見出し画像

『なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』PICSYはソーシャルインパクト指標として実装した方が現実的だ(技術の歴史)

 貨幣の価値は取引というフローにあることは誰でも分かる。共通のコモディティが貨幣になると、人々は貨幣の価値がフローからもたらされていることを忘れてしまう。貨幣そのものに価値があると信じ、溜め込むようになる。こういた貨幣に対するフェティシズムこそが恐慌現象の核心だ。そこで著者は、フローをベースにした伝播投資貨幣システムPICSYを創発した。

 PICSYの効果を医者の例で考察すると、良い医者は不要な薬を投与することでお金を稼ぐ。それに対し、良い医者は不要な薬を売ることなく患者をすぐに直してしまうので、あまり稼ぐことはできない。これにフローの貨幣であるPICSYを使うと、もし患者の具合が良くなり社会に対して大きく貢献すると、良い医者の口座の残高は増えることになる。悪い医者の場合は、ベッドで寝たままなので、残高は減っていく。価値の伝播が社会の境界止まらないよう、マルコフ過程を原理として、創発されたものだ。PICSYという伝播投資貨幣の価値そのものを「貢献度」と考えると分かりやすい。PICSYはGoogleのPageRankがWebページの評価システムであるように、どれだけ社会に貢献したかに応じて購買力を与える。2002年のIPAの未踏ソフトウェア創造事業で、PICSYのデモソフトが採用された。採用理由は「良くわからないが、何かありそうだから」とのこと。

 PICSYをフローの貨幣と考えると、社会が対象となり、数百年後の仕組みという位置づけになってしまう可能性が高いが、例えば、企業内部でのKPIを、売上や利益よりもPICSYによるソーシャルインパクトを重要な指標とすると、その企業は社会貢献度が高いということになる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。