見出し画像

【互いが土俵に立った中で】セリエA20-21 第1節 ベネヴェント−インテル マッチレビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回は延期されていたセリエA第1節ベネヴェント−インテルのマッチレビューです。

インテルはこの後、ラツィオ、ミランとビッグマッチが続くのでここは確実に刈り場にしたいところ…!

●スタメン

画像1

●前半−ハキミのメリット

ファーストプレーでいきなりゴールが生まれます。

キックオフ直後、ベネヴェントのアグレッシブなプレスに後退するインテルですが差し込まれた先の左CBコラロフがロングサイドチェンジ。

これがピタリと右WBのハキミへ通るとサンチェスのワンツーで崩しルカクのゴールをお膳立てします。

早々に失点してしまいましたがベネヴェントは姿勢を崩しません。積極果敢なハイプレスでインテルのビルドアップを妨害します。噛み合わせは以下の通り。

画像2

フォーメーション的に噛み合うので最終ラインと中盤は必然的にマンツーマンになります。

これをインテルがどう掻い潜ろうとしたかというと配置的に対応しづらいWBを降ろして逃げ道にする、でした。

特に使われたのが右WBのハキミ。

画像3

個の能力や性能は僕が語るまでもありませんが、それとは別に今日は彼を起用するメリットが全面に出ていました。

画像4

自慢の快速を活かすことでビルドアップの逃げ口に降りてきてくれても、すぐさま前線に復帰できるのでハイプレスのベネヴェント相手にはとにかく刺さります。

ビルドアップ時にも崩しの段階でも数的な厚みが生まれるんですよね。これが本当に大きい!!

FTのスコアがスコアなので評価しづらくなってしまいましたが、僕はベネヴェントのプレッシングはかなり良かったと考えています。
ハキミという逃げ道がなかったらこんなに差は生まれなかっただろうな、と思うほどに。

Twitterで僕が(一方的に)お世話になっている方が「速いは正義」と表現していましたが琴線に触れました笑 本当にそうですね!

という訳でハイプレスにいつもの手応えを感じなかったからか?インザーギ監督は15分頃から前プレ隊を前線のみに変更。
中盤以下はミドルブロックの形で変化を出します。

体力面の問題もありますし、なるほどねと頷けるものでしたがこの時間、インテルはリズムを持ってボールを握れていました。結果、悪手だったかもですね。
25分にガリアルディーニ、28分にルカクがゴールを奪い3-0とリードを広げます。

●前半−インテルの土俵

ここで3点目をピックアップさせて下さい。

モンティポ(GK)からのリスタート。
インテルは高い位置から圧をかけるとモンティポのミスキックを誘発。これをガリアルディーニが拾いルカクへと繋げてゴールが生まれました。

プレビューでモンティポの足元を指摘していたのでオンタイムでは1人でドヤ顔をしていたのですが笑、このゴールはコンテ監督の目論見による副産物であると考察しています。

ポイントはセンシとサンチェス。
今日のセンシはとにかくアウトレーンやハーフスペースに流れる動きが多かったです。
ボールタッチエリアを見れば一目瞭然。

画像5

センシのボールタッチエリア。広範囲でボールに触れていることが分かります。WhoScoredより引用。

当然、理由がありますがこれが非常に多角的であったと考えています。

・ボール保持
バイタル付近までボールを運べば、ベネヴェントのSBはインテルのWBのケアを強めざるを得ず、どうしてもSB−CB間のスペースが開きがちになったり、逆サイドのWBを捨てざるを得ません。

今日はここにセンシが飛び込んでくることが多く、このスペースを有効活用しようと試みてました。25分の崩しを紹介させて下さい。

画像6

✔︎センシが右寄りに移動してハキミからボールを引き出し、チャンネルにスルーパス。
✔︎サンチェスはトップ下に移動しバランスを整える(クロス→PA内侵入+被カウンター対策)
✔︎この後、ハキミはファーのヤングにクロスが送るが惜しくもミートせず。

センシ、プレー自体は低調でしたが(ボールと自身、両方を動かすムービングフットボールタイプなので劣悪な芝とは相性がとことん悪いのかも)、戦術的な動き自体は期待に応えられていたと思います。

また、秀逸だったのがサンチェス。センシが上記のムーブを行った際はポジションを的確にアジャストし、主にトップ下に入ることでバランスを取っていました。
しかもその位置で出すパスの質が極上!

そう考えると今日はセンシとサンチェスのWトップ下という表現が的確で、僕が提言してる3-4-2-1に近いイメージだったのかもしれません。

面白いのはこれがしっかりとデータにも現れている点。

画像7

各選手のポジションをアベレージ化した図。センシとサンチェスは思いっきり被ってますね。笑 Sofa Scoredより引用。

・ボール非保持(ネガティブトランジション)
ボール保持の機能はボール非保持にも影響しました。

ベネヴェントのボール保持は最終ラインでボールを回し、相手の守備を揺さぶってからサイドを一気に縦に突破するスタイルです(2節までを見た限りでは)。

しかし上述の通り、今日は最終ラインのバランスを崩されているのでボールを奪ってもスムーズに切り替え出来ません。
インテルの即時奪回もハマっていたとは言えませんがプレー制限は出来ていました。

サンプドリア戦をご覧になられた方なら分かると思いますが、今日のベネヴェントの最終ラインのボール回しはサンプドリア戦のそれと比べると質のギャップが明確です。

それでもプレスが剥がされる時もありましたが、ここで防波堤となったのはビダルとガリアルディーニです。

例えば21分、ボールロストからセンシのプレスが剥がされて被カウンターになったシーンでは…

画像8

✔︎ビダルはカプラーリを超えてインシーニェを囲もうとするが…
✔︎コラロフの予防的マーキングが良かったので、カプラーリに戻すことを予測すると急いで方向転換。
✔︎カプラーリに対しハードなマーキングでボール奪取成功。
✔︎ガリアルディーニはプレスバックしつつヨニツァのパスコースを監視。

インテリスタの方々も絶賛だったこの2人は、知性を持って獰猛に食らい付くタイプ(ビダル)も運動量を持って適正な位置取りで守れるタイプ(ガリアルディーニ)と補完性も完璧です。
今日は非常に機能していました。

まとめると

1.前線のボール保持によって、ベネヴェントのポジティブトランジション→ボール保持の質が保てなかった。
2.なんとか突破してもビダル&ガリアルディーニがフィルター役として機能した。

結果としてプレッシャーにさらされ続けたモンティポにミスが起きてしまったのかな、と。

コンテ監督の策略がインテルを自分たちの土俵に上げることに成功させ、そして副産物を得られた。そう感じました。

3失点直後、インザーギ監督はハイプレスを再び発動。これがガリアルディーニとハンダノヴィッチを誘発しゴールを許すものの、ハキミのセリエA初ゴールで取り返し3点差をキープしたまま後半に移ります。

●後半−ベネヴェントの土俵

後半、インザーギ監督は頭から手を打ってきました。
選手を2枚替え。
内1枚はアタッカーのR・インシーニェをCBのトゥーイアに替える一見すると、スコアで劣っているのに何故?と思ってしまうような交代策です。

しかしその狙いは守備ではなくむしろ攻撃面でした。

これによりフォーメーションが保持時が3-5-2、非保持時が5-3-2へ。ポイントになるのは両WBです。

画像9

✔︎レティツィアは高い攻撃性能が感じられる選手でガツガツ上がりヤングやコラロフの背後を狙う。
✔︎フーロンは気の利いたサポートが魅力。レティツィアが上がった際にバランスを取る役。走力もあるのでハキミ対策にも。

アプローチも明確に変わりました。


非保持時、ハイプレスは好条件のみ。基本は5-3のブロックを敷く組織的守備です。

ボールを奪ったらとにかく前に当てて、そこから走力に任せて二次攻撃を狙うカウンターをメインウェポンとします。

インザーギ監督の狙いはズバリ、フィオレンティーナの再現でしょう。
特に狙われたのはスプリントとその持続力に劣る左サイド。強く顕在化した課題を中4日でクリアにできる訳もなく、いつのまにかインテルはベネヴェントの土俵に立たされていました。

●後半−プランBは今季も難しい

見かねたコンテ監督は65分に動きます。ルカク、センシ、ヤングOUT、ラウタロ、ブロゾヴィッチ、ペリシッチINの交代策。

ルカク、ヤングはラツィオ戦を見据えての色合いも強いでしょうが、ブロゾヴィッチは試合の流れを変えたい明確なメッセージでしょう。

この交代でインテルは昨季お馴染みの3-5-2へ。

画像10

プランBの発動です。
昨季はプランBがハマらないことが多く、「コンテ監督は試合途中のテコ入れが下手だ!」みたいな意見があったり、「そもそもプランBなんて存在しない!」みたいな印象もありました。

しかし、3-5-2は馴染みのシステム。これなら安心できるなと思ったインテリスタは少なくなかったと思いますが…個人的に評価はかなり厳しいです。

画像11

それを後押しするデータがこちら。システム変更してからの方が組織的なチャンスを許してます。understatより引用。

71分に挙げた5ゴール目はサンチェスの頑張りによる絶好の位置でのポジティブトランジションが要因でシステムチェンジの恩恵によるものというイメージはありません。

なにより3-5-2になってからも被カウンターの脆さを証明し続けてしまいました。
76分の失点はベネヴェントの十八番の形なので向こうを称賛した方が妥当と思いますが(ただコラロフは遅かった…)、他の被チャンスに関しては課題を引き摺ったままの印象が強いです。

試合はこのまま2-5でフィニッシュ。アウェイのインテルが連勝を飾りました。

・スコア
ベネヴェント2-5インテル
(1分.28分ルカク、25分ガリアルディーニ、34分カプラーリ、42分ハキミ、71分ラウタロ、76分カプラーリ)

●雑感

今回もレビューが長くなってしまったのでここは簡潔にまとめます。

インテリスタのリアル知人がリアタイで試合を観れなかったそうで、朝に

「試合は結果だけ知ってる!大筋だけ教えて!」

と尋ねられたので返答しました。

その後、仕事後に試合を観たそうですが、僕の返答にかなり共感頂いたので共有させて下さい。

ベネヴェント−インテル戦の大筋は

自分たちがそれぞれ土俵に立てて、結果、最大火力に優れたインテルが勝利した。

って感じです。

うーん。この後、ラツィオ→ミランとビッグマッチを控える中では消化不良が否めない勝ち点3になってしまいましたね。

しかし、ラツィオもラツィオでアタランタ戦を観た限りでは昨シーズン終盤からの課題を引きずっているように見えます。

中3日で各々の課題に対し、どうやったベターなアンサーを見つけるかが次節の鍵になりそうですね!

最後までご覧頂きありがとうございました🐯

FORZA INTER!!⚫️🔵

もしサポートを頂戴した場合はサッカーのインプットに使用し、アウトプットでお返しできるよう尽力いたします。