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中国「反スパイ法」でとうとうジャーナリストを拘束~安全保障・軍事問題でスクープ連発の香港女性記者


【画像① 中国で7月1日から施行された改正「反スパイ法」は、所管する国家安全部の権限を広げると共に容疑適用範囲を大幅にひろげ、極端に言えば「いつでも誰でもスパイ容疑で拘束できる」という拡大解釈を可能にするものとなった。国内で見えない反発を広げている3期目に入った習近平指導部体制を護るためのものであることは言うまでもない。】


◆香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」記者、取材先の北京で拘束


とうとう習近平政権下で強化された改正「反スパイ法」に抵触した容疑で香港紙の女性記者が中国国家安全部(諜報秘密警察、中国版CIA)に取材先の北京で逮捕され、現在も拘束されて取り調べを受けていることが分かった。捕まったのは、香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙で外交・安全保障問題を担当して取材、執筆していた女性記者、陳敏莉(ミニー・チャン、45)。


陳氏は10月末に北京で開催されていた中国国防部主催の国際安全保障交流会議「香山フォーラム」の取材中に消息を断ち、行方知れずだった。この状況については海外からも注目を集め、日本でも読売新聞が報道していた。



「香港紙・明報(電子版)は(12月)1日、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストで安全保障を担当する陳敏莉記者が10月末に北京に出張してから連絡が取れなくなっていると報じた。…陳記者は10月末に開かれた安全保障関連の国際会議『香山フォーラム』を取材した。その後、同僚と連絡が取れなくなった。家族は『(陳記者は)北京にいる。個人的な事情で、現在は安全だ』と説明しているという」


(参考)「中国兵器開発でスクープ、香港紙の記者が消息不明…1か月前に北京へ出張後」2023/12/2 読売新聞オンライン

https://www.yomiuri.co.jp/world/20231202-OYT1T50150/


記事では家族が連絡をとれているかのようなコメントを載せているが、おそらく中国当局からそう言わされたのであろう。所属する新聞社は、やはり当局をおもんばかってか、「陳記者は休暇中」と説明したという。


しかし、陳記者は11月1日付で署名記事が「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙に掲載されて以降、ぷつっと連絡不能状態になっていた。そして、12月に入って、中国政府筋から次のような情報が流れたのである。




【画像② 改正「反スパイ法」に抵触した容疑で拘束された香港紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」記者、陳敏莉(ミニー・チャン)氏。数々のスクープをものし、注目を集めていた。】



「陳記者は、10月31日夜に国家安全部要員によって拘束され、現在は北京から離れた地方都市の国家安全部施設で取り調べを継続している。現在、主な容疑として認定されているのは、国家機密窃取及び漏洩罪である」


陳氏は香港大学卒業後、「香港経済日報」を経て「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙に移籍し、長く軍事、外交、安全保障問題の取材と記事執筆に従事してきた。中国では軍事関連記事が人気を集めており、陳記者はしばしば他紙を抜く主に中国人民解放軍に関わるスクープをものし、実力あるジャーナリストとして定評があった。


陳氏がこの度、改正「反スパイ法」の適用で拘束されたのは、この間、汚職や秘密漏洩など「規律弛緩」で摘発や高官更迭の続く人民解放軍上層部への締め付け強化と関連しているのではないかと言われている。


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