見出し画像

『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』多様性に富んだエコシステムをもつこと(異なる要素のコンバイン)

 冒頭にあるニーチェの『ツァラトゥストラ』次のフレーズは引き込まれる。

君たちにとっても、生きることは激務であり、不安だから、君たちはうんざりしているんじゃないか?君たちはみんな激務が好きだ。早いことや未知のことが好きだ。君たちは自分に耐えることが下手だ。なんとかして、君たちは自分を忘れて、自分自身から逃げようとしている

『ツァラトゥストラ』(ニーチェ)

 仕事で目一杯にも関わらず、空いた時間をスマホで埋める。人とつながっていないと不安になる。ニーチェの「自分に耐えることが下手」という言葉はそのすべてを的確に表現している。

 本書でもっとも参考になるのは、自分の中に多様な他者を住まわせる、という考え方だ。多様性に富んだエコシステムを作ることが、豊かな想像力をもつことにつながる。自分という庭をいろいろな植物のある場所に育てること。他者に沿って学ぶことにこそ、自分という庭を豊かにするという。

 一方、自分の力だけが自分を変え、自分の力によってなりたい自分になる、という自己啓発は福音に感じるが、これは個々の状況を自己責任化する呪いだ。自分の内面と向き合え、自分の心を聞け、という助言には、内なる声は一つだという前提がある。この場合は、他者の想像力や周囲の声はノイズとなってしまうという。

 哲学者に限らず、他者を自分の中に住まわせることは、想像力だけでなく、創造力にもつながる。創造力は知識の組み合わせから生まれるということを知っていれば、自分の中に多様性をもつエコシステムを作ることはイノベーションの前提条件になることがわかる。たとえば、こうした読書レビューを記録に残すことは一つのエコシステムなのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。