見出し画像

『台湾の本音』小さいけれど確かな幸せを求める若者(世界の歴史)

 台湾では大陸からやってきた人を外省人、台湾で生まれ育った人を本省人と呼ぶ。蒋介石の国民党は外省人が取り仕切っていたが、中国本土と切り離された状態が続き、台湾アイデンティティーが一般的となってきた。もともと国民党は反共産党を掲げていたが、2000年代に入ってから経済大国となった中国と親しい関係を築いている。2005年には長く争ってきた中国共産党の間で「国共和解」に踏み切った。一方、歴史が浅い民進党は、地方組織が十分に育っておらず、成熟度が足らないと言われている。

 台湾の有権者が政治家を選ぶ基準は、学位、学歴が政治家の一つのステータスになっている。日本の場合は世襲議員を中心にした家柄だ。投票率は2022年の地方選挙では66%、2022年の総統選挙では75%に達する。しかも選挙では、在外投票もできず、戸籍がある場所でしか投票できない。

 なぜ日本の統治下にあったにも関わらず、韓国のような反日感情が少ないのだろう。日本統治以前に台湾にはナショナリズムや伝統ある統一王朝や強い政権がなかったことか大きい。一方韓国には李氏王朝があり、ナショナル・アイデンティティが形成されていた。
 さらに日本統治の時間が50年と長かった(韓国は30年)ことも影響している。50年では3世代に渡り日本統治で暮らす人々も出てくるため、その生活を受けて入れていたからだ。また、日本統治後の国民党政権の弾圧と比較して悪くなかったと考える人も多いという。

 日本は日清戦争で台湾を各条されたとき、台湾人を本島人、日本から台湾に移住する人を内地人とわけていた。ここで台湾の人は、自分たちを中国人でもなければ日本人でもなく、台湾人だというアイデンティティが芽生えた。

 台湾の若者たちには「小確幸」(小さいけれど確かな幸せ)という村上春樹がエッセイの中で使った言葉が浸透している。自分の手に届く範囲で幸せな空間を作ろうという感覚だ。多くの人が大学へ行き競争をかいくぐって大きな会社に勤めてみたものの、幸せとは思えない。物質的な豊かさよりも精神的な豊かさを求める台湾の若者が増えているという。 
 台湾は日常生活がとても快適で、同調圧力が弱く、気楽に生きていける。もともと多民族、多言語の土地だったため、同調させようとする素地がないのだ。

中国人とは言葉が通じるけど話が合わない。日本人とは言葉は通じないけど話が合う

 1990年代には日本のアイドルやJ-POPが台湾で流行し、『クレヨンしんちゃん』『名探偵コナン』『ONE PIECE』などの漫画などの文化の浸透が、この言葉を生み出したと考えられる。また、国民党の戒厳令が敷かれた時代に、志村けんのビデオが浸透し、「変なおじさん」などの笑いが台湾人の心をとらえた。

 台湾は国家承認を広く得られていないという意味では、コソボ、パレスチナと同じ「未承認国家」だ。中国からすると中華民国という国家は存在しないことになっている。
 バランス感覚としては「台湾は事実上独立した主権国家であり、国名は中華民国という。だから独立をあえてする必要はない」という独立状態論が主流だという。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。