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【この土俵は黒青部屋だ】セリエA 23-24 第23節インテルvsユヴェントス レビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回は天王山ダービー!!!インテルvsユヴェンスのレビューです。


●スターティング

●前半-構図は同じでも

シーズン前半のイタリアダービーから「アグレッシブでフレキシブル」を取り戻す試合も多いユヴェントスですが、アウェイかつ決して黒星が許されないこの試合はガッツリ構える姿勢を前面に打ち出しました。

前からプレスは封印、よっぽど差し込める場面でないと発動しません。

インテルの最終ラインにはボールを許容し、心臓部を阻害してリズムに奪い、先細り前進させて、ハーフライン以下で絡め取るが基本スタンス。

✔︎アンカー番はユルドゥズ
✔︎ロカテッリはフォロータスクをベースに、チャルハノールもしっかり見る

スキーム自体は”あるある”ですが、特徴的だったのはユルドゥズ(イルディズ)がチャルハノールを監視する方法。

正面で捕まえるのではなく「横で見る」を徹底

したがって、ヴラホヴィッチとは縦関係ではなく、横(斜め)関係であり、ここがアッレグリ監督のミソだったと見ます。実際、非保持のユルドゥズは左寄り固定と言っていいレベルでした。

非保持の平均ポジション、セリエA公式より引用

セリエA解説者の細江さんをして”守備が良い”と称されるユルドゥズ。僕も同感で、良さを具体的に言えば、視野が広い。周囲のスキャニング力が高く、絶妙な立ち位置や距離の詰め方ができる点がストロングと見ています。

アッレグリ監督はその能力を活かして「心臓チャルハノール、そして第二の心臓バレッラの鼓動を阻害させる」が目的だったと睨んでいます。その為の左固定。

実際、ユルドゥズがチャルハノールとバレッラを左右それぞれで捕捉してるよ!というシーンは何度もありました。

この局面で仕込んでいるな!と感じたのはロカテッリで、ユルドゥズがチャルハノールの監視を弱める際はすかさず距離を詰めているんですよね。非常に細かいことではありますが、しかし、神は細部に宿る。

対するインテルは天王山に向けての特別メニューの用意はなく、ボールを許容される左右CBの攻め上がりを促し、その先でのポジショナルやリレーショナルの売り出しを”通常営業”としました。

先細りのためのディテールがあるとはいえ、あくまでユヴェントスは構えるが基本スタンス。

必然、ボールを持つインテルvs重心低めで迎え撃つユヴェントスという前回対戦時同様の構図になりますが、ホームチームが”らしさ”を発揮したか否かが今回の相違

前回対戦時は例えドローを計算に入れていたとしても、結果論は「相手をリスペクトし過ぎたゆえの勝点1」だと考えているので、勝点差を4に広める為の前向き姿勢は良きでした。

●前半-技術と個人戦術

特に印象的だったのは右サイド。

ⅰ)ブロックをユルドゥズ側(インテル右)に寄せる

ⅱ)チャルハノールが最終ラインに降りることで、ユルドゥズから解放+両CBを上げるので、被カウンターの担保にもなる

再三言うように、そもそも重心が低かったという枕詞が付きますが、ユルドゥズのマークを外す仕掛けも存在したインテル。

チャルハノールは前節フィオレンティーナ戦のおやすみが効いたのかキックの精度がいつも以上。

やり直しのパスから縦や斜めのパスをバッシバシ付ける、個の技術でチームを効果的に前進させていました。ディマルコへの低空長距離フィードはもはやゲームでしたね、ゲーム。

チャルハノール経由のレーンチェンジというB面の怖さがあるからこそ、ボールを集める右サイドでそのまま殴るA面の威力も生まれます。

個人名を挙げたいのは右CBパヴァ―ル

右CBとしてビルドアップの根本にもなりつつ、バレッラが落ちて→ダルミアンが内に入り→大外を担当するローテーションを披露。

と思ったら、先制点に繋がったようにハーフレーンの外→内でポケット強襲もしちゃう。

このシーンではパヴァ―ルの”あえて”狙ったボレースルー×テュラムの”あえて”OGを誘発する突進によるフレンチコンビネーションに目を奪われてしまいますが、パヴァールが左WBディマルコと入れ替わるようムーブ。そして、その下支えとなったツートップの引っ張り(ニアに空間を生む)にも言及せざるを得ません。

これよ、これ。このジャムセッションが前回は足りなかった。

先制点から少し時間を巻き戻して、17分にはハーフレーンからえぐい追尾性能のクロスを送ったりと基本技術も◎。

状況把握し、判断を下し、技術を発揮する。パヴァールは出場すれば安定的にGOODパフォーマンスですが、今日はひとしおでしたね。それをダービーで魅せてくれるんですから、勝者の器ですよねぇ。

●後半-守でも魅せちゃう

ビハインドを追ったユヴェントス、HTを経てモードチェンジを決行。

「重心上げた」を前提に、

ⅰ)非保持、前からプレス解禁+設計も変更

ⅱ)保持時、右IHマッケニーと右WBカンビアーゾのポジションチェンジ

をGOしました。

両者とも分かりやすい変化で図解向きなんですがスルーします。理由は「ソリューションになっていたか?」と問われると首を縦に振りづらいから。

手段はどうあれ、ユヴェントスが重心を上げるのはインテル側も至極当然分かっていること。これまた至極当然、無理せずカウンターで追加点モードに突入。大局をコントロールします。

結果的にネットを揺らさなかったり、そもそもシュートに持っていけなかったりもありましたが、噛み合えば大差もあり得た殺傷力のあるカウンターにアッレグリ監督は”これ以上”に動けず。

ⅰ)非保持、前からプレス解禁+設計も変更
>後半冒頭以降はトーンダウン(設計は生きているが、発動頻度が低下)

ⅱ)保持時、右IHマッケニーと右WBカンビアーゾのポジションチェンジ
>二人称で終わっていた。入れ替わった後に配置を崩すようなリスクを負えなかった

あえてユヴェントス視点になりますが、テコ入れはソリューションになっていたと言い切れませんが、とはいえ、更なる被弾=ゲームオーバーになるという”はかり”を天秤に乗せた時に、コンディションが整わないピーキー性能のキエーザの投入を迷ったり、重心を上げたとてバランスは崩せないのも分かるんです。

選択は結果論で叩かれているだけであり(叩いていない人もいるけど)、仮に議論を読んでいるキエーザ、ユルドゥズ、ヴラホヴィッチによる魅惑の3トップにした結果点差が広がってしまったら、更に大きな火種になっていたとも思っちゃう。

魅惑の3トップにするなら変形の4-3-3とか面白そうだけど…リスクは大きいですよねぇ

実際、前からプレスなんかはトーンダウンしたからこそ、インテルを引き出してオープンな時間帯を作ることに紐付きました。

しかし、このフェーズでもパヴァールが輝きます。もちろん前半も良い守備対応でしたが、後半はよりいぶし銀というか。

前に出て潰す。遅らせて囲む。判断力と体現力を高次元で両立させ、キエーザやポジションを左に移したカンビアーゾを封殺。82:20〜のインターセプトは芸術でしたね、芸術。

●雑感-ダービーを終えて

最終スコアは1-0でインテルに軍配、ガッティのオウンゴールが決勝点となりました。

結果のみを切り取れば”辛くも感”がありますが、内容はホームチームの完勝と言い切っていいでしょう。賛否あるトピックスですが、私的にはスカッドに大差があるとは思っていませんが、チームの機能性に大きな開きがあり、そこが顕著に出た試合だったかなと振り返っています。

ここであえてまた、ユヴェントス視点に。

勝ち点以上に重い敗戦となりましたが、愚見では選べる手段の中でベターを選べたのでは?と考えます。

以前、その保守的な姿勢をズバッと切ってしまいましたが、冒頭で触れたようにシーズン前半のダービーからは面白さを感じられるサッカーもしています。右カンビアーゾは絶対にインテル戦きっかけで固まったよ。

その上でユルドゥズという未来をリアリスティックに落とし込んだ本節は従来のフィロソフィーを感じるもので、保守的とは感じませんでした。あくまで個人的にね。

たしかにベターではなくベストがあったのも事実ですが、今日はもう結果論でしか語れない域かなと。

逆を言えばそれくらいインテルが盤石で、今なおニヤニヤが続いているんですが、本節、勝利という結果の次に良かったと思っているのは戦い方

前回のフラグを回収するが如く、絶対に負けられないダービーという一戦で、リスクマネジメントに傾倒することなく、自分達の土俵で戦ったインテルとシモーネには心からの拍手と感謝を送りたい。

繰り返しですがスコアこそウノゼロでしたが完勝でしたよ、間違いなく。あのユヴェントス相手に。

この覚悟と勇気と自信は続くスクデットレースと並立する欧州ロードに欠かせません。

この勝利の価値を薄めないよう、インテルさん本当に頼みます!このまま行こうぜ!

お前たち、ふざけて怪我しないようにな!

最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

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