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『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」』 情動=情動体験(≒感情)+情報表出(身体反応)(マスクドニード)

 「こころ」は何か。古代エジプトでは「こころ」は心臓だった。本書は最新の脳科学で「こころ」を解き明かしたものだが、「こころ」は腸内細菌にも影響されているいう。

 システム工学には内部のメカニズムが複雑なものに対し、「サイバネティクス」というアプローチがある。例えば、地球環境全体は複雑に絡み合っているので、全体をブラックボックス化し、何がインプットされると何がアウトプットされるのかという捉え方だ。地球と同じように脳や人間の構造も複雑なため、以前はサイバネティクスで捉えていたが、最近の脳科学の成果は、内部のメカニズムとアウトプットされた結果に因果を結びつけることが可能となった。本書は「こころ」という複雑な対象に対し、「こころ」の動きを客観的に、情動体験(≒感情)と情報表出(身体反応)に分けている捉えている。つまり、内部のメカニズムとアウトプットの因果を解説しているのだ。

 「こころ」は脳深部の活動、いくつかの脳内物質のバランス、大脳辺緑系がベースとなる自律神経系と内分泌系の動きがもたらす全身の変化から作られる。また、他者の精神状態はコミュニケーションにより共感され、自らに影響する。そして最終的に、前頭前野を含む大脳皮質がそれらを認知することで「こころ」が生まれる。「こころ」は遺伝的要因が大きく影響する。例えば、神経回路の構造の微妙な差異や脳内物質の受容体のほんの少しの差、あるいは腸内細菌の違いなど、それらの無限の組み合わせによって生まれる。さらに、コミュニケーション手段が変化することで「こころ」は進化するという。

 「こころ」のメカニズムを部分最適として捉えても意味がないため、SNS時代というコミュニケーション変化を踏まえた全体最適で捉える必要がある。そこにはメカニズムとしての脳科学(医学)はもちろん、個人としての心理学、群れとしての心理学も必要となるのだろう。ある意味、領域をまたがった研究成果が必要とされる分野である。次作、次々作があるならば、変化する社会環境と解明されたメカニズムの最先端が紐解かれることを楽しみにしている。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。