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『ガイアの復讐』生き残った子孫が文明を再建するためのガイドブックが必要(環境研究、未来予測)

 【マザー・テレサ】私たちは貧しい人々、病んでいる人、飢えている人々を助けなければなりません。地球の面倒は、神様に任せればいいのです。

 【ジェームズ・ラブロック】もし我々人類が地球を大切に思い、その面倒を見ようとしなければ、地球はガイアのやり方でわれわれに報い、必要とあればわれわれを除こうとするでしょう。

 この二人会話は他者が人か地球かの違いはあれど、善きサマリアの例えを実践しているもいえる。本書は、地球の現状から一歩踏み込んで、この地球上で生き残った子孫が文明を再建するガイドブックについてまで言及されたもにになる。(生き残るためのガイドブックではない)

 日本とラブロックを語るとき、彼のガイア理論を正しく日本に紹介しようとした科学者として糸川英夫さんが紹介されている。余程二人は人生の経験が共感を呼んだのか、ウマがあったのか、ラブロックの日本来日の思い出をお互いの著書で詳しく紹介している。ちょうどその頃、組織工学研究会の事務局員を行っていた私は、糸川さんと半年間ほど距離を置いていた時期と重なり、そのときの詳しい状況は知らない。

 さて、本書でもっとも重要と思われる子孫が生き残っていくためのマニュアルに話を移す。
 北半球の人が南半球に行くとき抗マラリア薬なしに熱帯には行こうとしないし、局地紛争のチェックをせずに中東に行くこともない。しかし私たちは、準備不足のまま未来へ旅立というとしている。すべての可能性に対して準備することはできないし、人口増加や汚染をストップさせられるほどにたやすく変えられるわけでもない。予防の原則を信じる人たちは、化石燃料の使用をあきらめさせるか、大幅に減少させようとする。

 しかしラブロックは、これらが成功すると考えるのではなく、大変動の結果を小さくするためのひとつの方法として、生き延びた人たちが文明を再建する際、過ちを繰り返さないためのガイドブックを書くことを奨めている。しかも、このような本は、磁気媒体や光学媒体に記憶させようとしても無駄で、コンピュータや電気がないと使えない媒体はどんなものでも駄目だとしている。長期保存という意味では「語り部」よりも頼りにならないとまで言っている。
 では、ラブロックのいう大変動とは何だろう。
 それは地球温暖化だ。
 科学者であるラブロックは本書を以下の一文で締めくくる。

 暑く乾燥した世界を生き延びた者たちは集まり、北極の新たな文明の中心を求めて旅立つ。日が昇る砂漠で、太陽がその指すようなまなざしを地平線越しにキャンプに向ける様子が目に浮かぶ。わずかに残った部族のメンバーはラクダに乗る。ラクダはげっぷし、次のオアシスを目指して長く、耐え難いほどの暑さの中を出発する。

 現在、ガイア仮説はガイア理論となり、観測と理論モデルを基盤にし、十の予測が的中しているという。そこからすると、ラブロックが示した未来の予測では記憶媒体が熱で使いものにならないとしているが、ロンドンのデータセンターが熱のため停止してしまったのは2022年の夏のことだ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。