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李克強前首相死亡8時間以内に中国全土で「第一級警備指令」~民衆の”追悼活動”から反政府デモへの広がりに警戒



【画像① 胡錦涛体制後、習近平体制下でも首相として残った胡錦涛前主席腹心の李克強氏(左)だったが、習近平最高指導者3期目を決めた第20回中国共産党大会で政治局委員も解任された。そして、この10月下旬、療養中に68歳の若さで死去したことで、中国共産党トップたちが揺らいだ。】


◆習近平氏ら中国共産党トップ「チャイナ7」が李前首相死去直前に上海の病院に駆けつけ協議


3期目(1期5年)の長期最高指導者任期に入っている習近平党総書記・国家主席に対する残り少ない”対抗勢力”代表格と見なされていた李克強前首相が心臓発作で死亡が確認されたのは、10月27日午前0時10分とされている。これが正式に中国共産党当局によって確認されたのは、同日午前8時だ。


そうした経過の中で、李氏が死亡確認されてからの8時間の間に、人民解放軍及び人民武装警察に対して、中国共産党中央から「第一級警備指令」が出されていたことが分かった。中国外交筋情報であるが、この措置は李氏が10月26日午前に担ぎ込まれた上海市の上海中医薬大学附属病院(曙光医院)に集まった中国共産党中央政治局常務委員7人(習近平、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希、いわゆる”チャイナ7”と呼ばれる指導部トップ集団)が李氏の死亡確認前に協議し決定した措置であるという。





【画像② 習近平氏を中心にした現在の「チャイナ7」の面々。「合同歴史(党史)学習」でおそろいのジャンパー姿で「習近平氏との一体性」をアピールする彼らの中に、習氏の対抗馬は1人もいない。】

李氏は死去数日前から上海のホテルに滞在しており、毎午前中はプールで水泳をしていた。10月26日も朝食後に日課の水泳をしていたが、しばらくして李氏の身辺警護員がプールで動かなくなっている李氏を発見して救出。すぐに「曙光医院」に搬送され救急救命措置が施されたが、心臓に持病を持つとされる李氏は病院到着時、既に仮死状態だったという。


李氏は先の第20回中国共産党全国代表大会(党大会、2022年10月)で政治局委員から解任され、ことし10月はホテルに滞在して療養中だった。李氏が病院搬送される際、同氏の秘書は直ちに党中央弁公庁トップで習近平側近の蔡奇政治局常務委員に連絡をとり、習近平氏ら政治局常務委員7人全員が軍用機で上海に飛び、「曙光医院」に駆けつけたという。


10月26日夕刻に到着した7人及び関係者グループ(秘書官や中央軍事委員会幹部も同行)は、ただちに状況を協議。李氏死亡が確認されると、同氏の生前の業績を称える追悼文の作成(翌日以降、党機関紙「人民日報」ほか各メディアで発表)指示や、葬儀日程まで協議。あわせて、過去、人望ある党・政府幹部が死去した際、追悼のために集まった市民、学生などが反政府デモを発生させた事例に鑑み、首都北京や李氏の関係先(郷里の安徽省合肥市など)で緊急警備の発令(「第一級警備指令」)を決定した。


驚くべきことに、李氏死去が発表された10月27日午前8時には、北京の天安門前広場などは人民武装警察が増員配備を実施し、厳重警備下に置かれていた。




【画像③ 中国共産党機関紙「人民日報」や各地方の主要紙、機関の広報紙には10月28日付で「李克強同志」の死去に関する党・政府・議会(全国政治協商会議)の公報が掲載された。内容は、李氏の死亡確認がされた病院に駆けつけた「チャイナ7」が協議決定したものだ。】



◆予防拘禁や厳重なネット規制も実施、デモ抑止措置で交通規制も


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