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『なぜガザは戦場になるのか イスラエルとパレスチナ 攻防の裏側』パレスチナ問題とは土地と水の争い(世界の歴史)

 ガザ戦争で緊急発売された1冊。ガザの人口は220万人(≒名古屋市民)、地中海に面するガザは古代からエジプト綿を輸出する港だったことから、ガーゼという言葉はガザがルーツだという。

 ハマスがイスラエルを奇襲した2023年10月7日の50年前の10月6日は、エジプトとシリアがイスラエルを奇襲して第4次中東戦争がはじまった。現在、ハマスの治安部門のリーダーであるヤヒヤ・シンワル氏は、2011年にハマスが捕らえたイスラエル兵との交換(1対1,027人)で釈放された。イスラエルの総人口は1,000万人なので、日本の人口比にすると、1万2,000人がハマスの奇襲で殺されたことになる。

 戦後は次の3つの選択がある。

1)イスラエルによる直接統治
2)第3者による統治(たとえば、NATO軍)
3)西岸ファタハによる統治

 ハマスの正式名称は「イスラム・抵抗・運動」で、それぞれの頭文字を組み合わすと、「情熱」を意味するハマスとなる。ファタハの正式名称は「パレスチナ・解放・運動」で、頭文字を組み合わすと「ハテフ」という「死」を意味する。そのため頭文字を逆に読み「勝利」を意味する「ファタハ」になった。

 1987年にはじまった第1次インティファーダは、ガザから自然発生的に行った住民の抵抗運動だ。私は1990年頃からイスラエルでビジネスを行っていたので、その惨状を目の当たりにするという貴重な経験をした。
 高橋和夫氏は、パレスチナ問題とは土地と水をめぐる争いだと断言する。オスロ合意ではアラファトの周辺の一人がイスラエルの諜報機関により買収されていたこともあり、PLOの本部には盗聴器が仕掛けられ、情報は筒抜けだった。その上で合意されたのは次の3つだ。

1)イスラエルがPLOを認める
2)パレスチナ自治地域に対しパレスチナが政府をもつこと
3)その他は交渉で決める

 パレスチナ問題とは土地と水をめぐる争いであるならば、肝心の土地と水の問題が交渉に委ねられてしまったのだ。

 高橋和夫氏はイスラエル国内のアラブ人こそが、イスラエルとパレスチナを含むアラブ世界が和解をする架け橋になるのではないかと期待している。インドの独立では、インドに英国人の入植者はいなかったのでスムースに撤退ができた。アルジェリアにはフランス人の入植者が多く、大混乱が起きた。小説『ジャッカルの日』は、そのときのド・ゴール暗殺がテーマだ。

 イスラエルの総人口は1,000万人。そのうち75%がユダヤ人で、アラブ人が20%、その他が5%だ。イスラエル女性の出生率は3.0だが、超正統派の6.64という出生率がそれを支えている。パレスチナ人のそれは3.5だ。国際的に認められたイスラエル国境内、ヨルダン川西岸、ガザの人口を合わせると1,550万人だ。そのうち750万人はユダヤ人で、760万人はパレスチナ人だ。イスラエルの選択は次の2つ。

A)アパルトヘイト国家(現在の状態)を続ける。当然、ヨルダン川西岸、ガザのパレスチナ人にイスラエルでの投票権はない。
B)ヨルダン川西岸とガザのパレスチナ国家を認め、現在のイスラエルをユダヤ人国家とする民主的国家となる。

 そもそもシオニズムには次の3つの目的があった。

1)ユダヤ人国家の建国
2)聖地パレスチナでの建国
3)民主国家の建設

 A)の状態では、3)を達成することは不可能だ。シオニズムの目的を踏襲するならば、聖地パレスチナの78%を占める現在のイスラエル国家のみを、ユダヤ人がマジョリティーの民主主義国家とする道しかないのである。

 2024年はアメリカの大統領選挙の年だ。勝利の鍵は揺れ動く激戦州(ミシガン、ウィスコン、アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ペンシルバニアなどのスイングステート)での結果が大きく影響する。特に注目すべきはミシガンだ。

 ミシガンには中東からの移民が多い。アメリカ全土のイスラム教徒の比率は1.3%とされるが、ミシガンは3%に達する。ここからアメリカ初のパレスチナ系議員であるラシダ・タリーブが選出されている。ブッシュとゴアが対立した大統領選では、ゴア陣営にユダヤ系が多いことからミシガンのイスラム教徒はブッシュを選んだ。しかし、ブッシュはアフガニスタンやイラクで戦争をかじめてしまったため、イスラム教徒は共和党から離れ、次の選挙では民主党のオバマを選んだ。

 今回の大統領選でトランプを選ぶか、バイデンを選ぶか、それとも第3の候補にするか、あるいは棄権してしまうか、ミシガンのイスラム教徒は無視できない大きな存在だ。パレスチナ系議員であるラシダ・タリーブは、ガザ封鎖の解除を求めたことで問責決議案が出され、可決されてしまった。そのときタリーブは次のように訴えたという。

私にとって、パレスチナの子ども泣き叫ぶ声も、イスラエルの子どもが泣き叫ぶ声も同じように聞こえます。なぜ、パレスチナの子どもの泣き叫ぶ声が、皆さんには違って聞こえるのかわかりません。私たちは共通する人間性を失ってはなちません


 

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。