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人材流動性と生産性がなぜ上がらないか?

我々多くの日本人が陥っている誤謬について、
今も全く変わらない現状に対して私見を述べたいと思います。
経営者はまず業務全体、個人は自身の業務内容を分解して見直す、
そしてテクノロジーを積極的に導入、使うことで早く、簡単にできることを増やすことに不断に取り組むことが必要です。

特に中高年はスマホやPCすらまともに活用できていない人が多いのが実態かと思います。それではリスキリングすら難しく、今後転職や副業、兼業もままならず、未来はかなり厳しいと言わざるを得ません。

ではなぜそれが必要なのか?
国が発表する新しい資本主義レポートから私見を述べます。

■新しい資本主義


新しい資本主義実現本部より
2023年5月17日に三位一体の労働市場改革の指針が発表されました。

新しい資本主義とは
日本の第101代内閣総理大臣・岸田文雄が掲げる経済政策のことです。
コンセプトは「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」

その中のテーマは以下です。
1新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ
2三位一体の労働市場改革の指針
3スタートアップ育成5か年計画
4資産所得倍増プラン

多くの方は所属倍増プランに関心があるかもしれませんが、
それはまた別途私見を述べたいと思います。

■三位一体の労働市場改革の指針


指針のトップには以下が記載されています。

「働き方は大きく変化している。「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らの キャリアを選択する」時代となってきた。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、 労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重 要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外か らの経験者採用にも門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動で きるようにしていくことが、日本企業と日本経済の更なる成長のためにも急務である」

キャリアは会社から与えられるものから、一人ひとりが自らのキャリアを選択する時代となってきた。
要は、自分のキャリアは自分で考えろということです。

2023にこの文言を国として指針を出している先進国はおそらく日本だけでしょう。
この言葉に違和感や異常さを感じない方は、かなり麻痺していると考えた方が良いと思います。

国民の多くは、キャリアというものは会社が考えてくれる、(会社って誰?ですが)会社に属していれば、会社という村の中で役割が与えられるという
のがデフォルトだった訳です。特に90年代前半まではまさにそうでした。

そして、ここが最も大きな課題なのですが、多くの企業、そこに勤める従業員はこのキャリアは会社が与えてくれるという感覚が当たり前になっている方が非常に多いと思います。

まずここに根深い課題があります。

この労働観を非常に長い時間をかけて日本人は蓄積しているため、1年や2年では変わらないのは容易に想像できると思います。

そもそも、人の考え方や行動は社会人2-3年目にほぼ固定されます。
その後、生存を脅かされる大きな体験がないと、考え方や行動は大きく変わりません。(それは何も悪いことでもなく、それが普通です)

またバブル崩壊以降不景気が長年継続してきたことから、
安定を求める労働者が非常に多く、90年代以降大きくは
数値を見ると転職は増えていません。

上記から、「一人ひとりが自らの キャリアを選択する」ということがデフォルトの考え方になるのは相当な年月が必要になる可能性が高いと思われます。

■労働移動の課題

次に労働移動の課題です。

「労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用にも門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動できるようにしていくこと」

そもそも、欧米はリスキリング(Reskilling)は会社が行うものです。
理由は組織目標に必要なスキルを獲得するためと従業員のリテンションです。
以前からフランスなどでは従業員にリスキルするための費用は会社が支払います。

日本は内部労働市場内の異動は欧米に比べて非常に発達していますが、
外部労働市場とのシームレスさは基本有りません。

その起源は70年代にあります。
日本も70年代までは現在の米国市場と同じく非常に流動性が非常に高い労働市場でした。(逆に米国は現在の日本と同じ年功序列的な制度だった)

資本家側として、採用コストが掛かる、育成してもすぐに辞められるとコストが掛かる。
労働者側は雇用が安定しない、不安定なため、安定が欲しい。
そのため労使のお互いの利害関係から、現在の年功序列、終身雇用制度が
作り上げられたのです。
そして、この考え方のベースが現在の労使間の考え方や、労働観、価値観に通底しているのです。

それが徐々に変わって来ているのは皆様ご存知でしょう。

しかし、上記の資本家サイドの考え、労働者の考えが、そう簡単に変わるでしょうか?

上記を極端に反転して言うと以下です。
これは特に米中だと基本的な考えかと思います。

資本家:採用コストが上がってもOK、育成して辞められても、都度都度良い人が採用できたらいい。
労働者:給与が高かったり、条件良かったら都度変わってもいい。ある程度不安定でもOK

上記に賛同できる人は日本はどれくらいいるのでしょうか?
ではなぜ?米中は上記の考え方がベースなのでしょうか?
そもそもなぜこれが実現できているか?

さらに以下の内容があります。

「この問題の背景には、年功賃金制などの戦後に形成された雇用システムがある
職務(ジョ ブ)やこれに要求されるスキルの基準も不明瞭なため、評価・賃金の客観性と透明性が十分 確保されておらず、個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいため、エンゲージメントが 低いことに加え、転職しにくく、転職したとしても給料アップにつながりにくかった。また、やる 気があっても、スキルアップや学ぶ機会へのアクセスの公平性が十分確保されていない。 ○ 人口減少による労働供給制約の中で、こうしたシステムを変革し、希望する個人が、雇用形 態、年齢、性別、障害の有無を問わず、将来の労働市場の状況やその中での働き方の選択 肢を把握しながら、生涯を通じて自らの生き方・働き方を選択でき、自らの意思で、企業内で の昇任・昇給や企業外への転職による処遇改善、更にはスタートアップ等への労働移動機会 の実現のために主体的に学び、報われる社会を作っていく必要がある」

■なぜ職務や要求されるスキル基準が不明瞭なのか?

日本は総合職として、職務の中身は決まっていない。会社側が都合よく都度変えれる。スキルの基準は明確ではなく、その部門で過去から行われているやり方をOJTで学んで、その会社での仕事のやり方や基準を学ぶことになっています。

■最大の問題は何か?

多くの日本企業は、多くの部署で自社にあったシステム、業務のやり方を
独自に長年のやり方で構築しています。
そして、そこを年功序列制度や終身雇用制度が支えて、
長年勤めていく間に自社にとって最も活躍できる人材を育成していきます。

例えばエリートコースの営業銀行マンだと以下です。
経験を徐々に積んで難易度の高い顧客を担当していきます。
銀行だけではなく他の企業も同様でしょう。
入社~研修
初期配属:店舗窓口にて顧客対応
営業部配属:地域の営業店で比較的小規模なお客様を多数担当
他店異動:中堅規模の顧客を担当
本店営業部:大企業顧客を担当

ただ、これには大きな問題があります。
同じ銀行の営業でも、他行に行くと、業務プロセスや使うシステム
用語などが違うのです。

これがなぜできるか?成立したか?は
総合職、年功序列制度、終身雇用制度が関係しています。

米国は流動性が高いため、同じ仕事で転職しても、ほぼ業務プロセスもフローも同じで、すぐに即戦力として即日働けます。

欧米も同じで、職種別労働組合があったり、一般的なホワイトカラーは
職種が変わらないので、同じ仕事を長くやっていく、そして賃金は転職しても職種別労働組合でほぼ横断的に相場が形成されているので、転職は容易です。(欧米でもエグゼクティブレイヤーは別)

要は日本はそれぞれの個社ごとの個別性が高すぎて、業務の標準化や
賃金の標準化、見える化が行われておらず、企業ごとに全く違うということが労働市場の流動化が起きにくい一つの大きな要因となっており、
そのため似たような仕事をしていても自社で活躍できるか?即戦力か判断しにくい、採用してから一定期間中途社員でも業務や用語、プロセスを学ぶ期間が1年程度必要というコストが発生します。

ここは経営からすると大きなコスト、生産性ロストです。

しかし、自社の業務をERPやSaaSツールに合わせるのではなく、
自社の現状の業務に合わせようとする、なぜか独自性をここで発揮しようとするため、個別性が高くなってしまい、結果長く働けば働くほど
自社でしか即戦力にならない人員を育成してきたのです。
それが結果的にコストを抑えることにつながる、都合よく社内異動できるからです。

これは経営にとっては非常に都合が良く、楽なため簡単には変わらないでしょう。

上記から個人として言えることは、常に労働市場を意識せよ。
労働市場で異動がしやすいスキル、経験を常に意識せよです。

そうしてこなかった方も、今からでも間に合います。
その大きな一つのやり方は、働きながら、他社の仕事をすることです。

もし興味がある方はライフシフトラボの説明会にぜひいらしてください。









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