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2019年アクチュアリー試験の会計の雑感

アクチュアリー会のホームページに2019年の解答もアップされましたね。仕事が少し落ち着いたので、ようやく問題に目を通すことができました。
会計の出題について、感じたことを書いておきます。

問題1

問題1については、難易度としては例年通りかと思います。少し細かな点を問うているところもありますが、少なくとも3~4点は確保したいところです。

(1)の帳簿体系は理論問題では頻出ですが、なかなかイメージがしにくいのかと思います。最近では実務でも会計ソフトが行うこともあり会計のフローが見えにくくはなっているのですが、図表2-7「簿記の手順」の流れは身に着けておきたいですね。
また(2)の帰納的アプローチ演繹的アプローチについては以前も書きましたがこちらは頻出ですね。数学系の学問は演繹法が中心で、アクチュアリー試験のKKT(特に会計)で躓く原因はここに一因があると思っているので、「企業会計原則は帰納的アプローチ」と機械的に暗記するのではなく、しっかりと理解してほしいと思います。
(3)(4)はぜひともとっておきたい問題です。

問題2

問題2は正しいものの組み合わせを選ぶ問題ですので、列挙型で限定されているものをしっかりと勉強しておく必要があります。こちらも3~4点は取りたいところです。

(1)企業会計原則が掲げる7つの一般原則は、会計を考える上での基礎となります。これは7つとも覚えておく必要があります。また「重要性の原則」は、一般原則としては明示されていないものの7つの一般原則と合わせて記載されていることが多いので注意が必要です。
(2)の「仕入割引」については頻出です。なぜ取得原価に含めないかということも合わせて理解しておきたいですね。
(3)(4)は覚えておくしかないところです。繰延資産については頻出であり、5項目の限定列挙ですので是非とも覚えておきましょう。
(5)社債発行費の償却の方法については、設例により計算問題とともに、2つの方法(利息法・定額法)を押さえておきたいところです。

問題3

4つの記述のうちから誤っているものを1つだけ選ぶ問題です。問題3は全部を理解してなくとも違っているところを1つ見つければよいので、理解しているところが増えれば増えるほど正答率は高くなります。
選択肢を読んで、あいまいな理解となっているところを復習しておくのが有効かと思います。少なくとも3点取りたいところです。

(1)は株式会社の機関設計に関する出題で、この範囲からはほぼ毎年出題されています。指名委員会等設置会社などわかりにくいところですが、「5人以上」というところで引っ掛かりがあれば正答できます。
(2)は改正論点からの出題です。会計基準は常に改正があり、時代に合わせて会計は変化しています。実務で会計に携わる以上、変化に対応する必要があります。改正論点は出題されやすい傾向にありますので、逆にヤマが張りやすいですね。
(3)は有価証券について保有目的に応じて「売買目的有価証券」「満期保有目的の債券」「子会社・関連会社の株式」「その他有価証券」の4つに区分して考えます。ここは押さえておきたいところです。
(4)基準で「いずれか低い金額が取得原価」とされている場合は、多くの場合は保守主義の原則によるものです。ですので、有形固定資産の取得原価にこの表現が出てくることに違和感を覚えるのではないでしょうか。
(5)は細かいですね。有価証券報告書を作ったり監査したりする立場以外では、実務でもなかなか出てこない部分かと思います。

問題4

問題4は計算問題となります。基本的には教科書の設例などの数値を変えた問題になるので、落としたくないところです。(1)~(3)は必須で、(4)は後述しますが取れなくてもしかたないかと思います。少なくとも3点、できれば4点取りたいところです。

(1)は子会社株式の評価の問題で、B社の純資産額を算定して評価損を算定します。。
(2)は回収基準生産基準のそれぞれについてどこで売上を認識するかを考えていくことになります。
(3)については、減損損失を計上するとき、「その資産グループにのれんが含まれているとき、減損損失はのれんに優先的に配分する」ということを知っていれば解くことができます。
(4)については、教科書の設例を切り取って問題にしていることから、〔 エ 〕の「リサイクリングをしない場合のその他の包括利益」という全く意味のないものを計算させていることとなります。
そもそも、教科書では、包括利益の構成要素として「事業の利益」と「その他の包括利益」とした場合リサイクリングは不要であるが、従来の損益計算書で算定されてきた当期純利益を包括利益の計算の途上で表示するために、「その他の包括利益」においてリサイクリングが不可欠となるとしています。
あくまで結果であるリサイクリングをするしないで場合分けするという出題方法は問題としては適切ではないと考えています。

問題5

問題5も計算問題で、2019年は退職給付会計が出題されました。会計の中でも退職給付会計は難しく感じる人も多い単元ではあるのですが、アクチュアリー志望者にとっては必ずできるようになってほしいと考えています。
一般の事業会社の会計の実務の中で、アクチュアリーと接点を持つのがこの退職給付会計です。数年に一回の出題となっていますが、私は毎年出題してもいいのではと思っているくらいです。
個人的な思いは別にして、2点~3点ここで確保できれば合格には近づくかと思います。

(1)の退職給付会計については、教科書でもアクチュアリー会の解答も触れていませんが、ワークシートを使って考えるといいでしょう。基準の設例でも使われており、簿記や会計士試験の勉強でも広く使われています。
今後、私もワークシートの使い方を記事にしていきたいと考えています。
(2)のストック・オプションについては、権利確定日までに2名の退職を見込んでいることから、198個のストック・オプション数を基準に考えればいいこととなります。

総括

全体としての難易度は、中~易かと思います。特別に変な問題はなく、しっかりとバランスの取れた問題であったので、ちゃんと勉強ができた人は合格できる試験であったのではないかと思います。
勉強法としては、教科書を読み込むこと、教科書の設例を理解することが重要であると考えます。

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