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『人口からみた宗教の世界史 ユダヤ教・キリスト教・イスラムの興亡』イスラームの人口動態がわかる(世界の歴史)

 2060年には世界人口におけるイスラム教徒の人口が31%の30億人、キリスト教徒が32%の31億人となり、その後はイスラム教徒が世界最大の宗教になる。日本は鎌倉時代以前は大陸からの移民がなだれ込み同化することで、日本人が出来上がってきた。しかし、日本の労働力不足によるイスラームの外国人労働者の宗教的規範部分が日本に同化することは難しい。そのため川口市のクルド系の蕨のように、エスニック・セグリゲーション化していくのだろう。 本書で注目すべきは、なぜイスラム人口は拡大するかが、次のように明確に示されている点だ。
 本書で注目すべきは、なぜイスラム人口は拡大するかが、次のように明確に示されている点だ。

1)女性の社会進出が少ない
 イスラームの場合、家庭の役割は女性が担う傾向が強い。
2)スーフィズム
 イスラームにはスンニ派とシーア派があるが、それぞれの信者がスーフィズムになることがある。これは内面を重視したイスラームで修行によってアッラーに近づくという考え方だ。特徴として戒律を重視しないため、その地域に根づいた既存の宗教を否定することなく、取り込むことができる。現在のインドネシアはスンニ派だったが、最初は地元のシャーマニズムと融合したスーフィズムが浸透していったのである。つまり、イスラム教の尖兵の役割がスーフィズムなのだ。アメリカのイスラームはスーフィズムが多いこともそれが理由だ。

 また、日本人の見る世界地図は太平洋を中心としているが、大西洋を中心としてみると現在の中東情勢が理解できる。本書にはブラジルの人口の1割がアラブ系、チリにはラテンアメリカで最大のパレスチナ系社会があると紹介されている。
 地中海沿岸のレバノン、イスラエルに支配される前のパレスチナ地域をレバント地域と呼ぶが、この地域のフェニキア系の人たちは、地中海を抜けて大西洋を渡り南米に浸透した。このネットワークの一部が麻薬ビジネスのネットワークとなり、ヒズボラの資金源となっている。
 イスラエルでは全人口の20%が、ナクバ(イスラエル建国)で残されたイスラームの子孫になる。人口動態からもイスラエルはパレスチナ人の高い出生率は脅威だ。対抗するためにイスラエル市民がパレスチナ人との婚姻を通じてイスラエルとの居住権や市民権を取得することを禁止する法案まで成立させたことも紹介されている。イスラーム政党の動向も今後のイスラエルにとっては脅威だろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。