見出し画像

『未来への確信 成長限界論を超えて』ハーマン・カーンは、22世紀をシナリオ・ライティング法で予測した(環境研究、未来予測)

 ハーマン・カーンが1976年に、200年先(22世紀)を予測した本。とにかく、この頃のハーマン・カーンはローマクラブ(MITの予測)の未来に対する予測に対する悲観的な”終末論”的な見解(マルサス主義的見解)に反対し、楽観的な未来像を展開してきた。大きくは以下の2つの視点からシナリオ・ライティング法で未来が予測されている。

1)地球中心的視点:今後の二百年間、人類の大多数は地球に住み続け、大気圏内の活動は探検と控えめな開発に限られるとたいていしたシナリオ。
2)宇宙思考的視点:21世紀の初期に大気圏外での活動が活発になり、原料の加工、エネルギーの生産、耐久財の製造を担当する大規模なコロニーが宇宙に建設され、生産物はコロニー内の消費に充当され、地球、その他の太陽系に輸出されるようになるシナリオ。

 1)地球中心の未来展望では、世界人口は150億人(推定誤差二分の一あるいは二倍、すなわち七十五億ないし三百億の範囲内)に達した後、少なくともしばらくの間は停滞すると推定する。一人あたり生産高は二万ドル(推定誤差三分の一あるいは三倍)で頭打ちになり、世界総生産は約三百兆ドル(推定誤差五分の一あるいは五倍)で頭打ちになる。

 また、1)地球中心的展望には、二つのモデルがある。一つは、新マルサス主義、一方を技術・成長主義と名付けている。前者は、イギリスの経済学者マルサス理論で、いずれ人口は食料供給を上回り、飢餓が貧困階級に永久につきまとうとする。後者は、今後百年間に、現在の先進世界では、物的必要性を満たすことは非常に容易になるとする。地球中心的な展望を以下の4つでシナリオ化している。

A)確信的新マルサス主義者
B)慎重な悲観論者
C)慎重な楽観論者
D)技術・成長支持論者

 ハドソン研究所によると、GDP成長率の予測を前提にすれば、アメリカは石油と石炭の埋蔵量は国内エネルギーの必要量を百五十年以上もまかなうに十分で、オイル・シェールから油を抽出する効率的な方法が開発されれば、化石燃料の供給可能料が四倍になるとも予測している。22世紀のエネルギー・システムとして、発電所での電力生産を基本としているが、水素が天然ガスに変わる基礎燃料で、電気エネルギーへの変換貯蔵、長距離輸送の全体的なシステムの一部として活用されると予測している。要するに水素にしてパイプで輸送したり、電気で蓄えたりできるようになる。西暦2000年を過ぎると、化石燃料で発電する方法が改良されて、発電効率が約60%向上する。そして、現在の内燃機関、その他の代替物は、現在の自動車のエネルギー効率を二倍に、最終的に三倍にするとしている。

 食料生産には以下の三つのアプローチがある。

1)伝統的な食料を伝統的な方法で生産する
2)伝統的な食料を非伝統的な方法で生産する(栄養膜栽培法など)
3)非伝統的な食料を非伝統的な方法で生産する(木材、葉、セルローズ、石油、都市の廃棄物などから食糧を抽出合成)

 大豆から作る肉類食品の増加からも、2176年には「肉のない肉」という合成食品が利用される。

 長期的環境問題として、またもやファウストの登場となり、魔術的(すなわち世俗的)な知恵と能力を買い入れた結果、それを無理して使わざるをえなくなった。その結果、彼は次から次へと新しい経験と計画を推し進め、永遠に呪われる運命を背負ってしまった。このファウストの物語を、現代の人類の苦境を比喩するものだとしている。

 1976年から200年経ち、国際機構が活動範囲を広げて世界連邦政府の設立の動きがみえたとしても、真の世界政府を純粋に平和的な手段で生み出すことは容易ではないとしている。非常に豊かな社会では、争いの動機は経済的なものでないことが多い。したがって、脱工業化社会が比較的暴力や戦争のない社会になることは(不可避的ではないにしても)十分考えられるとしている。つまり、『超大国日本の挑戦』で紹介された社歌に対する答えとして、世界政府は無理だとしても、「Peace and Happiness throgh Prosperity」の可能性はあると締めくくっているのだ。

「Sending our goods to the people of the world,
 Endlessly and continuously,
 Like a water gushing from a fountain」

 そして、世界的スタグフレーションによって、大気圏外への関心が薄れているが、われわれの楽観的な経済予測により、莫大な資源が宇宙活動に向けられるだろうと付け加えている。それは、2176年に予測される世界総生産GWPの1%で三兆ドル、現在のアメリカの宇宙予算の一千倍にあたる。宇宙における継続的活動の可能性が立証されれば、前述した長期的な環境問題として、大規模な無差別核戦争になったとしても、地球文明の継続と人間生活の再生を惑星上で行うことが可能になると、ハーマン・カーンらしい結論でこのシナリオは終わる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。