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テレビ・ラジオで紹介される方法/クラファン成功の秘訣(2)

電子楽器 インスタコード のクラウドファンディングはどうして約8000万円の支援を集めることができたのか、今回は広報についてお話しします。

▼前回は事前準備について書きました

知ってもらわないと始まらない

商品の「売上予測」は、簡単に計算できます。

売上 
  ‖
商品を知っている人数
  × 
購入する確率
  × 
単価

(ちょっと乱暴ですかね?)
何はともあれ、知ってもらわないと商品は売れません。

インスタコードのクラファン支援者(購入者)は2,354人です。
その中で元々の知り合いは100人くらいしかいなかったので、自分の発信力だけでは決して達成できなかったことがわかると思います。
クラファンの成功のためには「広く知ってもらうこと」つまり広告と広報が非常に重要でした。

マスメディアへの広報

お金をかけずに多くの人に知ってもらう方法があります。
それは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ネットニュースなどのマスメディアに取り上げてもらうことです。

プレスリリースの書き方

マスメディアに取り上げてもらうためにはプレスリリースを書かないといけません。
いくらディレクターや記者と知り合いだとしても、電話で「番組で紹介してよ〜」などと言ったところで、相手を困らせるだけですし、担当者から嫌われます。

プレスリリースを出す前に大事なのは「媒体研究」です。
番組や誌面をしっかり見て、ディレクターはどんな情報を出したいのか、相手の気持ちになって提供する情報の切り口を変えないといけません。

そして、プレスリリースを書くことは、誤った情報を掲載させないというメリットもあります。

せっかくテレビや新聞で紹介されたのに「勝手に情報をねじ曲げられた」という話を聞くことがありませんか?
取材をした記者が誤って解釈することもありますし、記者が予め用意されたストーリーに合うように解釈を変えることもあります。そういうことが無いように、私はプレスリリースだけでなく、取材前に質問内容を聞いて回答を書面で渡すようにしています。
書面で渡した情報をねじ曲げられることは滅多にありません。

プレスリリースの書き方は専門書を読んで勉強しないといけません。
私のプレスリリースのバイブルは玉木剛さんの「全部無料で宣伝してもらう、対マスコミPR術」という本です。
この本が出版された20年前に買ったのですが、マスコミ対策の本質は今でも変わらないと思います。

ラジオ

意外にも大きな反響があったのはラジオでした。
私はラジオをよく聞くのですが、ラジオってパーソナリティとリスナーが信頼関係で結ばれているので、パーソナリティの「これは良いね」っていう言葉はテレビよりもリアリティがあるんですよね。

私はもともとミュージシャンとしていくつかのラジオ番組にゲスト出演させてもらうことがあったので、ディレクターに連絡すれば、ローカルのAM/FM局に出演させてもらえました。パーソナリティの皆さんもすごく応援してくれて、番組出演後は大きな反響がありました。

しかしたとえAM/FM局とつながりがなくても、地域のコミュニティFMはすぐにゲスト出演させてくれる場合が多いです。
コミュニティFMの場合、放送エリアも聴取率も小さいので宣伝効果が狙えるわけではありませんが、トークの練習ができます。またパーソナリティの方はたいてい人脈が広いし、コミュニティFMは地元の情報が集まる場所なので、クラファンに協力してくれそうな人やイベントを紹介してもらえることもあります。
また、コミュニティFMに出演する際に許可をもらえたら、スタジオの様子を撮影してYouTubeにアップすると宣伝材料にもなります。またその動画をプレスリリースと共にAM/FM局の番組に提出すれば、ゲスト出演の道が開けると思います。

ラジオ向けのプレスリリースは、Q&A形式にして、そのままコピペすれば台本にできるように工夫しました。ラジオのディレクターはすごく忙しいので、労力を減らしてあげると喜ばれます。
また、そのままコピペできるような台本をあげると、やる気のあるディレクターはもっと良いものを作ろうと頑張ってくれます。

テレビ

テレビは私からアプローチして出演できたケースもありますが、ネット等で情報を知ったディレクターから直接連絡をもらう場合がほとんどでした。
テレビの場合は持ち込んだ企画やネタをそのまま紹介してくれるということは少なく、最初に企画が立ち上がって、そこにハマるネタを探してる場合がほとんどなので、リサーチャーやディレクターの目に留まるように、新聞、雑誌、ネットメディアなどに情報を掲載してもらうのが先決です。

テレビに出演したら必ず録画しておきます。
そして他局から取材が来た時には、以前の録画を見せるようにしています。そうすると、ディレクターは、もっと良いものを作ろうと頑張ってくれるので、テレビに出演するたびに内容が良くなっていきました。

※放送を録画したDVDをテレビ局からもらえる場合がありますが、それは他の人に見せてはいけない約束なので、あくまで個人的に録画したものを見せるようにします。

新聞

私は当時静岡に住んでいたので、新聞へのPRは正攻法で県庁の社会部記者クラブへプレスリリースの投げ込みを行ないました。
※投げ込みを知らない方はググって下さい

ただプレスリリースも切り口が大事です。
「新しい製品を開発しました」とか「クラファンやります」では取り上げてもらえるはずがありません。新聞の場合は特に「公共性」「時事性」が求められます。

新聞は、情報の早さにこだわりを持っているメディアなので、テレビや雑誌で取り上げられたネタは基本的に扱ってくれません。
しかし、切り口が新しくてニュース性があれば取り上げてくれます。

折しもクラファンを始めたころはコロナの第一波で、世間のニュースはコロナ一色でした。そこで私は、クラファンを紹介してくれたライブハウスや飲食店に売上の一部が還元される仕組みを作って「コロナで困っている業界を応援」という切り口のニュースリリースを書きました。
すると、スポーツ新聞のローカル面で大きく取り上げてもらえました。
また、それを見た地元のラジオパーソナリティの方が番組にゲストで呼んでくれるという流れが生まれました。

雑誌、ネットメディア

雑誌やネットメディアはライターさんに直接連絡を取って記事を書いてもらいました。友人から紹介してもらったり、掲載して欲しいメディアの署名記事から気に入ったライターさんを見つけて、Twitterアカウント等を探してDMで執筆を依頼しました。

ライターさんは、自らネタを媒体に持ち込んで、編集長の許可が出たら取材して記事を書いて原稿料をもらっています。読者に喜んでもらえるネタを提供すれば取材してくれます。
同じライターさんで複数の媒体に持ち込んでくれるケースもあります。

なんだかんだ人の力

広報について偉そうに書きましたが、アタックしても空振りするのがほとんどです。「宣伝してくれ!」という気持ちではなく、記者さんやディレクターさんの「いい記事を書きたい」「いい番組を作りたい」という想いに寄り添って情報を出し続ければ、いつか取り上げてもらえます。

そしてなんだかんだ口コミも大事です。

昔の音楽仲間、高校の先輩後輩、あらゆるネットワークをフル活用して、色んな人に会って、試作機に触ってもらって、プロジェクトのことをお話すると、多くの人が拡散に協力して下さいました。

活動報告は最後のひと押しに

クラウドファンディングのサイトには、ブログのように「活動報告」を書き残す機能があります。
そこで日々の報告や感謝の言葉を綴っていました。

そこで、顔の見える生産者をアピールしました。
顔見せしたことは、マイナス効果だったかも知れませんが、少なくとも支援してくれた方は、私の発言や行動を見て、信用して、心から応援してくださったのだと思います。

クラファン終了後、製品が完成するまでには色んなトラブルがありました。半導体不足で完成が2ヶ月遅れたり、予定していた楽譜サイトとの提携が白紙になったり…。そんな状況だったので、途中で支援金の返金を求めてきた人がいました。しかし、それは支援者のたった1%くらいでした。

「詐欺だ」とか「ふざけるな」などとキツい言葉を浴びせられましたが「そんなことを言うのは100人に1人の少数派だ」と心に言い聞かせ、それよりも圧倒的に多く寄せられる応援や慰めのコメントに励まされながら、なんとか心が折れずに乗り越えることができました。

真剣にやってる友達に「詐欺」とか「ふざけるな」とはなかなか言えませんよね。99%の人は、私を「仲間」のように感じて下さっていたんだと思います。

ラジオ、テレビ、様々な媒体で知って、興味を持ったとしても、製品が届くのは1年後だし、製品には触ることができないし、実際に購入するにはすごく高いハードルがあります。

真摯な態度を伝えて安心感を持ってもらうことが、最後のひと押しになるんだと思います。

次回「広告費は何円必要?」

今後もこのnoteでは、私がハードウェアスタートアップの起業で経験したことや、失敗しないものづくりのノウハウなどを書いていきます。

次の記事では、クラファンで8000万円集めるために使った広告費についてお伝えします。

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