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激動を生き抜く!これから地方公務員が考えるべきこと:ふるさと納税報道の過熱について、選挙投票率の低下と絡めて考えてみる

 「10月1日からふるさと納税が改悪される」「ふるさと納税も値上げへ」といった報道が熱を帯びています。どういうことかというと、これまで返礼品や手続きに要する費用には上限があったのですが、そこに含まれていなかった費用も加わるようになったため、これまで含まれていた費用を圧縮しなければならなくなったのです。詳しいことは報道を見ていただきたいのですが、返礼品の費用も圧縮せざるをえなくなり、ふるさと納税の返礼品が少なくなったり、納税額が上がったりすることから「改悪」「値上げ」という報道になりました。

 ふるさと納税は、税制上の大きなメリットがあり、各地の返礼品に大きな魅力があることから、規模が拡大してきました。そうした中で、過度な競争やルールの逸脱が起きないよう、国がルールを定めてきました。「返礼品の金額は納税(寄附)額の3割を上限」「返礼品はその地方の産物とする」といったルールが、後から加わっています。そのため、今では信じられないような豪華な返礼品や地方と全く無関係な返礼品が排除されてきました。今回の新たなルールは、そうした流れの1つと言えるでしょう。

 私は、今回のルールは納税本来の趣旨を改めてアピールする契機として捉えています。つまり、「改悪」「値上げ」だけでない面にも注目すべきだと思っています。それは、投票率の低下や議員の人材不足などとも関係しているように思えるので、今回はそのことと合わせて考えてみたいと思います。

 地方自治体への納税は、行政サービスを実施するために不可欠の財源です。ふるさと納税で他の自治体に奪われれば、行政サービスの実施に支障が生じます。しかし、自治体はふるさと納税をせずに行政サービスが着実に実行できるよう呼びかけていますが、それでもふるさと納税は増え続けてきました。このままでは、ますます行政サービスへの影響が出てくるはずです。

 しかし、住民はそのことに危機感を持っているようには見えません。行政サービスの最終決定や実行の最終責任を持つ議案や首長は、なり手不足で無投票となるケースが目立っています。さらには、投票率も低いわけです(実態や数字は報道などでご参照ください)。納税によって成り立つ行政サービスに対する住民の責任意識が低い状況にある、と言えます。それよりも、各地の味を楽しめたり、日常に不可欠な日用品など、自らに直接及ぶ返礼品の方を選ぶのは、その裏返しとして自然な行動となるのです。

 そこで、今回のふるさと納税のルール変更は、改めて行政サービスの恩恵を住民に理解してもらうチャンスとしての側面にも目を向ける必要があると考えます。ふるさと納税をする住民にとっては返礼品の魅力が減るかもしれませんが、ふるさと納税の犠牲となる行政サービスの縮小が打撃の大きなものであることを、今まで以上にアピールすること、もしくは行政サービスの魅力を高める努力を通じて、住民に実感してもらうのです。

 そして、もう1つは、ふるさと納税の費用が見直されることで地方自治体の純収入(ふるさと納税による寄附金から返礼品や事務費用などを差し引いて得られる真の収入)を、通常ではできない行政サービスに活かすことで、ふるさと納税の恩恵を強調することも必要だと思います。ふるさと納税をする側にと「寄附が住民サービスに還元されて喜ばれている」と実感できますし、それを通じて「自分の寄附が住んでいる自治体にはマイナスとなっている」ことへの認識にもつながってくるでしょう。

 ふるさと納税は、これからもさまざまな議論や制度の見直しが進められると予想します。改善を喜び、改悪を叩くだけではなく、改善の裏に隠れているマイナスの側面や改悪の裏に隠れているプラスの側面にも目を向け、見直しを機に望ましい方向へ導く自治体の姿勢が必要になると考えています。


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