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non-verbal

kと会った日の夜はいつもそうだけど、嬉しさでも悲しさでもない涙がふと溢れ出す。これを私は「魂の結露」と言っていて、私の中の何かが出てきて、下界との温度差で水滴をもたらすような現象だと思ってる。そこに意味はない。でもこの涙はすごく心地よく、温かいものだ。

正直言うと、久しぶりに会うので少し緊張していた。でもkは相変わらず。会うなり開口一番、「ホワイトのコートに身を包む君〜」とかってミュージシャンがサキを見たら作詞しそうだな、ってしょうもない即席ソングを歌い出したり、20回は来てるこの場所の位置を未だ覚えられなかったり、思想めいた話をずっとしてたり、カブトムシが木の蜜を吸うようにずっと私に吸い付いていたりしてる。結局私もいつもの私で、貪欲にkを求めて、乱れて、咥えて、会社や孔子の話の他、「人間の雄のペニスに骨がない」という話や男性のmultiple orgasmの話を嬉々としてkに話して、メイクが落ちるまで笑い転げていた。
余談が過ぎるが記録のため書いておくと、kは私のオイルマッサージがすごく好きなようで喜んでくれるのだけど、アキレス腱とか踵辺りをすると「おおー、きもちいいー」と喜んでる。だから「いつもそう言うよね」って言うと、「ねえ、他の誰かと勘違いしてない?俺、踵が気持ちいいなんて言ったことないんだけど」って、マッサージの心地よさで思わず溢れるegoが可愛過ぎる。挿入を含めた男性との交じり合いはあるけれど、マッサージはここ10年ぐらいkしかしてないわ、って思う。うっかり余計な事を漏らす犯人にならず良かった。

何かを説明する時、人は誰もが知っているわかりやすい例や言葉を用いる。歴史的に「●はxxという意味です」をたくさん作ってきていて、人間は絵から言葉へと道具を進化させてきた。だけどこれは、「宇宙の中の地球の惑星の人間という生物」に限定されたものであるから、全ての現象を言葉で正確に伝えるのは当然限界がある。宇宙的には限界というより寧ろ、言葉では表現が「不可能」なだけだろうし、言葉で全てを表現できるというのは、井の中の蛙、人間の驕りでしかない。
私はその不思議な感覚も大切にしたいとどこかで思っている。だから、kのことを一般的にわかりやすい表現で括りたくないと思っているんだろう。括ることで何かがこぼれ落ちる。括って詰め込んだ箱には、大切なものが落ちてしまった残骸でしかない気がしてる。だけど、別に自分が正解だというつもりはないし、青色が好き、緑が嫌い、といったレベルの、単に嗜好でしかない。宇宙人って存在すると思う、と同じ話。
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https://note.com/garrrr

そういえば、海外で暮らすGarrrrさんが「日本で言うセフレという表現がしっくりこない」といったようなことを書いていらっしゃった。そちらではセフレに近いところでFriend+というらしい。plusって面白いよね。足すというより二乗とかルートとかはどう?なんてワインを飲みながら、しょうもない議論をしたらすごく楽しそう!と妄想する。

「セフレ」という言葉は私も前から興味深いと思っていて、私の見解を言わせてもらうと、自分を守ろうとする意識の現れ、と思う。
セックスする「だけ」の人で、相手も私も、いわゆる「愛」はない。そうやって括ることで、相手がもし自分が望んでいない塩対応をしてきた時に、「まあ、セフレだから」とダメージを最小限にすることができる。セックスの有無や良し悪し等でその人の関係性は測れないのだけれど、不必要に自分を傷つけたくない。とりわけ日本は「愛」という概念に縛られてるから。イエスキリストが言う、慈愛のアガペーもギリシャ神話の神、エロースも愛ではあるけれど、仏教的に後者のエロースを悟りを妨げるものとしてきたから、拒否反応が起こるのかもしれない。
ただ、これは生存する上でとても大事なことだし、その人の繊細さとか人間らしさが現れるから、そう表現する人とは友達になりたい。後ろから刺されることはなさそうであったかい人という印象。だけど、微妙な「何か」が「セフレ」という箱からこぼれ落ちてしまう気はする。そこに違和感が発生するのだろう。その人たちが意図的にこぼした、「何か」を自分は拾えたようで、なんだか嬉しいのかも。
そして、そこに気がつける自分にも、その儚さや繊細さがあるから、共鳴するのかもしれないよね。

アイボリーはホワイトではない。
だけどそれはどっちでもいい。
あなたがこれをアイボリーというなら、そうだろうし、
あなたがこれをホワイトというなら、そうだろう。
けどビジネスとして表現するなら、明確にしたほうが確かにいいよね。
ただ私はね、この白っぽい何かがとても愛おしく思うの。
アイボリーだかホワイトだかはわからないけど。

ただそれだけのことです。



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