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「生活言語能力」と「学習言語能力」

パックンは、自分の子どもを小学校高学年からインターに行かせているらしい。

私の趣味はメディアモニタリングで、色々な新聞・雑誌・WEBニュースを暇さえあれば見ている。聞こえは良いが、要はダラダラスマホをしているだけである。そんな中、asahi.comで立て続けにポンと膝を打つ2つの記事に出会った。

一つは、パックンマックン(もう解散しているのかな?)のパックンのインタビュー記事「パックンが我が子をインターに通わせるわけ 『正直、偽善者と思う』」。有料記事なので、ネタバレさせちゃいけないのかもしれないけれど、かいつまんで言っちゃう。

パックンはあまり裕福でない家庭に育ち、自身はアルバイトをしてハーバード大学に進学した。その経験もあって、家庭の経済力で教育の機会に差がついてしまう現実を問題視していて、自身のできることとして寄付などもしている。一方で自分の子どもは小学校高学年からインターに行かせており、自分を偽善者だと思うと言う。インターに行かせている理由としては、いわゆる大学のようなアカデミックな場所で勉強できるほどの英語力を、インターに行かせずに日本で習得するのは至難の業であるということだった。(一部意訳有)


言語能力には、生活言語能力(BICS)と学習言語能力(CALP)があるらしい。

言語学を専攻した方からすると至極当然すぎる話のようなのだが、スマホダラダラの不勉強なインターの母は、お恥ずかしながらもう一つのこの記事を読んで初めてこの概念に出会った。これ、これなのよ、私がずっと心に抱いてきて言語化できなかったやつ!

要は、駐在員の子どもや留学、移民などで他の国に住んだ時、スーパーで買い物する、道を尋ねるといったサバイバルに必要な言語能力は比較的短時間で、簡単にとは言わないまでも、ある程度の努力で身につくものだと。一方で、学校での勉強、例えば理科や社会などの科目を英語を教授言語として勉強するには「学習言語能力」が育たないとダメだと。

だからパックンも私も、KIds Duoじゃなくてインターに子どもを入れたのよ。

私もおチビをインターに入れる際、外野から様々なヤジ(と言っては失礼よね、ご意見)を受けた。

  • 「最近はオンライン英会話とかもあるしさ、そんな高いお金払わなくても英語力つくんじゃない?」

  • 「家庭教師を雇った方が効率的なんじゃない?」

  • 「日本の公立に通って、アフタースクールだけインター的なところに入れたらどう?」

皆様、おっしゃる通りでおっしゃる通りでないのだ。
これらは皆、インターの母家のような一般的日本人サラリーマン家庭の経済状況を心配してかけてくれた言葉なので、至極真っ当、本当に有難いお言葉なのだ。

だが、私はおチビに、ハワイ旅行の時に"Going up?"とエレベーターで聞けたり、"Still, not sparkling"と水をオーダーできるレベルの英語力で良いとなんて全然思っていないのだ。

Gabaに通っていたクライアント様のニーズも、はっきり「生活言語能力(BICS)」か「学習言語能力(CALP)」獲得に二分していた。

当たり前なのだけれど、私が大学時代にアルバイトで大変可愛がってもらったGabaに通っている方々のニーズもはっきりこの2つで明確に違って、会社でプレゼンをしなければいけない、グローバルを説得しなければならないという会社員の方々は当然後者の能力を身に着けるべく、それはそれは並々ならぬお金と時間を費やして努力されていた。

これは私もわかる。
私もある程度の年になり、先陣を切ってAPACのリードに日本の状況を理解してもらわなければいけない場面に何度も出くわした。これは、"Going up?"レベルの「生活言語能力」では全く太刀打ちできないのだ。短絡的だけれど、英語で勉強しなければ「学習言語能力」は身につかないのだ。

だからGabaでも、「今度ハワイ旅行に行くのですけれど、もうちょっと英語が話せるようになったらいいな~って思っているんです」というマダムは完全に「生活言語能力」獲得主眼の初歩レベルのテキストが渡され、外国人を説得しなければ自身のプロジェクトが前進しないという切羽詰まった状況の会社員は、必死で「学習言語能力」を身に着けようと、毎日レッスンに通い詰めるわけだ。

「学習言語能力」まで深い能力がついて欲しいと願うから、インターに入れているのだ。

私個人の肌感覚では、「生活言語能力」は言いたいことを英訳すれば通じるレベル、「学習言語能力」はどっぷり英語で各教科を勉強しないと身につかないと感じている。もちろん個人差や努力の差はあれど、海外の語学学校に通うのと、大学に通うのとで、その後の会社や社会での待遇が異なることからも明らかなのである。もっとかみ砕いて、批判を恐れずに言えば、ワーキングホリデーと海外大学での学位の価値には雲泥の差があると思うのだ。(もちろん、ワーホリに意味がないなんて思わないし、この制度で素晴らしい経験をした方々を否定するつもりは全くありません。純粋に、「学習言語能力」まで達したか、という点においてのみです。)

で、おチビの英語力はどうなのよ?

読んで下さっている方々の中には、「そんな説教垂れてる前に、お宅のおチビはどうなのよ?」という疑問が湧いている方もおられよう。(←偉そう)

それが、結構いい感じだと思います。
もちろん「もう完全に『学習言語能力』身についてまっせ~」なんて言えないと思うけれど(低学年だしね)、今は自分の力で、英語と日本語を行き来して言葉を紡ぎだそうとしているとは先生の談。

またクラスの仲の良いお友達が日本語ゼロということもあり、英語で話さないと通じない(これまたその子は英語も通じないんだけど)ということで、とにかく話したいものだからどんどん英語を口に出している。間違ってることも多いけど。でもこうした環境が大変有難いし、だいぶ疲労も減っている様子。

最初インターに入れたばかりの時は、帰宅すると「疲れた~」と開口一番にいう事が多くて、それまではそんなことほとんどなかったからビックリしたけれど、やはり脳は謎の言語の世界に行って帰ってきて疲れていたのだと思う。けれど最近は、Tonyのようにとにかく元気で安心です

インターに入れるというのは「学習言語能力」獲得のためである。言い換えれば、「生活言語能力」レベルで良いのであれば、入れる必要ナシ!

結論、こういうことである。
もしこれを読んで下さっている方で、いわゆる日常会話力の英語が身に付けば良いとお考えの方だったら、インターにわざわざ高いお金を払って行かせる必要はないと思います。でももし、その一段先、「学習言語能力」を日本にいて身に付けるためには、私には今のところ、インターに行かせるという選択肢しか思いつかないのです。

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