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『トヨタ方式の真実―変容した「かんばん体制」』斉藤尚一氏の存在が大きい(技術の歴史)

 現在の私の周りがプロダクトアウトの人ばかりなので、マーケットインにどうやって発想を切り替えていけばいいかを参考にするために読んでみた。
 この本は、大野耐一氏の片腕だった鈴村喜久雄氏の取材がベースになっているが、マーケットインに切り替えるために必要なものがよくわかる。

 トヨタ自動車内で異端であったトヨタ生産方式が浸透していくなかで、多くの衝突や軋轢のいくつかの例が紹介されている。しかし、それを乗り越えていったのは、大野耐一氏や鈴村喜久雄氏のエネルギーだけではなく、斎藤尚一氏の存在が大きかったようだ。

 斉藤尚一氏は、東北帝国大学金属工学科の出身で、豊田英二氏が入社した1年前に、トヨタでは「学士社員第1号」となった人物だ。豊田喜一郎氏が引っ張ってきた技術者で、副社長、会長を歴任している。
 トヨタ生産方式は、それまでのやり方を逆転させる(後工程引取)ようなことをするが、これに対しては社内では厳しい反発があったという。それを理解し、見守ったのが、斉藤尚一氏だ。

「大野耐一氏さんを、トヨタ生産方式の生みの親と呼ぶのはいいとして、実のところ、大野さんも斎藤尚一さんというオシャカ様の手のひらの上で頑張っていた一人だったのでしょう」

 斉藤尚一氏の存在は、本書ではこのように紹介されている。つまり、プロダクトアウトをマーケットインに切り替えるには、それなりの理解ある後ろ盾が必要になるということになる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。