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「スルーロマンス」

「スルーロマンス」冬野梅子(1~3巻、以下続巻 講談社)

スタッフさんから借りて読んだ。そのスタッフさんは誰だかのSNSで紹介されてたのを見て気になって買ったらしい。
そしてそういう作品はえてして講談社には在庫が薄い。
そんな2024年のコミック事情はさておき。

同時期に失恋したことがきっかけで、ゆるやかな同居生活が始まる32歳のマリと翠(みどり)の物語。
マリは美人。ずっと舞台俳優やってきて、映画も端役で少し出たことがある。
最近オファーが減ってきて、本人は「見きりをつけたの」と言ってアルバイトしてたりするが内心は踏ん切りがついておらず、「誉められたい」「求められたい」という承認欲求を強く抱えている。
恋愛とは「気になった男性に声をかけるか、かけられれば始まるもの」で、マリにとってパートナーが変わることは「四季の移ろい」くらいの認識。ただし自分が振られた場合は激しく怒り、凹む。

翠は会社勤めを経て現在はフリーでフードコーディネーター、フードライターの仕事をしている。
自分の仕事が雑誌やウェブに載る機会も多く、周りからは華やかに活躍していると見られがちだが本人は浮かれることもなく足元を見ており、後ろ楯や保障のない暮らしに不安を感じる時もある。
生活を共にできるパートナーがいれば精神的にも経済的にもいいのだが、そういった相手はいない。
ふっくらした体型で地味な容姿の翠は過去に自分から男性にアプローチして断られたり、はぐらかされた経験が幾度とあり、恋愛に臆病になっている。
「一人が気楽でラク」と「やっぱりそういう相手が欲しい」を行ったり来たりしている。

そんな二人を中心に、いろんな人間が絡む現代劇。

人物造形がリアル!
登場人物の言動にたびたび「なぜそう思ったのか」のト書きみたいな説明が入り、それが恋愛や性欲、「チヤホヤされたい」「誉められたい」的な承認欲求、その二つを暴れさせすぎてもしんどいし、枯らしても生きていけないんだろうなーと思った。

人間はめんどくさいね。
人生は「終わらない部屋の壁紙の張り替え」みたいなもので、一つクリアにして気にならなくなるとそれまで気にもしなかった(=気にする余裕もなかった)別の汚れが気になってしまう、そしてそれに関してだけはきれいにしているように見える隣人がうらやましく見えてしまうんだろうなーと思った。
(隣人が気にしている汚れはこちらには見えない=存在してないと思ってしまう)

いいマンガでした。
続きも読みたい。


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