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”日本資本主義の劣化”を示すような銀行オンラインシステム「全銀システム」不具合~現役技術者で対応が困難~障害の原因すらいまだ分からず


【画像① 記者会見で頭を下げる全銀ネットの首脳陣(中央は辻松雄理事長)。10月18日)】


◆1973年稼働開始以来、初めての大障害に見舞われた全銀システム


「半世紀にわたって守ってきた安定稼働にピリオドが打たれた。2023年10月10日、国内の銀行間送金を担う『全国銀行データ通信システム(全銀システム)』が大規模なシステム障害に陥ったのだ。1973年の稼働開始から顧客に影響を及ぼすシステム障害を一度も引き起こしたことはなかったが、10の金融機関で他行宛ての振込に関するオンライン処置などができなくなった。10月12日未明の復旧までトラブルは2日間続いた」


「異変が生じたのは10月10日午前8時30分過ぎだった。全銀システムと各金融機関をつなぐ中継コンピューター(RC)で不具合を検知。三菱UFJ銀行やりそな銀行など10の金融機関で他行宛ての振込処理ができなくなった。…翌11日午後6時時点で未処理の取引は87万件。処理の遅延など何らかの影響を受けた振込処理は仕向けと被仕向けを合わせて506万件に上った」


(参考)「全銀システムで50年で初の不覚、切り戻し不可・パッチ作成失敗で障害復旧まで丸2日」2023/10/20 日経XTECH

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01157/101800096/


一般によく利用される金融機関を巻き込んだこのシステム・トラブルで、迷惑を被った方は読者の中にも多いのではないだろうか。上記はやや専門的な報道だが、このシステム障害について金融庁は原因解明と再発防止策に関して報告せよ、と全銀システム側に命じていることは、各メディアで報道されているところだ。


しかし、発生と回復からしばらくたったこの事件、いまだ本当の原因は分からないのだという。銀行オンライン保守管理の関係者がこう述べている。



「全銀システムは、根幹になる部分の設計自体が古く、プログラム言語も旧式のものを使っている。このため、今回のシステム・トラブル以前から全面更新が決められており、2027年までにこれが実施される計画だが、そうした矢先の大規模トラブル発生となってしまった。実は、今回のトラブルについては、全銀システムに各金融機関からのアクセスを中継するコンピューターの不具合ではないか、との見立てが出ているが、その原因は本当のところまだ分からない。全面更新への取り組みが急がれるが、それが関西するまでに同じようなシステム障害は必ず起きるはずで、『再発防止』については保障できる段階ではない」


【画像② いまや銀行・金融機関のオンライン取引は日常生活の中で欠かせないサービスであり、システム全体のマヒは企業のみならず個人生活にまで大きな影響・被害を広めてしまう。】


主要な都市銀行などの送金システムは、中小企業など多くの企業にとって”生命線”である。「同じようなシステム障害は必ず起きる」としたら、そして、この度よりも復旧が遅れるなら、資金ショートで倒産という事例だって発生しかねない。


「原因は分からない」というが、しかし、どこまで問題が明らかになっているのだろうか? 多くの企業にとって「運を天に任せられる」ような問題ではない。全銀システムの制御コンピューターは1960~70年代開発の「富士通メインフレーム」である。すでに開発・運用が60年以上という、よく言えば"古強者"、ありていには"骨董品"の部類のシステムだ。


◆全銀システムの制御コンピューターは1960~70年代開発の「富士通メインフレーム」

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