「アメリカが知らなかったはずはない」~ハマス奇襲後の激戦、すでに双方1万人近くが死傷、日本はハマスを非難も「イスラエル支持」を表明せず
◆10月11日現在で双方1万人近く死傷、ハマスによる市民拉致は約130人~日本政府分析
外務省が与党国会議員らにハマスによるイスラエル攻撃で始まった紛争の状況を、収集・分析した情報に基づき報告した。そこで示されたデータは次の通りだ。
<事件の概要>
現地時間10月7日(イスラエル祝祭日)早朝、パレスチナ武装勢力(ハマス及びイスラム聖戦(PIJ))がガザ地区からイスラエルに数千発のロケット弾を発射。1500名規模の戦闘員がイスラエル側検問・境界を破って、イスラエル軍(IDF)兵士を殺害・誘拐した他、音楽フェスティバルや住居への侵入で市民を殺害・誘拐。
ハマスは今般の攻撃を「イスラエルによるアルアクサー・モスクへの冒涜に対する報復のため」と表明。同モスクは、「アルアクサー・コンパウンド」(「神殿の丘」又は「テンプル・マウント」と呼ばれ、あるいはイスラム側からは「ハラム・シャリーフ」と呼ばれる場所にある。エルサレム旧市街にあるユダヤ教、イスラム教双方の聖地。
ハマスはレバノン、イラク、シリア、イエメンのイスラム武装勢力に対して対イスラエル共闘を呼びかけ、これに応えてレバノンからヒズボラ―が国境付近のイスラエル軍拠点を砲撃した上、イスラエル領内に侵入。
イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態」を宣言し、予備役36万人を招集。イスラエル空軍はガザ地区を空爆、地上からもハマス、ヒズボラ―に対して反撃。
<10月7日のハマス奇襲以後、今日までの損失、被害>
・イスラエル側…1200名以上死亡、約2700名が負傷。テルアビブでもロケット弾により建物損傷。
・パレスチナ側…849名死亡、約4360名が負傷。約18万7000人が避難(人口の1割弱)。空爆で家屋、病院等に被害。
・ハマス側による誘拐と外国人被害…約130人の市民が誘拐されたと見られ、うち外国人でタイ11名、米国数名、独数名、メキシコ2名が含まれていると見られる。また、英国4名、仏14名、伊10名、露4名、ブラジル3名が行方不明。外国人の殺害は、米国14名、英国6名、仏数十名、タイ18名、ネパール10名、カンボジア1名、ウクライナ2名。
<今回の事態への日本及び主要国の態度>
・日本…7日/攻撃を非難する外務報道官談話 8日/外務大臣談話及び総理ツィート 9日/ヨルダン外相と外相電話会談で連携確認 9日早朝(NY時間8日午後)/緊急開催の国連安保理非公開会合(非公式協議)に石兼国連大使が出席し、他の同志国と連携し、ハマスによるイスラエルに対する攻撃が多数の死傷者を発生させたことを指摘し、日本としてハマスの行動を最も強い言葉で非難。 10日/UAE外相と外相電話会談で連携確認。
・イスラエルへの支持、連帯を表明した国々…米国、英国、仏、独、伊、加 9日、米英仏独伊首脳は共同声明を出し、イスラエル支持、ハマス非難、今後数日でイスラエルの自衛を確保するための団結を強調。
・双方に即時停戦を求める国々…ロシア、サウジアラビア、UAE
・ハマスに自制を求めつつ、原因に関するイスラエルの責任ある対応を求める国々…エジプト、ヨルダン、カタール
・その他…イラン=10日/ハネメイ師がテレビ演説「パレスチナ武装勢力によるイスラエル攻撃に関与していない」としつつ、「イスラエルは回復不能な軍事的・諜報的被害を被った」とパレスチナ側を称賛。
…以上を見る限り、日本は昨年のウクライナ戦争開始の際とは異なり、一方の側を支持・支援する態度を示すことにかなり慎重になっている。「憲法上の制約」を盾にした対応かもしれないが(ウクライナへの積極支援でそれも通用しないものになってしまっている)、基本的にイスラム諸国の反発によって自国への主要なエネルギー資源の輸入先を失うことを最大限、恐れてのことであろうことは容易に推測できる。
◆「アメリカが知らなかったはずはない」~ハマス攻撃について、ロシア外務省報道官ザハロワ氏が談話
今回のハマス奇襲について、西側諸国では「世界でも最高水準の実力を誇るイスラエル諜報機関モサドや米CIAが予測出来なかった」ことにショックを受けていると言われている。しかし、ロシアはこれに当然、疑念を持っているようだ。ロシア外務省のザハロワ報道官が「アメリカが攻撃を知らなかったはずはない」と出演したテレビ番組で述べている。イズベスチャ紙の12日付で報道されている。
<アメリカの諜報能力で作戦を知らなかったはずはない~ザハロワ報道官>
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