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DDT7.23両国国技館大会雑感

DDT夏のビッグイベント「レッスルピーターパン」。
2020年無観客開催、2021年は川崎球場、2022年大田区総合体育館と来て、ようやく両国国技館に戻ってきました。
一応去年3月にも両国でやってるんですけど当時はマスク必須・声援NGでしたからね。
「戻ってきた」感があります。

両国大会の時はいろんな方にお誘いのお声がけするんですけど、コロナ禍の時は参加を見合わせてた方が今回久しぶりに参加してくれたりして、それもまた嬉しかったりします。

今日はダークマッチなし。
入場ゲート上を暗幕で覆って2割くらい削減したものの、それ以外はほぼ入ってた。
デスペラード出場で来た人はどれくらいいたんだろう。
すぐ後ろには川松議員応援団のみなさんがいました。

○オープニングマッチ 30分一本勝負

正田壮史 vs 須見和馬

DDTビッグマッチで若手同士のシングルは意外に新鮮。
須見はジュニア専任でできる団体に一年くらい預けたらどうかと思う。

○第二試合 30分一本勝負

高木三四郎&川松真一朗&夢虹 vs 高梨将弘&小嶋斗偉&瑠希也

夢虹の身体の軽さを見て「若いっていいなあ」と年寄りらしいことを考える。

○第三試合 3WAY6人タッグマッチ 30分一本勝負

土井成樹&大鷲透&平田一喜 vs 藤田ミノル&MJポー&KANON vs 鈴木鼓太郎&岡田佑介&高鹿佑也

ごちゃごちゃしてたけど「土井はここのポジションでいいのかな」と思ったことは覚えてる。

○第四試合 30分一本勝負

飯野“セクシー”雄貴&男色“ダンディ”ディーノ&今成“ファンタスティック”夢人 with カチキレ久弥 vs 彰人&高尾蒼馬&下東由朋 with ブチギレ氏原

ブチギレ氏原さんというYouTuberを今般まで知りませんでした。
「来たコメントすべてにブチ切れる」って体力使うだろうなあ。
しかしいろいろよくまとめるよね。まとめ力がすごい。

で、下東さんは「飯伏プロレス研究所」所属だそうですが、所長はいつDDTに出てくれるのか。

○第五試合 スペシャルタッグマッチ 30分一本勝負

ちぃたん☆&ポコたん vs アンドレザ・ジャイアントパンダ&スーパー・ササダンゴ・マシン

巨大パンダが人間を捕食するのを見せられたり、飲み込んだ人間を吐き出したり。
「あれは本当に目の前で起きたことなのか」という意味合いで夢のような試合でした。ドリームマッチ。
毎度毎度村田さんの実況が素晴らしい。
「捕食の音は何だったのでしょうか」
ホントだよ!

ポコたんが場外ダイブして、わりとシビアに落っこちたのですが中の人は大丈夫だったのでしょうか。

○第六試合 KO-D6人タッグ選手権試合 60分一本勝負

<王者組>樋口和貞&中津良太&石田有輝 vs 坂口征夫&赤井沙希&岡谷英樹<挑戦者組>

赤井さんが11月での引退を発表して、現役生活での思い出を聞かれて「6人タッグのベルトを取れたこと」と答えて、会見の場で大社長から「7月の両国でタイトルマッチやりましょう」と提示されて決まった挑戦。
赤井さんの引退には「もったいない」「本人が決めたなら」「誰も歩んだことのない道をよく10年歩んだな」「もちろんそれは団体のサポートもあったけど」などいろんな気持ちが沸き上がる。
華のある人なんで、惜しい気持ちがあるけど、本人が言うように「きれいなまま終わりたい」んでしょうね。
引退記念写真集が想像の10倍露出多めでビビりましたが。8月10日講談社から発売予定。

試合はそんな赤井さん以上に、最後の岡谷と石田の攻防が白熱してて、この二人もちゃんと育ってるんだな…と感慨深かった。
石田はもうどすこいやめて次のファイトスタイルに行く段階だと思います。

○第七試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

TAKAみちのく vs  MAO

MAOの子供の頃の憧れがTAKA,みちのくだった、ということで組まれた試合。

インタビューでTAKAが「両国で試合したことは数限りなくあるけど、シングルはスーパーJ-CUPのブラックタイガー戦と、みちのくプロレスでのサスケ戦くらい」と話してて意外だった。

50歳になったTAKAみちのくは不思議な選手になってて、職人ポジションなはずなんだけどそういう風にも見えないし、バイプレーヤーと言うにはそれなりに自分で目立とうとしてるし、見た目がそんな変わらないけど身体は確実にボロボロになってて(宇宙人プランチャとケブラーダに行くぞと見せかけて行けない藤波辰爾ムーブ)、でも団体の社長だったりして、不思議なポジションになった。
結局宇宙人プランチャはMAOが同型の技やって(反転加わってた)、みちのくドライバーもMAOがやって(雪崩式も)、最後はMAOがフェニックススプラッシュ。
それはあの人の…!
ただあんまり当たってなかった。もちょっと慣れが必要かな。

MAO、色気が出てきた。
そろそろKO-D無差別級に挑戦してほしい。

○第八試合 スペシャルタッグマッチ~納谷幸男復帰戦 30分一本勝負

HARASHIMA&納谷幸男 vs 秋山準&入江茂弘   

納谷復帰戦。
同時に「おかえり入江茂弘、DDT5年ぶり参戦」なはずだったが特に触れられず可哀想。
納谷とバチバチやっていた。
最後は入江が納谷にラリアット。
DDTの会場に筋肉少女帯の「T2(タチムカウ2)」が流れたのはいつ以来だろうか。
入江は嬉しそうだったが、秋山は何か不服そうだった。何かあったのか。

○第九試合 スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負

KONOSUKE TAKESHITA vs 上野勇希

AEWでケニー・オメガに反目し、ジョン・モクスリーのヒールユニット「ブラックプールコンバットクラブ」に加入(先日で脱退したの?)、ヒールになって帰ってきた竹下。
そこに「どうなったのか確かめたい」と対戦を直訴した上野。
いつか両国で組まれるだろうと思っていた同級生対決はやや意外な形で実現した。

竹下は見た目こそAEWで戦ってる姿のままだが「KONOSUKE TAKESHITAも竹下幸之介も違いはない」と発言。
「こっちは世界を変えようと戦ってる。上野がついて来られないようなら叩き潰す」と。
2年前のD王グランプリ決勝で当たったときの同級生対決のエモい匂いは、少なくとも竹下からはなくなっていた。

AEWに行ってからも竹下の戦い方は大きく変わっていない。
ただシャープになった。無駄なことをやらなくなった。
そして上野は上野で成長してて、そんな竹下を不意の反抗などで何度も揺さぶっていった。

しかし体格差が徐々に現れる。
竹下がフィニッシュに使ったのは、トップコーナー上から真下に落とす垂直落下式ブレーンバスター=brainbustaaaaahhhhh!!!!! ─竹下の2012年のデビュー戦の相手、エル・ジェネリコの技だった。

竹下がこの技を使ったのは二度目。
一度目は2017年のマイク・ベイリー戦。それ以来だ。
しかし両国でこの技をやろうとしたことが過去一度だけある。

2014年、まだ大会名が「両国ピーターパン」だった頃。
デビュー2年目の竹下は当時すでに業界のエースだった、新日本プロレスの棚橋弘至と戦った。
試合終盤、当時のフィニッシュだったジャーマンスープレックスを棚橋に返された竹下はコーナーに持ち上げてbrainbustaaaaahhhhh!!!!!を狙った。
しかし棚橋はそれを受けず、そこから反撃されて最後はハイフライフローで敗れた。

あの日、試合後に居酒屋で飲んでて、それも終わって数人で両国駅前のサンマルクカフェでお茶を飲んでたら、店内に何人かのDDTの選手が入ってきた。
同行の誰かが「あ!」と言ってしまい、それに気付いた選手の一人(確かアントーニオ本多選手だった)がこちらを見て、こちらの着ているTシャツを見て「あ、見つかっちゃった」という感じになり、なんとなく私が「お疲れさまでした」みたいな感じで話しかけにいって、一緒に写真を撮ってくれないかお願いした。
その時一緒に写真を撮ってくれた選手と、「俺はいいわ」みたいに輪から離れた選手の二手に別れたのだが、写真を撮ってくれたグループの中に竹下選手がいた。

撮影後、私はお礼を言ったあと竹下選手に「最後、あれ(やろうとしたのは)brainbustaaaaahhhhh!!!!!ですよね?」と聞くと、竹下選手は「あれが決まってればなあ」と悔しそうに指を鳴らした。
その仕草が年齢相応に若かったのを覚えている。

2023年の両国で、竹下幸之介が上野勇希にこの技を使った真意はわからない。
けど、なんか「這い上がってこいよ」的なメッセージに思えた。
ただ勝つだけなら普通の技だったんだろうし。

試合後、竹下が上野に握手をしようと手を差し出すと、少し考えてから上野は応じようとする。
そこに上野のセコンドについていた同じサウナカミーナの小嶋が割って入って竹下の胸を突いた。
何があったかはわからない。
ただグループで一番下の小嶋がそういう振る舞いをしたことに本来ならリーダーであるはずの竹下は怒るでもなく「それならいいよ」という態度でリングを後にした。
何か変わろうとしている。

そしてDDTの歴史を踏まえるなら、この試合は本当ならセミファイナルでやってほしかったなとちょっと思った。

○第十試合 DDT UNIVERSAL選手権試合 60分一本勝負

<王者>遠藤哲哉 vs マット・カルドナ<挑戦者>with ステフ・デ・ランダー

WWEで長年ザック・ライダーとして活躍、現在はアメリカインディーシーンの大物選手というマット・カルドナを迎えたタイトルマッチ。
カルドナがセコンドのステフとともにクラシカルな「アメリカの悪役」を演じて、分かりやすいベビーフェイス対ヒールになっていた。
試合は終盤にセコンドのステフが遠藤を誘惑し、キスしたところで(どうしても男色ディーノのリップロックを思い出してしまう)動きの止まった遠藤をカルドナが畳み掛けて勝利。
アメプロだ。
同行の一人が「遠藤に傷がつかない負け方やね」と言ってたのが印象的。

ところで遠藤は襟足だけ緑色やピンクに染める奇抜な髪型していて、単純にあんまりカッコよく見えないのだが…いいんだろうかあれで。
遠藤はこの先どこへ向かうのか。

○セミファイナル 株式会社メキシコ観光 presents ドラマティック・ドリームマッチ 30分一本勝負

佐々木大輔 vs エル・デスペラード

※勝者には勝利者賞として株式会社メキシコ観光よりテキーラ365日分が贈呈されます

数年前からTwitter上でわちゃわちゃやり取りしていた二人の対戦が「TAKAタイチマニア」で突然決まったのが昨年末。
その時はタッグの対戦で、結末もノーコンテストだった。
その先があるのかはっきりしなかったが、今年3月にこの試合が発表。
DDTと新日本は長年交流が途絶えてたので衝撃を持って受け止められた。

佐々木がインタビューで「今まで試合を組まれたことで生まれる雑音を試合に取り込んでやってきたけど、初めてそういうのを排除してやりたいと思った」と語ったように、この試合は純粋に「いつか戦いたい」と思ってた同士によるシングルマッチだった。デスペラードはここ数年、戦いたい他団体選手と積極的に試合していて、その都度評価を上げてきている。 

DDTだとだいたい佐々木がコントロールしてる試合が多いが、この試合はデスペラードがコントロールしてたように見えた。
それでいて一進一退の好勝負に。
最後はデスペラードの複合間接技ヌメロ・ドスにギブアップ負けしたが、佐々木のベストバウトだったんではなかろうか。
デスペラードも佐々木も発言やキャラクターは突飛でも試合はグラウンドをきっちりやるスタイルで、そういう部分でも波長が合ってた。
試合後に佐々木が「門戸は開いた。次は俺が不法侵入する」と言ってたけど、次は組んだりするのだろうか。

○メインイベント グッドコムアセット presents KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負

<王者>火野裕士 vs クリス・ブルックス<挑戦者>

※第80代王者3度目の防衛戦。

5月末のトーナメント開催前にクリスが「今回優勝できなかったらDDTでの活動を考え直す」みたいな発言して、そのせいかトーナメントではすごく観客の支持があった。
その勢いでクリスは優勝し、今回火野に挑戦することになってもその支持が衰えなかった。
これは去年竹下からエースを引き継いだはずの遠藤がサイバーファイトフェスでの失神事件を経て失速し、代打エースのような形になった樋口が「強いけどエースとするには華がない」みたいになって、しばらく火野に臨時エースみたいになってもらってたけど「あ、そうだクリス!クリスがエースでよくない?」みたいにファンが思うようになって支持が増えた、というような印象を受けている。

今回、先月にクリスが負傷、今月復帰したものの手負いの状態でタイトルマッチを行うことになった。
クリス、途中で動きが止まったり、場外でセコンドの高梨が深刻な表情で声をかける場面があったり、いろいろしんどそうだった。
クリスは頑張ったし、ケガは不運なことでしかないんだけど、俯瞰して見ると「火野が負けてあげた」試合に見えた。
まあ、火野が負ける時って「負けてあげた」感が出るのは今回に限らないんだけど。
火野が正面から当たって力負けした試合って昔見た関本大介戦しかない。
それぐらい火野の強さは突出している。

とにもかくにも日本に渡って4年、ついに念願のKO-Dを掴んだクリス。
最後はDDT両国お馴染みの出場全選手が出てきての大団円、MISIAの「INTO THE LIGHT」、エンドロール…と思いきやのバックステージでの竹下と佐々木の握手(その瞬間、会場から「キャアアア!!」とすごい黄色い声がした。今のDDTすごい)で次回に伏線を張る、よいエンディングだった。

しかし会場からの帰り道、私はチャンピオンになったばかりのクリスの前に登場した第一挑戦者が入江だったことをずっと考えていた。 

入江。
ドラマチックドリームフューチャーになり損ねた入江。
ずっとHARASHIMAに勝てなくて、その間全日本出たり海外行ったりいろんな経験積み重ねてるうちに後ろから迫ってきた竹下と遠藤に追い抜かれていった入江。
無期限欠場から戻ってきて、武骨な空気をまとうようになってレネゲイズという自分のチーム作って竹下からベルト奪ったのに、竹下のライバルになることなく結局また海外に行ってしまった入江。

全日本でGAORA TVチャンピオンシップ取ったり、ドイツのWxWというトーナメントで優勝したり、ストロングハーツ入ったり、いろんな経験は積み重ねてるけど、なんか突きつけられないでいる入江。

入江は2010年代のDDTに貢献した人間のうちの一人だ。
経歴を考えればもうちょっと「お帰り」的な演出があって、そこから今の本隊エースである上野あたりと戦ったり、しかるべき舞台でタイトルマッチが組まれるのかなと思ってたので、こんないかにも新チャンピオンの防衛戦のための防衛戦みたいな試合の挑戦者に出てくるとは思わなかった。 

けどそれを受け入れたんだな、入江は。

9月9日、DDT大田区総合体育館大会。
7月の両国と11月の両国に挟まれた、いかにもベルトの移動がなさそうな大会で、入江は今のDDTのピープルズチャンピオン、クリス・ブルックスに挑戦する。

さあ、来たよ入江。
この試合は君のターンだ。
だってこれみんな思ってるよ。
「え、普通にクリスが入江に勝って防衛するだろ」と。

入江、だからこそこの試合は、君のものなんだよ。
この試合は今の入場曲「T2」じゃなくて、最初の入場曲「タチムカウ」を使う時だよ。
オーケン歌ってるじゃない。  

なぜ来たか不思議でしょ?
勝てるわけもないのに
僕達の悲しさは
あなたがたにわからない
 
(中略)
僕ら負けると知っててタチムカウ
ボロボロ泣きつつタチムカウ
しかしなめてんじゃねえよタチムカウ
ふざけんじゃねえよタチムカウ
むしろ犬死にと決めてタチムカウ  

さあ入江、9月9日、がんばれ。がんばってくれ。
クリスは4年堪え忍んだけど、あんただってDDTで8年くらい堪え忍んだじゃないか。
先入観をひっくり返せ。
みんなクリスを応援するんだろうから、俺はあんたを応援するよ。 
大田区で、誰もが君が負けると思ってる試合で、誇り高き人間の証明を見せてくれ。  

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