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首都高速をハックせよ!

20xx年、突然東京のど真ん中に一周14.8kmの緑のループ「東京G-LINE」が現れた。東京G-LINEにはあらゆるところからアクセスでき、都心でありながら子供が自由に走り回り、大人たちも喧騒を忘れ寛いでいる。もちろん車なんて走っておらず、バランス良く植えられた木々が美味しい空気を提供しているだけでなく、心地良い日陰が十分に生み出され、お年寄りも快適に散歩している。程よい密度で設置された飲食店では、コーヒー片手に読書をしたり、絵画を楽しんでいる人もいる。犬の散歩の途中に友人に会い、そのまま遅めのブランチを楽しむ。緑のループを通して車のない環境が、こんなにも快適で静かであることを人々は初めて知った。

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同時に、そこは未来のモビリティーのテストフィールドにもなっているようだ。スマホのアプリで予約すると自動運転カプセル"G-Cap"が到着して、目的地まで連れて行ってくれる。歩行者と共存するG-Capは、スピードはそんなに早くはないが人や荷物をスムーズに運んでくれ、環境の整ったカプセル内では作業やビデオ会議など、様々な仕事をこなすことができる。移動を楽しみたい人には、ホバーボードやホバーチェアーをレンタルすることができ、運動したい人には通常の足で漕ぐ自転車に加えて、手で漕ぐ自転車も用意されている。

老若男女、LGBT、ハンディキャップ、多国籍、多宗教、様々な人々が集まり、誰もが自由に「自分」でいられる場所になっていた。そんなボーダレスの象徴である場所、そして最先端テクノロジーの集積地である場所、「東京G-LINE」が東京のど真ん中に突如として現れ、世界の注目を浴びている。いったいどのようにして「東京G-LINE」は生まれたのだろうか!?

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第一話『東京G-LINE物語』のあらすじ

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(絵:TAMARU)

東京G-LINE 誕生の秘話

2020年、世界は未曾有の危機に立たされていた。コロナウィルスの蔓延を防ぐために様々な社会活動が制限され、数々の都市がロックダウン、人々が移動しない世の中が否応なく訪れていた。その反面、このロックダウンを通じてリモートワークが常識として急激に普及し、本当の意味での働き方改革が定着していった。

また、移動という概念自体も大きく変革した。人々は満員電車や渋滞に無駄な時間を費やすライフスタイルにはもう戻れず、移動を最小限にしつつも単にA地点からB地点に移動するのではなく、移動時間を仕事に活用したり、健康のためにエクササイズにしたり、リラックスタイムにしたり、移動自体に意味を持たせることがブームとなった。

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そのため自分で運転する自動車の所有率はより一層減少し、自動運転技術が急速に発展しただけでなく、道路のあり方や法改正が大きく見直されることとなった。「車」でなく、「人」を中心とした道路のあり方が主軸に置かれ、同時に自動化されたモビリティーをどのように制御するべきか、適切な公共モビリティーのサイズや速度はどの程度か、歩行者と並走できるようなパーソナルモビリティはどう共存させるべきか、様々な実験を行うことが急務とされた。その多様性に対する需要は爆発的に増え、それらはスマホのアプリ上で全て統合され、シェアされていった。

その象徴となるプロジェクトとして「東京G-LINE」が生まれた。都心環状線一周14.8kmが緑豊かな公園になると同時に、未来のモビリティーのテストフィールドとして整備されたことによって、世界中の企業やスタートアップが最先端の技術を持って、こぞって集まってきた。政府に「イノベーション特区」と正式に認定を受けたこの「東京G-LINE」では、様々な道路交通法の対象外となり、新しい法整備の基盤づくりにも役立っている。

「東京G-LINE」は日本橋地区においては地上に降りてきて、青空を取り戻した日本橋のウォーターフロントを歩くことができる。そして、日本橋のたもとからは未来の水上交通網にアクセスができ、東京が水の都としての活気を改めて取り戻していた。その名も「東京B-LINE」。その全貌や如何に!?

つづく

#cakesコンテスト2020 #日本橋 #首都高 #モビリティー #MaaS #都市公園


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