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『君たちはどの主義で生きるか バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』哲学分類が秀作(世界の歴史)

 筆者は西暦2020年代の人生は。攻略本がなければどんな分岐があるかわからないし、ベストエンディングは夢のまた夢だという。昭和であれば、次のシナリオがパターンとしてあった。

  • 一流大学から大企業に就職ルート⇒ハッピーエンド

  • 身内のコネで地元企業に就職ルート⇒ハッピーエンド

  • そこそこのお相手を見つけて結婚ルート⇒ハッピーエンド

 しかし、現在はルートがない時代。哲学者や思想家の残した主義や思想がないと先に進むことができないとし、それらをわかりやすくまとめた本だ。

 一般的に書籍の場合、目次を見えれば全体を見渡すことができるが、著者は人類の哲学を次のように見事に分類している。

  1. 道徳
    相対主義
    功利主義
    人格主義
    利己主義
    利他主義

  2. 組織
    社会主義①
    社会主義②
    資本主義
    自由主義
    民主主義
    ポピュリズム

  3. 認識
    合理主義と経験主義
    スピリチュアリズム、オカルティズム
    愛国主義
    テロリズム
    構造主義①
    構造主義②

  4. 幸福
    楽観主義 VS 悲観主義
    幸福主義 VS 快楽主義
    清貧主義 VS 拝金主義
    懐古主義
    実存主義

 その解説は品位はないが、現代の言葉でわかりやすく解説されている。例えば、サルトルの実存主義をみてみよう。

 サルトルの実存主義には次の2つのモットーがある。

1)実存は本質に先立つ
2)人間は自由の刑に処せられている

 辞書やナイフには先に目的があるが、人間はモノとは逆に、先に存在がある。1)はサルトルの説明を踏襲しているが、2)は次のように説明されている。

 アメリカのアルカトラズ刑務所を見学した際、音声ガイドで語られていた「元受刑者の言葉」の中に、とても印象に残った一節があります。
 ある囚人が刑期を終え、何年かぶりに町に戻った日、通り歩く人々がみんな「どこかに向かって歩いている」ことに驚いたと言うのです。「これだけ多くの人間が、ちゃんと目的地に向かって歩いてやがる!俺には行くところなんてどこにもないっていうのに」という、そんなセリフが元受刑者の声として紹介されていました。

 時として、自由は刑よりももっと辛い。その苦しみから逃げるには、自ら社会に参加したり、自分を未来に向かって投げ出して行動すべきだ、とアンガージュマンまで解説している。
 書籍を読む人の理解力がない時代に、いかに過去の人類の知恵を生かしていくかという挑戦の書なのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。