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『日本を再生!ご近所の公共哲学 自治会から地球の裏側の問題まで』公共哲学は多文化共生時代の必要条件だ(環境研究)

 ハンナ・アーレントの『人間の条件』を原書で読む勇気がないため、入門書として最初の1冊をこれにした。著者の小川仁志さんは哲学に自分の人生を救われたことから、その普及をライフワークにしている人だ。それに何より驚いたのは、このようなビジネス書を技術評論社が出版していること。

 アーレントが『人間の条件』で示した公共性は、「現れの空間」と「共通世界」という2つに集約される。自分が全体主義の犠牲になったがゆえに、「私」と「他社」の間がなくなってしまう世界からの反動から、公共性における言論の重要性を訴えた。アーレントの提唱した公共哲学は、日本でも学会などもできた。グローバルかつローカルというレベルの公共性を目指す議論も出てきて、国家の枠組みを超えたものとしても認知されている。

 ローカルの面白い動きとして、地域の人たちが一軒家を5万円で借りて、誰でも利用できるように開放した新潟市の「うちの実家」や、岩手県久慈市の中心部に貸事務所を借りて、地域の人たちが集まる場である「たぐきり」(世間話)など、新しいコミュニティーを紹介し、共同体のつながりの重要性を指摘している。著者の小川仁志さんは、頭で考える哲学者でなく、実践する哲学者を目指しており、自ら実践している「哲学カフェ」によって地域共同体の公共性を映画祭などで実践している。

 限界集落だけでなく、限界団地の問題からも公共哲学の実践の必要性を訴え、さらにイスラームとの共同体の軋轢の例など、近未来の以下の外国人問題に対し自らの意見を述べている。

 外交や国防といった政策を判断する国政と、住民の日常生活に無視日就いた事柄を判断する地方自治の場合とでは、自ずと性質が異なってくるからです。憲法92条の定める地方自治の本質に鑑みるならば、住民が自ら自分たちのことを決めるとうのが、主旨ですから、そこに住んでいる人は外国人であろうと、エイリアンであろうと、皆意見をいう権利があるはずなのです。しかも税金を払うという義務は果たしているのですから、その使い道について口を出せないのは不公平です。

 このことについては、憲法93条2項の最高裁の判決である「法律で地方公共団体での選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではない」という判断も紹介している。多文化共生時代にはこれらはすぐに問題になるだろう。

 ハンナ・アーレントが全体主義の反動から生み出した公共哲学という考え方は、日本においては、外国人問題で活かされるときが来るのは間違いないだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。