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『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』適切なシステムと、失敗に対するマインドセットが必要(失敗研究)

 最初のページに医療麻酔の悲痛な医療事故が掲載され、それと比較するカタチで、航空業界は破壊することが難しい2つのブラックボックス(飛行データ記録、コックピット内の音声記録)の意味が解説されている。またその理由として、1912年では米陸軍の14人のうち8人が事故で命を落としていたという航空業界の歴史も紹介している。

 現在、回避可能な医療過誤は年間40万人以上になり、確率的にはボーイング747が毎日2機事故を起こしているのと同じだという。人類は2500年以上前から失敗を不名誉にとらえているが、航空業界のパイロットはニアミスを10日以内に提出すれば処罰されないシステムがある。また、トヨタ自動車では、組立ラインでミスが起こると作業員がただちに非常停止用コードを引っ張ってラインを一時停止し、問題を詳しく分析し、再発防止策がとられる。これらのことから、失敗から学ぶには次の2つの要素がカギになると結論づけている。

1)適切なシステム
2)適切なシステムの潤滑油となるマインドセット

 エピソードとして面白かったのは、マッキンゼー出身者と起業経験者が2人で起業したとき、ソフトウェア開発に対する考え方が大きく違うということだ。一人は、MVPモデルによるリーン開発を目指し、一人はトップダウンの完璧を目指す。このことは、マッキンゼー出身の名和高司氏が、スケールしないアイデアはゴミで、MVPモデルはシリコンバレーでは流行っていないと主張する考えとまったく同じで面白い。本書ではこれを、思考から最適解が得られるという誤解と、失敗への恐怖が生み出す発想だと断定している。
 プロジェクトの6段階を示したエピソードも面白い。

1、期待
2、幻滅
3、パニック
4、犯人探し
5、無実の人を処罰
6、無関係な人を報奨

 成長が遅い人は、失敗の理由を知性に求めるという研究も面白い。つまり、「きっとボクは頭がよくないんだ」「前から記憶力が悪かったから」「こういうものはもともと苦手なんだ」と思考してしまう。起業の失敗に対する恐怖がもっとも高いのが日本だという調査も紹介されている。いずれの例にしても、適切なシステムと、失敗に対するマインドセットがないと、航空業界のように改善することは不可能だ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。