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2022/09/21 @上高地(後編)

前編からだいぶ間が空いてしまった。
後編として、河童橋から明神地区にある穂高神社奥宮まで歩いたときの記録を書き残しておく。

小梨平~穂高神社奥宮

@小梨平

小梨平野営場の中を通り抜け、梓川沿いを歩いていく。沿いと行っても、距離があるので川はしばらく見えない。
道は整備された1本道なので迷うことはないが、足元は大正池~河童橋に比べると小石がごろごろしていて歩きにくいので、靴は街用のスニーカーではなくトレッキングシューズが良いだろう。
小梨平を出発したのが12:30ころ、天気はまだ小雨で空は暗かった。

小梨平野営場からしばらくは梓川は見えない

変化の乏しい山道を歩いていると、つい地図アプリなどで現在位置を確かめたくなる。
少しでも目的地に進んでいる確証が得られない不安に負けて、地図でスタート地点からほとんど進んでいないのを確認し、先の長さに諦めそうになる。
心がよわすぎる。

歩いているときに感じることは、仕事のやり方にも似ている。
今やっていることが全体のどの辺りなのかをいつも知りたいし、確認するたびに先の見えなさに愕然とする。
山を歩くようになってから、「でも、ここで諦めずに進めば、見たい景色が見れるしな」と気分を切り替える言い訳ができた。
サンクコストに負けずに悪条件であれば引き返す勇気も学ばなくては。

@下白沢の押し出し

そうこうぼんやり考えながら歩いているうちに、また木の間から梓川が見えるようになってきた。

梓川の流れは穏やか

川の向こうに何か大きなものが鎮座しているのを感じて、顔を上げる。

前穂高岳

穂高がこちらを見下ろしていた。
いつの間にか雲が切れ、青空を背負っている。
「穂高は山好きのあこがれ」というのは何度も聞いていて、そのたびに「そうなんだー」くらいの薄いリアクションしかできなかったわたしでも、実際にその姿を目の前にすると、その神々しさに圧倒される。
好きでも嫌いでもないアーティストのライブに行って、そのパフォーマンスに圧倒されているなかで、なんだかステージ上の彼と目があった気がした瞬間のような。惚れてまうやろ。

この辺りは下白沢の押し出しと呼ばれているよう

河童橋に着いた頃は悪天候だったけれど、ここまで来て雲が切れ、青空がでてきた。
梓川の青、空の青、山の青のコントラストを、いつまでもこの眸に写していたい。

@明神

小梨平からおよそ1時間ほどで、明神館という小屋に着いた。
その脇から穂高神社奥宮の参道になっているよう。
小屋の前に掲げられていたお品書きに「おしるこ」の字を見て、逡巡したが、帰りのバスの時間も気になったので、ひとまず先に進むことにした。

穂高神社奥宮への参道

明神館から歩いてすぐ、梓川にかかる橋が見えてくる。明神橋だ。
多くの人が足を止め、橋の正面に見える前穂高岳を仰ぎ見ている。

明神橋と前穂高岳
威風堂々

@穂高神社奥宮

橋を渡って左手に進むと、やがて穂高神社の鳥居が見えてくる。

ここから先は神域

鳥居の前で一礼して進む。
入ってすぐ右手に伝説の山小屋、嘉門次小屋がある。これはあとで。
穂高神社は明神池の湖畔に建立されている。
拝観料500円を納めて、パワースポットと言われる明神池のほとりに入る。
下白沢の押し出し、明神橋からの眺めからすでに息を吞むような神々しさが溢れ出ていたが、明神池はそれがそのまま満ちたような池。

人々の祈りが集まるところ
明神池

長野県に住んでいると、「山が人を守ってくれる」という信頼感みたいなものをときどき感じる。
自然災害などの災いからわたしたちを守ってくれるという感覚を、現代・令和の長野県民も心のどこかに残しているところがある。
その分、「楽しみとして山に登る」ということに抵抗感を感じているところもある。
日々、県内ニュースで山岳遭難が報じられていることもあるし、山の恵みもそこをよく分かっているからこそいただけるもので、安易に入ることは荒らすことと同じ、という意識が強いと思う。

この世にはいいことも悪いこともあって、それはこれからもずっと変わらないだろうけど、この世がある、そこにわたしがいられたということを感謝したい。
明神池の荘厳な空気に触れて、ふいにそう思った。

穂高神社の由来などは、公式サイトをご覧ください。

さて、俗世に戻って、嘉門次小屋に入る。
ピークタイムはとうに過ぎていて、人はまばら。
名物は岩魚の塩焼きで、その他にさまざまな蕎麦がいただける。
明神館のお品書きが頭に残っていたわたしは、食券機に「おしるこ」の文字を見つけるやいなや、押していた。
温かいおしるこの優しい甘さが沁みた。

嘉門次小屋

ちなみに嘉門次とは、上高地が世界に名を知られるようになったきっかけ、ウォルター・ウェストンの先導をした人で、その人が開いた小屋がここなのだという。

再び、河童橋へ

来た道の、梓川の対岸の道で河童橋へ向かう。
ほとんど川を左手に見ながら進む道だ。
行きの道は下白沢の押し出しまで変化の乏しい山道だったから、こちらのほうが飽きずに歩ける気がする。ほとんどきれいな木道が敷かれていて、スニーカーでも問題なく歩けそうだった。

河童橋まで戻ってくると、空は快晴。
たった3時間でここまで景色が変わるとは。

涸沢をのぞむ
宇宙を感じるような空の色

最初に大正池でバスを降りたときには、「まあ、来れただけでも」という思いだった。それが1日でこんなにもいろいろな顔をみることができて、本当に幸運なタイミングだったと思う。

余談

河童橋脇のホテル白樺荘のミルクジェラートがとてもおいしかった。
またアイスがおいしく食べられる季節に来よう。

ホテル白樺荘のミルクジェラート(450円)

おわり

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