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アクチュアリー試験【会計】2018年問題1(1)

「アクチュアリー試験の会計は教科書を覚えるだけ」という声を時々耳にします。教科書を覚えることで合格した人にとってみれば「だけ」なのかもしれませんが、よくわからないことをやみくもに覚えることが苦手な人にとってはそれってかなりハードルが高いと思いませんか?

確かに、会計の勉強においては覚えておかなければならないことがたくさんあります。ましてや、しっかりと理解した上で覚えようとすると試験の性質上、費用対効果が悪すぎるため、丸暗記するのはやむを得ないと思います。

しかし、せっかく会計を勉強するのですから、しっかりと濃淡をつけて重要なところを中心にある程度の理解と共に暗記をしていって欲しいと思います。

【はじめに】

さて、今回から、2018年試験の会計の解説を行います。
主に読者の対象として、理系の学部出身でアクチュアリー試験を受験しているものの、会計の勉強をしてもしっくりきていないような人を想定しています。

会計の理論は自然法則のように絶対的なものがある訳ではなく、どのような立ち位置をベースとして理論立てているのかを整理しておく必要があります。場合によっては妥協の結果、処理方法が定められている場合があります。

初学者(特に理系出身の初学者)は、なぜそうするのかがモヤモヤしたまま設例で解き方を覚えていくことが多くなるため、なかなか教科書を読むのが初めのうちは大変かと思います。そういった人のヒントとなるように、試験問題を通じて説明いたします。

なお、解説にあたっては、『財務会計講義 第19版』を参照しています。2019年試験の指定教科書は『財務会計講義 第20版』となりますので留意してください。

また、当面は無料記事として公開しますが、一定期間経過後には有料記事にする予定としております。ご了承ください。

【今回の問題】

【解説】

企業会計原則の7つの一般原則のうち真実性の原則に関する出題です。
真実性の原則とは「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」とする原則です。

そして、この真実性の原則に反する虚偽記載には、「借入金や費用など、現実に存在するものを隠蔽したり、商品や売上など、実際には存在しないものを存在するかのごとく会計処理する場合」があります。
そして、教科書では、「このような虚偽記載を通じて架空利益を計上する行為を粉飾決算といい、逆に利益を隠蔽した場合を逆粉飾決算という」としています。
したがって、答えは(H)逆粉飾決算 が答えになります。

企業会計原則の7つの一般原則ですが、下記の7つになります。

★ 真実性の原則
★ 正規の簿記の原則
★ 資本と利益の区別の原則
★ 明瞭性の原則
★ 継続性の原則
★ 保守主義の原則
★ 単一性の原則

先ほど、濃淡をつけて覚えて欲しいといったものの、この7つの一般原則については必ず覚えておきたいところです。

一般原則のそれぞれについて、教科書では「」で囲まれて表記されています。これは、『企業会計原則』の定義であり、この定義も理解して覚えるのがいいでしょう。

【教科書の粉飾決算の記述について】

さて、本問を見たときに私は少し違和感を覚えました。理由は2つあります。

一つ目の理由は、教科書では粉飾決算・逆粉飾決算について、上記のように架空利益を計上する行為を粉飾決算、利益を隠蔽した場合を逆粉飾決算として整理しています。
しかし、一般には、架空利益の場合も利益の隠蔽の場合もどちらも粉飾決算としているのではないでしょうか。そして、とくにに利益の隠蔽の場合を逆粉飾決算とよぶこともある、といった認識だと私は考えています。教科書の解釈も間違いではないのですが、文献によって解釈が分かれる内容が出題されているように感じます。

もう一つの理由は、そもそもとして明確に会計用語として定義されているわけではなく「逆粉飾決算」と”俗に”よばれているような用語について、出題しているということです。
会計基準を網羅的に確認した訳ではないのですが、おそらく「逆粉飾決算」という用語は会計基準には出てこないかと思います。
教養としては問うのはいいのですが、会計の理論問題として出題するこはは適切ではない気がします。

とはいえ試験委員も会計の問題を出すのに苦労しているのだと思います。
教科書という限られた範囲の中から問題を作成するため、こういった問題も一定やむを得ないと考えるしかないですね。

【演習問題】

(1) 7つの一般原則のうち、上位に立つ最高規範として、企業会計原則の最初に位置づけられているものは、〔 ア 〕の原則である

(2) 〔 イ 〕の原則は、「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」とする原則である。

(3) 〔 ウ 〕の原則は、「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」とする原則である。

(4) 〔 エ 〕の原則は、「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない」とする原則である。

(5) 株式会社の株主資本のうち、資本金以外の部分は、資本取引から生じた〔 オ 〕と、損益取引から生じた〔 カ 〕に分類される。企業の経営成績と財政状態を適正に表示するために、両者は厳密に区別されなければならない。

<解答>
(1) ア 真実性
(2) イ 保守主義
(3) ウ 明瞭性
(4) エ 単一性
(5) オ 資本剰余金  カ 利益剰余金

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