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断末魔にさしかかるゼレンスキー大統領~パレスチナ戦争の陰でウクライナから手を引く西側諸国の動きで「停戦圧力」が増大


【画像① ゼレンスキー大統領は西側諸国を国から国へと訪問し、「兵器供与」「資金提供」を訴えるが…10月、ベルギーを訪れた際に演説するゼレンスキー氏。】



◆「西側諸国に失望」「疲れ切った」ゼレンスキー大統領


世界の関心がハマスへの「反撃」としてパレスチナ、ガザ暫定自治区へのイスラエル軍による本格攻勢とそれに伴う多大な民間の犠牲に向かう中、ウクライナのゼレンスキー大統領が焦燥感を強めているようだ。既に開始から5カ月を経過したウクライナ軍による「本格攻勢」も、ほとんど進展ないまま損失を重ねていることが明らかになり、「西側からのさらなる支援、強力な兵器の供与が進まない限り成功は難しい」とゼレンスキー政権側、軍幹部が申し立てることに支援してきた国もうんざりな状況となっている。


米誌インタビューでゼレンスキー氏が示した焦燥感について、米メディアCNNが伝えている。



<誰も我々の勝利を信じていない…>


「米週刊誌『タイム』は(11月)4日までに、ウクライナのゼレンスキー大統領と会見し、同大統領は支援国のウクライナに対する信頼をつなぎとめる絶え間ない努力を注いでいるため、疲れ切っているなどと報じた。…ゼレンスキー氏は『誰も私のようには我々の勝利を信じていない。誰もがだ』とし、『支援国にその信念をしみこませるためには私の全てのエネルギーが必要だ』と明かした」


「同誌は『大統領は疲れている。時には短気になる。支援国の援助がしぼむことを心配している』とも伝えた。ウクライナでの戦闘への『疲労感は波のように寄せている。米国や欧州でこれを見ることができる』と指摘したという。…ゼレンスキー大統領は勝利にこだわっており、休戦や交渉は支持しないとも述べたとした」




【画像② ドネツク州の前線を訪問し、軍部隊を激励するゼレンスキー氏。9月頃。】


<大統領は西側の支援国に裏切られたとも感じている>


「イスラム組織『ハマス』とイスラエル軍との交戦に関連し、『当然、ウクライナの問題への関心は中東での事態のため薄れている』とも(ゼレンスキー氏は)認めた。…タイム誌はゼレンスキー大統領の側近の話として、『大統領は西側の支援国に裏切られたとも感じている』とも伝えた。支援国は戦争の勝利に必要な手段を与えず、ただ事態を切り抜けるための手段を提供しているとの思いを抱いているとした」

「長射程の米戦術ミサイル「エイタクムス」の供与決定に時間がかかり、ウクライナ側が切望していたF16型戦闘機の到着が早くても来春になるなど速度感に欠ける支援のあり方は、ロシアを利するだけとの不満につながっている」

(参考)「ゼレンスキー氏、『疲れ切り西側に失望』会見の米誌報道」2023/11/4 CNN.co.jp/msn(日本語版)

https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E6%B0%8F%E3%80%81%E3%80%8C%E7%96%B2%E3%82%8C%E5%88%87%E3%82%8A%E8%A5%BF%E5%81%B4%E3%81%AB%E5%A4%B1%E6%9C%9B%E3%80%8D-%E4%BC%9A%E8%A6%8B%E3%81%AE%E7%B1%B3%E8%AA%8C%E5%A0%B1%E9%81%93/ar-AA1jmMhY



◆軍首脳との亀裂も~ウクライナ大統領府がザルジニー軍司令官の”悲観論”を非難


米英メディアなどがウクライナの戦いでのゼレンスキー政権側の決定的不利が明らかになっていることについて率直に語る状況の中、日本メディア、テレビは言うに及ばず特に朝日新聞や読売新聞は連日、「ウクライナ軍の反撃の成功」「ロシア軍の敗退、苦戦」を伝えてきたが、11月に入って突然、ガラッと変わりつつある。下は読売記事だが、とうとうウクライナ軍の「本格反攻」が頓挫しつつあることを書かざるを得なくなったようだ。




【画像③ ロシア軍は占領した4州では強力な防御陣地を構えてウクライナ軍の反撃を停止させながら、ドネツク州北部のアウディウカ周辺では反撃作戦を実施、ウクライナ軍は守勢に追い込まれている。】



<露軍がウクライナ領の約17%を占領している状況は5か月前からほぼ変化がない>

「ウクライナ軍の反攻は、ロシアが一方的に併合した南部クリミアと露本土の間にある拠点都市を奪還し、クリミアを孤立させる狙いだったが、年内の実現は不可能な情勢だ。露軍がウクライナ領の約17%を占領している状況は5か月前からほぼ変化がない」

「ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は、英誌エコノミストとの最近のインタビューで、戦況が『膠着状態にある』と述べた。総司令官が率直に苦境を認めたのは、米欧から迅速に高性能兵器の支援を受けなければ戦局を打開できないとの危機感があるためとみられる」

(参考)「ロシア軍の防衛線・人海戦術に苦戦、拠点都市の奪還進まず…ウクライナの反転攻勢5か月」2023/11/3 読売新聞https://www.yomiuri.co.jp/world/20231103-OYT1T50162/?ref=msn

人手不足のロシア軍が「人海戦術」とは、なんとも驚くような見出しを立てる読売新聞であるが、ウクライナ軍の「勝利の進軍」は文字上、消え失せてしまっている。

さて、こうした”悲観論”をばらまくザルジニー司令官に対して、ウクライナ大統領府は非難の声を上げた。内輪もめだ。ロシアのリア・ノーボスチ通信が以下のように伝える。




【画像④ ウクライナ軍総司令官ワレリー・ザルジニー将軍。】



<ザルジニー司令官はパニックを巻き起こした>


「【モスクワ、11月4日、リア・ノーボスチ通信】 ウクライナ大統領府のイーゴリ・ジョフクワ副長官は全国放送された番組で、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニ総司令官は前線での状況について西側メディアに話すべきではなかったと指摘した。…『私が軍人であれば、前線で起こっていること、前線で起こるだろうことなどをマスメディアに向けて、公開の場で話すようなことはしないだろう』と述べ、ザルジニ総司令官を批判した」


「また副長官は、ウクライナを支援する西側諸国において、ザルジニ総司令官の発言はパニックを巻き起こしたとも指摘。…『政府高官の一人からは電話も受け、彼らは「私のボスにどのように報告すればいいのか?あなたたちは本当に行き詰っているのか?」とパニックの様子で訊かれた。今回の報道がそのような効果を及ぼすことに意味があるのだろうか?』と副長官は不満を述べている」



<ウクライナ軍はすでにクリミアで戦っているはずだったのに…>

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