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『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』ロシアのダーチャを見習うべき(環境研究)

 サラリーマンの平均年収は300〜400万円となり、年収300万円となるという著者の本の200万円バージョン。2020年に発売されているので、コロナ禍に書かれており、コロナ対策への批判が多くを占めるが、最終の5章に、年収200万円で暮らす方法がまとめてある。

 トカイナカで暮らせというのが著者の結論。
 都会と田舎のあいだであるトカイナカは、都会生活の利便性と田舎暮らしの愉しみを両立出来るエリアの造語だ。日本の物価はU字構造と言われ、東京、横浜が最も高く、都心から30−50km離れたところが最も安くなる。過疎地帯の田舎になると、よろず屋1件だけという価格競争のない状態になり、都会並みの価格になるという。

 著者の住んでいる所沢市は人口34万人で、高槻市、大津市、旭川市、高知市と変わらない。そのため、賑わいもあるし、病院などもある。しかも、駅から20分で田園風景が広がる。直売所における地産地消の野菜は安い。近所でもらえることもある。さらに自家農園で農作業を行えば、食べ切れないほど収穫できる。家賃も安く、現金購入も可能だ。年収1万円でも多くしようと、サービス残業をしたり上司にごますったりより、遥かに潤いのある人生を過ごせる。さらに著者は、2007年から都心の小さなマンションを借りて家に戻れないときは、そこで寝泊まりをしているという。ここまで読んできて、ロシアのダーチャの逆の生活ではないかと気がついた。

 ロシアに「ダーチャ」を日本語に訳せば「農園付き別荘」で、都会のひとが週末や長期休暇を利用して気軽に行き来する。寝食できる建屋に農園がセットになっており、利用者は家族らとのんびり過ごすことができる。モスクワの場合、全世帯の3分の1が菜園を所有している。ロシア国家統計局の2003年のデータによると、国内3400万世帯の8割が菜園をもつか野菜づくりの副業経営を行い、同国のジャガイモ生産量の92%をまかなうという。

 年収200万で都心で暮らすのは無理だが、トカイナカであれば可能だという主張は、間違いではない。確かに家賃がかからず、野菜が安く手に入り、物価が安ければ暮らせないことはない。東京における埼玉や千葉はトカイナカとして機能する。

 ロシアのダーチャは、首都モスクワが核攻撃を受けた場合のリダンダンシーとして、政府が国民に与えたものだが、首都直下型の地震に対するリダンダンシーとしてトカイナカに農園付き別荘を持つのは、安心につながる。そういう意味で、本書は参考になった。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。