としても作らせようとするのです。

 ナンバーワンの愛読者様による支配、彼女の狂気、それから逃れるための主人公の奮闘がこの小説の大部分を占めているわけですが……なかなかに怖い作品ですね。
 何が怖いって、この厄介な愛読者の名前が「アニー・ウィルクス」だってところですよ。 

 サポメンシナリオの中で、コニーがこんなことを口にするシーンがあります。

「私はただのファンです
いえ…郊外のころからバックマン先生の一番のファンです」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

『コニーの決意』

一番のファン」というのは「ナンバーワンの愛読者」と同じです。訳し方の問題ですね。
 台詞と名前が一致してしまったので偶然という可能性は消えました。コニー・ウィルクスは『ミザリー』のアニー・ウィルクスを明確に意識して作られたキャラクターである、ということが断言できると思います。

これが何を意味するのか分かってます?

 なるほど、作家先生の大ファンで続編を求め続けるその心はいい方向に働けば魅力あるキャラクターに昇華できるかもしれません。しかし意見を述べさせてもらうなら、主人公の成長を手助けするサポートメンバーに、主人公に危害を加える狂人の名前を付けるべきではないのでは?
 しかもアニーという女は主人公の書く小説に出会う前から精神に問題を抱えていて、看護師だった時期ばかりか、子供時代から殺人を繰り返してきたどうしようもない残虐性を持つキャラクターなのです。コニーはまだ自分の憧れる先生に出会っていませんが、アニーの性格を反映しているならすでに内に凶悪性を秘めていることになってしまいます。いえ、反映されていないことはシナリオを読めばわかりますが、それが更なる謎を生むのですよ。

 アニー・ウィルクスの捻じ曲がった精神状態と殺人歴を引き継がない時点で、その原因となるアニー自身の生まれつき過大なこだわりだったり、それによって周りの人間から孤立していった経験だったりをまとめて放棄することになります。
 つまり、コニーは本当に「先生の作品が読みたい!」だけを元ネタから引き継いだのであって、その想いの源泉が絶たれたままになっているのです。
 なぜか、あの本が好き。なぜか、独りが好き。前述のとおりバックマン氏の作品にこだわる理由が他に与えられているわけでもないので完全に空白です。
 キャラ萌えの妨げになる闇の部分をすべて捨てた結果、生まれたのは行動原理のわからない薄味のキャラクターでした。……合理的じゃないですよね? 「誰かの熱烈なファン」という属性を持たせたいだけなら、もっと気兼ねなくパロれるキャラクターがいるはずです。わざわざアニーから取ってきた意味が分かりません。
 何かどうしてもアニー・ウィルクスをモデルにしないといけない理由があったようです。筆者としてはそれが何であれ、『ミザリー』をしっかり読んで考えた結果の決断ではないと言わざるを得ません。
 だって、よりにもよって『ミザリー』ですよ? これを読んだというなら、筆者のような"愛読者"が「こんないい子になんで殺人鬼の名前付けてんの? 燃やすぞ!」とか言って厄介化する可能性について一瞬でも考えないわけがありません。あるいは考えた上でそういった反応を望んだのかもしれませんが……

 いえ、ちょっと文句が出てしまいましたが、ソシャゲのキャラクター作りなんてきっと複数人が出した案を複合したり、途中まで考えていた展開が白紙になったりするのでしょう。事態はもっと複雑なのかもしれません。パロネタの考察ってどうしてもメタ的な事情を考えないといけないので疲れますね……

ここから余談である可能性

「コニーのモデルはアニー・ウィルクスである」という事実はもう示されたのでこのnoteの主題は終わってしまったような気がしますが、もう少し話を続けましょう。
 ここから先は彼女が殺人鬼のパロディキャラとなった理由がなんであったのか、何かの間違いではないのか、というのを探るため彼女についての情報を掘り下げていく空間になります。

亜人種の扱い

 メインシナリオに亜人種が出てこないという話はすでにしましたね。開発資料の中に、エルフ系の種族草案が入っているのはご覧になりましたか?

 シャチバトはアプリの公開前に「開発資料ガチャ」を開催しており、「採用」と書かれたキャラや技はそのままゲーム内に実装されているのですが……
 なぜかここでは「お蔵入り」とされています。事実としてアプリ版に数体、エルフのサポメンは実装されているのですが……じゃあ彼らは一体?

 どういうつもりかは知りませんが、公式によって実在サポメンの存在を否定してまで明言されている以上「エルフの存在しない世界観が正しい」、「アプリ版に存在するエルフのサポメンはボツ案を惰性で実装したようなものである」ということは確かであるのでしょう。こうなるとエルフをはじめ亜人種の存在しないメインシナリオとアニメ版はシャチバト的に"正しい"世界観を反映していると捉えることができますから、あらゆる亜人種が存在しないことが"正しい"と考えて間違いないと思います。(メインシナリオに登場する獣耳の生えた女神は「獣人」ではなく「ケモミミ」と表現されています)
 獣人であるコニーの姿はメインシナリオで亜人の存在がボツになる前の、開発初期にデザインされたものなのでしょうね。

模倣の世界

 ゲートピアという世界はそれ自体が現実のパロディと言ってもいいような状態です。荒廃していた世界がゲートの恵みで蘇ってから、ダンジョンからだけでなく私達の住む現実世界から流れてくるさまざまなモノが街の発展に寄与しているために現実のモノや概念を模倣しがちという描写があります。
 これについても開発資料があります。

この世界の装飾・持ちものについて。
この世界の人々、または魔物が身につけているものの法則、またはこの作品のビジュアルの特徴づけについてです。
この世界では、『浮     世界か ら』『異次元から』いずれも   『     ある  物品』が発掘されています。それらが何のために作られたのか知らないまま、造形を気に入って身につけています。
主に『カギ』『ネジ・ボルト・ナット』『コイン』『各種金属部品』などです。車が丸ごと発掘される事もあるでしょうが、その辺はすぐに分解されて出回るような感じです。

古文書や言い伝えの中に、かつての文明(または異世界)の情報をもとに「こんなふうだったんじゃないか」と、魔法文明で再現しているものがあります。
この再現は不完全なもので、オリジナルと同等ではないか、もしくはまったく別のものになっていたりします。例えば『スマホ』もなんとなくスマホっぽい機能が使えるようになっているが、オリジナルそのものではないという感じです。

 文字が被って見えない箇所もできるだけ読み取ってみると、こんな内容です。
 段落ごとに「別の世界から流れてきた物品をそのまま使っている」場合と「別世界から流れてきた情報をもとに物品を再現したものを使っている」場合について説明されています。前者ではサポメンや他の登場人物のデザインを見れば金属部品をアクセサリーのように身に着けていることが確認でき、後者のスマホのような道具についても「端末」とだけ呼ばれるものがサポメンシナリオ中に存在しています。サポメンシナリオの世界観は一部正しくないみたいなのでこれをもってこの開発資料の文章が現行設定に採用されたと言えるわけではありませんが、亜人種同様実装されたのだからコニーについて語る上で取り上げるに足るものでしょう。

 現実世界からモノが流れてくるのはわかりましたが、では『ミザリー』はどうでしょうか。ゲートピアで使われている文字はアルファベットを改造したようなものですが、原語版でも和訳版でも、小説が流れてきたとしてまず解読することができるのか?
 正しい世界観の元に語られているメインシナリオの一節から、どのように設定が反映されているのか見てみましょう。

「そんな暗い顔をしてるのはユトリアらしくないって
大変かもしれないけど 諦めたらそこで試合終了だよ
……って 昔読んだ歴史書にそう書いてあった気がする」

アプリ版メインシナリオ『博物館と相続税』

 アニメ版の展開にも原型が残っている、相続税に悩むユトリアを主人公が励ます場面です。
 ただ台詞のパロディをしたいだけなら「昔読んだ歴史書に書いてあった」という部分は必要ありません。つまり少なくとも、ただのパロディじゃなくて登場人物も意識している上での引用だよと伝えたい気持ちがあるようです。アニメ版ではその場にいた社員たちがこの台詞を知っている描写も追加されていました。
 ……ゲートピアの民は現実の娯楽作品を手に入れて読むことができるようです!
 しかし主人公はこの台詞を漫画で読んだのではなく歴史書で見たと言っていますから、『スラムダンク』そのものに触れたわけではないらしいのが気になるところです。あるいは漫画の内容が別世界で実際に起きたことだと解釈されて歴史書扱いになった可能性が? ちょっとピンと来ないですね。

 コニーのことを考えると、彼女はゲートピアで実際に生まれ育っている市民でありながら、現実世界の作品の登場人物と似通った状況に置かれる存在です(獣人なので現実世界から転移してきた可能性がありません)。そして当然彼女は元ネタであるアニー・ウィルクスの存在を知りません(知っていたら推し作家が行方不明になっている状態でアニーの台詞を使うのははばかられますよね)。名前が似ているのもまったくの偶然であるはずです(自分の子供に殺人鬼と似てしまう名前を付けようとは思わないですよね)。
 よって、コニーのシナリオにおけるパロディの方式もメインシナリオの状況と同じに考えることができません。解説しておいてなんですが、ゲートピアに元ネタが流れ着いているかどうか関係なく無意識のパロディとしか思えない状態ですね。ここでも彼女はシャチバトの現行設定から外れてしまっていると。
 これについてはもう少し情報を集めて、シャチバトにおける正しいパロディの形を学んでいく必要があるようです。

悪役であること

 今更なのですが、もっと波風立てずに『ミザリー』からキャラ案を持ってくる方法があります。コニーの方ではなく、彼女の追っている作家「バックマン」の方を『ミザリー』の主人公である「ポール・シェルダン」に寄せればいいのです。それから「先生の一番のファン」はアニー以外にも作中で数々のポールガチ勢が自称する肩書であるため、コニーの名前をアニーに寄せず比較的無害なファンの一人をもとにした存在として扱えば引用した台詞も問題なく使用できます。
 しかしそうしていないので、この作品から着想を得たいわけではなく、台詞が使えればいいわけでもなく、アニーを使うことに意味があるということかと思います。本当に何ででしょうね?
 恐らく、サポメン悪役をモデルにするというのが重要ということなのか……

サポートメンバーという立ち位置

 筆者としてはまずここから疑いの目を向けたいですね。ガチャで引いたキャラがサポメンになるってどういうことだよ? と。
 シャチバトは社員を育成して冒険に出して会社を大きくするゲームですが、ガチャで出てくるキャラは社員として迎え入れられるわけではなく社員にスキルを伝授するサポートメンバーとなります。この仕様、妙だと思いませんか? 普通に社員として使えた方が嬉しいですよね。ピンと来ていない皆さんがいるかもしれませんので、さらに妙な要素をあげつらっていきましょう。

  • サポメンはそれぞれ「秘書スキル」を持っており、戦闘要員とは別に"秘書"に設定することでダンジョン内でマジューへの攻撃や社員へのバフなどの技が使えます。まず社員ではないのに秘書?

  • レアリティSSRのサポメンを手に入れるとそのサポメンの戦闘ボイスが使えるようになります。どういうことかと言いますと、冒険に出す社員はサポメンではありませんが、技を放ったりする時に発する声をサポメンの声に設定できるのです。だから……戦闘ボイスを撮ってるならそのまま社員として採用できた方がいいですよね?

  • 戦闘ボイスの仕様に合わせてなのか、一部サポメンの「なりきり装備」が販売・配布されていました。冒険に出す社員はサポメンではありませんが、サポメンの格好をさせてサポメンの声で戦わせることができるのです。だから、そこまでするくらいなら……

  • スマホアプリ版のサービス終了後に配信されたSteam版シャチバト『マジューウォーズ』において、一部サポメン本人を仲間に加えることができます。その見た目はなりきり装備と近似はしつつ、顔立ちなどブラッシュアップされていました。

 何が言いたいかといいますと、サポメン達は本来社員として雇えるキャラとして作られていたのでは? ということです。
 どういうわけかその方向性がボツになり、途中まで作っていた3Dモデルや収録していた戦闘ボイスをなんとか再利用したためにこのような形になったのではないでしょうか。今までの話からコニーはおそらく初期に考案されたキャラなので、この方向性に沿って社員になる想定だった可能性が高くなります。
 そうなると彼女の元ネタにアニー・ウィルクスを使うことの意味が少し変わってくるかと思います。

白か黒か

 この説に従って、悪人を元ネタにした社員を雇うことになるプレイヤーの会社について考えてみます。
 アプリ版のプレイヤー名はメインストーリーを読む際に主人公の名前となるため、プレイヤーの経営するカンパニーは一応「キボウカンパニー」ということになるのですが……前述のとおり元々のキボウ社員はサポメンとしての参加のみであることなどから、この前提に則って考えるのはやめた方がいいでしょう。あくまで運営としてはそれぞれの社長が自由にカンパニーを育てていくことを望んでいるように感じます。
 筆者の目指す結論を示しておきましょう。
 シャチバトの初期案として、「問題のある社員を集めて使い潰すブラック企業を経営するというコンセプトがあったのではないでしょうか?
 
それならば味方となるキャラクターを殺人鬼を元ネタにして考案する意味がわかるというものです。本当はコニーの性格・言動ももっと過激に作られていたのではないか、そして「正しい世界観」とともにゲームシステムが出来上がってくるとその案は消滅し、コニー・ウィルクスは当たり障りない善良なキャラに修正され、名前と台詞一つが元の設定の名残として残されたのではないか……こう考えればコニーに関する問題はおおよそ納得がいくものになります。
 開発資料からプレイヤーのカンパニーをどのような方向性にするかに関しての情報は得られないので、これだ! という根拠は出せないのですが。

 コンサルタントとしてアプリ版の開発に携わっていた人の発言からすると、プレイヤーのカンパニーはホワイト企業であることが望ましいようです。

 ここで言われているのはシャチバト独自の要素「残業システム」のことです。冒険中、送り出した社員達には8ターンの労働時間が定められており、戦闘が長引いてターンを使い切ると残業代が発生するという仕組みです。ただし戦闘に出るメンバー4名に加えて「控え社員」4名を設定することができ、控えと入れ替えて休ませた社員は残りターン数が回復するため適宜交代させれば永久に残業扱いにはなりません。リニューアル前のシャチバトは戦闘に敗北しなければ一度の冒険でどこまでも深くダンジョンを潜っていくことができる仕様もあったため、休憩を取らせたり残業代を支払ったにしても実態は死ぬほどブラックだと思います。
 そしてこの残業と控え社員のシステム、リニューアル時に廃止されています。

 辛かった。(プレイヤー並感)
 この仕様のせいでこまめに社員を交代しなければならず放置できないというデメリットは確かにありましたが、そこまで放置したいわけでもなかったので。何より残業システムは「経営してる感」を増幅させるものなのでゲーム体験としてあった方が楽しかったですよ。
 広報さんの言い方的に残業代を払わなくてよくなったのはハッピーなこととして扱われていますが、つまりいくらでもサービス残業させるブラック企業になることをプレイヤーに推奨していませんか? この仕様変更と共に一度に潜れる階層にも制限がついたので結果としてはマシな労働環境になったのかもしれません。しかしリニューアル前にしても後にしてもホワイト企業とは言えない状態に見えます。コンサルタントの人の方針がいまいち開発チームに伝わっていなかったのか適当に言っただけなのか。

 初期案がどうだったのかという答えにはなっていませんが、若干のブラック要素とコンセプトに対して実際の運用が伴っていないような雰囲気が確認できました。これには今まで見てきた世界観の揺らぎに近いものを感じます。もっと開発資料があれば分かってきそうだったのですが、今のところ筆者の主張に合っている感じではないので残念です。
 最初からプレイヤー側が悪の組織のような存在であれば、雇う冒険者にどれほど問題があっても受け入れることができると思ったのですがね。そう上手くはいかないものですね。
 しかしコニー・ウィルクスがとことんシャチバトの現行設定から外れた存在であることは分かりました。サポメン全般のシナリオについてメインシナリオと世界観を共有しているとは限らないことを心に留めておくのは今後の考察に響いてきそうです。

 ……でもせめてアプリ版の中でくらい設定を統一しろよとだけは言ってもいいですよね。

もう一つの候補

 一応言及しておきますが、コニーの名前に似た人物は他にも検索に引っ掛かっています。SF小説家のコニー・ウィリスですね。
 せっかくなのでこちらも著作を一冊手に入れて読んでみたのですが、まあ、類似点は見つかりませんでした。普通は作品を読んだからって作者本人のことは分からないものですよね。
 まあ、たとえ良いものでも悪いものでもこれ以上元ネタが出てくることは望むところではないので、あまり深掘りするモチベはありません。コニー・ウィルクスがコニー・ウィリスとアニー・ウィルクスの複合だった場合、この子自身の要素が名前に一切含まれていないことになるので、俺はこの少女をなんと呼んで可愛がればいいのか分からなくなってしまいますから……。

終わります

 やたらと長くなってしまいましたがコニーについてこういう存在であると確かに結論付けられることがないのでオチはありません。初期の開発コンセプトについてはこちら側からは不透明すぎて文句も言いにくいし。

 正直元ネタを調べたことでコニーに対する感情が複雑化していますが、今の俺が彼女に何か言えることがあるとするならば、推しは遠くから静かに見守ろうなってことですかね。そんなこと言っても目を離した隙に命の危険に晒されているとなったら動くしかないという気持ちはわかりますけど。
 それにしてもコニー以外は何をやっているんだろう。元編集者が捜索隊を出してもらったと言っているんですが、潜ったダンジョンが分かっていれば何らかの痕跡くらい見つかるはずですよね。捜索が難しいほどの危険度と広さを持っているダンジョンなら免許取りたてのソロ冒険者が挑むのを周りの人間や衛兵が止めるべきだし、目立つので他の冒険者から目撃証言くらい上がるはずです。ならば実力のある他のパーティに寄生しつつダンジョンに入ってから離脱して行方をくらましたと考えるのが自然か。
 バックマン氏は運動が苦手で卒業間近まで補講を受けていたという情報があるんですよ。なんで一人でダンジョンの深くまで行くという発想になる? そして一人でダンジョンの深くまで行こうとする運動が苦手な人間をどうして誰も止められない? コニーの件とは別にこのストーリーには独自の問題がまだまだ隠れているんですが、答えが見つかる目途が立たないので取り上げません。

 次はもう少しライトな話題を持ってきます。何かもう疲れてきたので次がいつになるか分かりませんがね。

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