伊野尾宏之

東京・中井にある本屋「伊野尾書店」の店長です。 仕事を通じて思ったこと、昔あった出来事…

伊野尾宏之

東京・中井にある本屋「伊野尾書店」の店長です。 仕事を通じて思ったこと、昔あった出来事、過去に書いた文章、いろんなものを載せていければと思っています。プロレス多め。 https://twitter.com/inooshoten

最近の記事

曙の本当の全盛期をあなたは知らない

曙太郎が亡くなった。54歳だった。ずっと前から闘病生活していると聞いていたが、報道によれば7年だったという。 本人も、周りもずっと大変だったと思う。 曙といえば大相撲、横綱のイメージだろう。 日本の伝統的な、縦社会の格闘技ともスポーツとも神事とも違う独自の競技に異国のハワイからやってきて入団、横綱(第64代)に登り詰めた。 引退後は曙親方として後進の指導に当たっていたが、K-1石井館長の説得で総合格闘技に転身。 2003年大晦日に当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったボブ・サップと格

    • 映画「アイアンクロー」

      映画「アイアンクロー」見てきた。 1960年代から70年代にかけてアメリカのプロレス界で大スターだったフリッツ・フォン・エリック。 片手でリンゴをつかめばたちまちジュースに変える(出典:「プロレススーパースター列伝」梶原一騎)驚異的な握力を使って相手の顔面を締め上げるアイアン・クローを得意技にし、エリックに締め上げられ脳波が狂ったレスラーは枚挙に暇がないという(出典:同上)。 そんなエリックは家庭を持つと五人の息子に恵まれた。 長男のケビン(※その上に幼くして亡くなった本当

      • 3.17DDT後楽園ホール大会雑感Judgement2024〜旗揚げ27周年記念大会5時間スペシャル〜

        DDT旗揚げ27周年記念大会は去年に引き続いて、後楽園ホールを昼夜貸し切っての5時間大会。 14時から始まって終わったのが19時40分くらいだったので結果的には5時間40分興行だったんですけど、休憩が2回あって、デスマッチの準備とかいろいろ隙間休憩みたいなのもあったのでそこまで「長いなー」という体感はありませんでした。 あ、7月の両国大会にエル・デスペラードが出るそうです。対戦カードは追って発表。 仲のいいクリスと組みそうな予感。 ○オープニングマッチ “インターンレスラー

        • 「スルーロマンス」

          「スルーロマンス」冬野梅子(1~3巻、以下続巻 講談社) スタッフさんから借りて読んだ。そのスタッフさんは誰だかのSNSで紹介されてたのを見て気になって買ったらしい。 そしてそういう作品はえてして講談社には在庫が薄い。 そんな2024年のコミック事情はさておき。 同時期に失恋したことがきっかけで、ゆるやかな同居生活が始まる32歳のマリと翠(みどり)の物語。 マリは美人。ずっと舞台俳優やってきて、映画も端役で少し出たことがある。 最近オファーが減ってきて、本人は「見きりをつ

        曙の本当の全盛期をあなたは知らない

          「漫画村の真相」星野ロミ(ベストセラーズ)

          ご存知漫画村を作って逮捕された人の手記。 そうです、もう出所してます。 2022年11月出所。逮捕が2019年7月、実刑3年。 罪状は著作権法違反ならびに組織犯罪処罰法違反なので、海外で逮捕されて極悪人みたいに報道されましたが罪としてはこんなものかもしれません。  前半部は自身の半生が語られます。 イスラエルとドイツの二重国籍を持つ父親と、日本人の母親の間に生まれ(「ロミ」は本名)、東京の立川で生まれ育ったこと。 中学受験して東京電機大学付属中学という私立中高一貫校に進学。

          「漫画村の真相」星野ロミ(ベストセラーズ)

          1.10ドラゴンゲート後楽園大会雑感

          望月マサアキデビュー30周年記念大会を見に久しぶりのドラゴンゲート。  前回見に行ったときにどんな試合があったか欠片も覚えていないが、ナチュラル・ヴァイブスがダンスを踊ってたのだけは覚えている。 彼らの結成が2018年5月らしいので、てことは6年くらい前なのか。 だいぶ選手が入れ替わって、メインどころに出てるのも名前しか知らない選手になってたのでその空白を埋めにいったところもあるのだが、団体テーマ曲がアレンジこそされていたものの昔と変わっておらず、この団体のレガシーはこの

          1.10ドラゴンゲート後楽園大会雑感

          1.2NOAH有明アリーナ大会雑感

          当初「ふーんNOAHは来年正月2日に有明アリーナでやるんだ」と横目でしか見てませんでしたが、飯伏さんと丸藤のシングルマッチが決まった翌日にはチケット買いにいきました。 なんでもいいけどこの会場、電車で行きにくいのに駐車場はなく、会場周辺でタクシーも拾いにくく、行きはまだしも帰りがめんどくさいのよね。 あらためて後楽園および東京ドームはいい場所にある。 まあそれも三井不動産の動向次第で今後どうなるかわからんのだけど。 <第1試合・GHCジュニアヘビー級タッグ選手権3WA

          1.2NOAH有明アリーナ大会雑感

          「ネットプロレス大賞2023」があったらこれに投票してました

          2022年までブラックアイさんhttps://x.com/black_eye2?t=i7fv310BTi5_qqYaz2ZTNw&s=09 が「ネットプロレス大賞」というファン参加型アワードを開催してらして、毎年投票してたんですが集計や発表などの作業が個人でやるのは大変だったみたいで(それはそうだ)、去年で終了されました。 というわけで「もしネットプロレス大賞があったらこれに投票してました」という形で今年見た中から印象的だった選手や試合を書き出してみます。 ネットプロレス大

          「ネットプロレス大賞2023」があったらこれに投票してました

          前田日明の述懐

          今月の「KAMINOGE」に前田日明が出ている。 訥々と、いろんな話をする。 前田が旧UWFから新日本に戻ってきた頃、地方大会のあとで猪木に呼ばれて酒を飲んだ。 倍賞美津子もそこにいた。 そこで前田は猪木からあることを言われ(本誌で確認してください)、それにカチンときて言い返した、という。 「けれど60歳を過ぎた今になると、なんであのとき猪木さんがそういう話をしたのか、わかるような気がするんだよ。 要は猪木さんは自分に心を開いてそういう話をしてくれたのに、当時の自分はそれ

          前田日明の述懐

          NO 選挙, NO LIFE

          ポレポレ東中野で『NO 選挙, NO LIFE』見る。 選挙ライターの畠山理仁さんを描いたドキュメンタリー。 日本中の選挙を追って、「候補者全員に話を聞けなければ記事は書かない』というモットーで畠山さんが取材活動していることは知ってたが、実際にその様子を見た感想は「これは忙し過ぎるな…」に尽きる。 途中、「選挙期間中は取材が多すぎて、記事を書いてる時間がないんですよ」と笑う場面が出てくるが、取材→移動→取材→移動が何件あるんだこれ?という感じで繰り返される。 取材は映像も

          NO 選挙, NO LIFE

          「なぜ屋台村から東京ドームに辿り着けたのか?プロレス現地採用~VIVA LA VIDA~」NOSAWA論外(徳間書店)

          プロレスは花形商売であり、リングの中心で輝くスターが生まれることで多くの集客につなげることができます。 これまで数々の人気選手にわれわれプロレスファンは魅了されてきました。 しかしプロレスは一人ではできない競技です。 必ず相手役になる選手、脇でスターを支える選手が存在して成り立ちます。 そうするとスター本人が自分の目線で見ていた世界と、その近くにいた脇役が横目でスターと客席を両方を見ていた世界は同じものであっても見え方が違っていたりします。 ともすれば、脇で見ていた人の方が

          「なぜ屋台村から東京ドームに辿り着けたのか?プロレス現地採用~VIVA LA VIDA~」NOSAWA論外(徳間書店)

          11.12DDT両国国技館大会雑感

          7月に続いて今年2回目のDDT両国大会。 久しぶりの客席四面全面開放でした。 超満員ぎっしり、とはいかなかったけどまあまあよく入ってたのではないでしょうか。 試合前の物販、サイン会、撮影会がすさまじい人手、行列。 このへん参加するならもう開始2時間前くらいから会場入らないといけなくなってる。 今日は初プロレスの20代男子を連れてったのだが、知ってるプロレスラーは?という質問に出てきたのが「アジャ・コング」「スイーツ真壁」で、なるほどやっぱりテレビ強いなあと思いました。 予習

          11.12DDT両国国技館大会雑感

          2023日本シリーズと2012オリックスをつなぐ一瞬

          日本シリーズ、盛り上がってまいりました。 第七戦に行くのは10年ぶりとか。 そんな久しぶりなんですね。 由伸魂の完投でタイに持ち込んだオリックス優位、みたいな見られ方してますがそうでもないと思ってます。 だってオリックスはリリーフ陣がかなり疲弊してるし。 山崎颯一郎は第三戦、第四戦でベンチ外れるくらい本調子でないし、宇田川は疲れてるし、阿部とワゲスパックは去年より悪いし。 そして宮城はシーズン終わりからCS、日本シリーズにかけてずっと抜群の内容なので、逆に「崩れるとしたら」

          2023日本シリーズと2012オリックスをつなぐ一瞬

          10.15みちのくプロレス矢巾大会フジタ"Jr"ハヤトvs髙橋ヒロム戦雑感

          フジタjrハヤトと髙橋ヒロムのシングルマッチが組まれて、会場がみちのくプロレスの聖地・岩手県の矢巾町民総合体育館と発表された時「これは何をおいても行くしかないな」と思い、日帰りで行ってきました。 東京から盛岡まで新幹線で約2時間半、そこから在来線の東北本線で15分ほど乗ると矢幅駅。 徒歩で20分ほど歩いたところにみちのくプロレスの聖地はあった。 なぜ矢巾がみちのくプロレスの聖地かというと1993年の旗揚げ大会をここで開催したから。 以降、節目節目で大会をやってきてるからだ

          10.15みちのくプロレス矢巾大会フジタ"Jr"ハヤトvs髙橋ヒロム戦雑感

          「田上明自伝」

          「田上明自伝」(竹書房) 90年代に全日本プロレスで極限的な試合を連発し、2000年に三沢光晴が作ったNOAHに移籍後も重鎮として活躍、三沢が不慮の事故で亡くなってからはNOAHの社長を務め、現在はプロレス界から一線を引いて茨城県つくば市でステーキ居酒屋「チャンプ」を経営する田上明が半生を語る。 プロレス本というのは不思議なジャンルで、渕正信とかケンドーナガサキとか、一般的にはあまり知名度のない「あなたが本出すの?」と思ってしまうくらいマニアックな選手の本が出る。 しかし

          「田上明自伝」

          映画「アントニオ猪木をさがして」

          映画「アントニオ猪木をさがして」見てきた。 まあもう見る人は見るし、見ない人は一生見ない映画だと思うので思いっきりネタバレしながら書きますね。 これから見る予定の人はここで閉じてください。 ………………… ・謎の再現ドラマパートいる? ・けどリサイクル工場の工員役の後藤洋央紀ちょっとよかった ・神田松之丞の「講談・巌流島の闘い」はよかった。あれで1000円くらいの価値はある。 ・マニア的には有田とか安田顕のパートはいる?と思ってしまうんだけど、一般層にも見てもらう

          映画「アントニオ猪木をさがして」