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今こそ、HRのプロが求められている

激しい人材争奪戦が起きている今、採用の知見がない企業では、優秀な人材を確保できずに苦戦を強いられています。そんな中、企業の採用ニーズに合わせてRPO(採用業務代行)サービスなどを提供できるHRのプロが増えているといいます。

そこで今回、人事職のための相互支援コミュニティ「HRギルド」を主宰し、企業の採用ニーズやHRのプロフェッショナルの現状に精通している株式会社アースメディアCEOの松本 淳氏に、HRプロが求められる真の理由や今後の可能性、HRプロとして必要な素養などについて伺いました。

インタビュイープロフィール

アースメディア代表取締役CEO
松本 淳氏

1997年同志社大学法学部卒業後にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社、人材紹介事業の立ち上げメンバーとして事業企画を担当。2003年HRテックのジョブダイレクトを創業。2008年、上場準備を進める途上でリクルートによるM&A提案を受け事業を売却。その後は国内およびアジア諸国にて国際NGOなど非営利組織の支援に携わる一方、国内外の多くの起業家、経営者のメンターも務める。

現在は、LinkedInなどの各種ソーシャルメディアを基盤とする「ソーシャルリクルーティング」の可能性を追求し、再び人材業界に新しい価値をもたらすべく事業を推進中。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授、Voicyパーソナリティ、日経COMEMOキーオピニオンリーダー、人事職のための相互支援コミュニティ『HRギルド』主宰者。


CHROなどへの副業紹介や、HRサービスの提供を行う「HRギルド」

──まずお聞きしたいのは松本さんが提供しているサービスです。企業の採用支援や組織改革の他に、主宰されている「HRギルド」とは、具体的にはどういったコミュニティなのでしょうか。

HRギルドは、現役のプロフェッショナル人事が複業/副業によって高度な人事・採用の知識をベンチャー企業などへシェアするためのコミュニティです。現在、120名程がメンバーとして参加しており、上場企業/ベンチャー企業のCHROや人事部長を中心に、一部HRコンサルタントや人材サービス事業者で構成されています。このコミュニティ内では、主に2つのサービスを提供しています。

1つ目は、「複業のアレンジメント」です。所属メンバーの多くはCHROや人事部長として自社の複業制度を作る側の人たちですが、実は自分自身が複業を手掛けていない場合もあります。

当社には様々な会社の人事課題が多く集まるので、メンバーに対して良い条件の複業案件をアレンジすることができます。人事戦略全体に関するアドバイザリー業務など、上流部分を担当する案件が多いのが特徴です。

2つ目は、「HRソリューションの提供」です。メンバーは企業の人事部門責任者でもあるので、ギルドからは人事・組織課題に関するソリューションの提案も可能です。

このようにHRギルドでは、所属メンバーへ個人という立場に対しての複業機会の提案、そして法人いう立場に対してのソリューション提供という、両面からのサポートが可能な状態を構築しています。

多くの企業で、採用が重要な経営課題になっている

──CHROや人事部長の皆さんは、具体的にはどのような人事課題を抱えているのでしょうか。

優秀な人事責任者ほど経営に深く入り込んでいるので、経営に直結した課題が多いですね。企業として業績や価値を上げるためには、従業員一人ひとりのエンゲージメントを向上させ、パフォーマンスを最大化させる必要があります。そのための適正な評価制度や、企業カルチャーの醸成をどうすればよいのか、そういった相談をよく受けます。

もう1つは、採用難による人材不足の課題です。優秀な人材がなかなか採用できないために、計画通りに事業を進められなくなっています。つまり採用課題そのものが経営課題になっており、会社全体として採用の課題にもっとコミットせざるを得なくなってきているのです。

ベンチャー企業の多くは、「エージェント依存から脱却したい」と考えている

──松本さんは、ベンチャー企業とのつながりが多いと思いますが、やはりベンチャー企業でも採用難易度は高まっているのでしょうか。

世界的な雇用調整局面のために難易度の高い職種も少しは採れるようになった部分もありますが、トレンドとして圧倒的な人材不足なのは変わりません。たとえばITエンジニア職の場合、最初から正社員ポジションでは採用が難しいため、まずは複業や業務委託で募集する企業もあります。また、人事関連職などのコーポレート部門職種でも、業務委託の活用が着実に広がっていると感じます。

またメンバー層はある程度採用ができても、マネジメント層は思うように採用できないというケースもあります。外国人採用もそれほど進展していませんし、今後も国内における人材難の構造的な問題は続くと思われます。

──こういう状況では、転職エージェントに頼っている企業が多いのではないでしょうか。

いくつかある採用チャネルの中でも確実に採用できるのは転職エージェント経由という場合が多いので、やはりエージェントに頼っている企業は少なくありません。ベンチャー企業では基本的に採用業務を少人数で行っており、採用ノウハウもネットの情報などで自主的に学びながらということもあるため、エージェントを使うのは自分たちの時間を買うという目的もあるでしょう。

しかし一方で、最近では「エージェントの比率を減らしたい」という声もよく聞きます。それは、これからは自分たちで採用ノウハウをストックして、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、他の採用チャネルも強化したいと考えているからです。

それに伴い、RPO(採用代行業務)サービスなどを利用する企業も少しずつ増えています。しかしながらサービス内容やサービスレベルが様々で、業界自体が玉石混交状態であることが課題だといえるでしょう。

スカウトメールや受付の代行のみという会社もあれば、入社後の定着まで考えてサポートする会社もあり、サービスの範囲は多種多様です。また、自社が求めるレベルのサービスかどうかが事前に分からないのもRPO活用のハードルになる場合もあります。

その点HRギルドの場合は、依頼する企業側の事情もよく把握できておりますし、パートナーのRPO企業やリクルーターなどのHRプロの強みも詳細まで理解できているので、理想的な業務アレンジメントが可能です。

──松本さんがRPOサービスをアレンジする場合、どのようなニーズが多いですか。

社内に採用業務のリソースが少なく、かつ採用ノウハウもないような場合が多いですね。取り急ぎ適当な人を異動させて、採用業務に「人を充てる」という方法を採る企業もありますが、ノウハウのない中で採用業務を行ってもなかなか結果が出ません。

上記のような環境にある企業には、すぐに結果が出せるRPOに採用業務を委託し、「無駄な時間は削減し、本業にリソースを割いた方が良いでしょう」ということを提案するようにしています。

企業からのニーズはあるので、HRプロは起業家精神をもって、活動量を増やしていくこと

──企業による高い採用ニーズがあるのは理解できました。その一方、RPOのディレクターやリクルーターなどの担い手として、フリーランスや起業などで活躍されているHRのプロは今後も増えていくでしょうか。

間違いなく、増えていくでしょう。HRギルドのメンバーにも、人事部長やCHROというポジションを経て自分で会社を立ち上げ、人事コンサルティングやRPOサービスを展開されている人もいます。

ただし、元から十分な人脈などがあれば別ですが、それがないHRのプロは実績をつくるとともに、マーケティング力や営業力を強化することが必要です。大切なのは、SNSなどを活用して自分の能力や実績を開示し、積極的に情報を発信していくことです。また、InterRaceのようなプラットフォームを活かすのも一つのやり方だと思います。起業家精神を持って活動量を増やしていけば、結果は必ずついてきます。

今後の主流となるタレントアクイジションで、さらにHRプロが活躍する

──InterRaceでは、企業自らが能動的にタレント(優秀な人材)を獲得していく「タレントアクイジション」という考え方を推進していますが、ベンチャー企業でもそうした機運は広がっているでしょうか。

営業などの現場経験のある人事責任者がいる企業では、採用は人事部門だけの業務ではないという認識も広がり、人事と事業部が一体となって採用業務に取り組む企業も増えてきています。

RPOサービスを利用するものの、将来的には、HRプロが持つ知見やノウハウを学び、自社内で高度な採用業務を完遂できる体制を整えようと考えている企業も増えています。継続的に優秀な人材を獲得するためには、自社におけるタレントアクイジション体制が重要になると思います。

──優秀人材獲得のためにはタレントアクイジションの自前化が必要だと。そしてそのためにも、HRプロをうまく活用することがますます大事になるということですね。松本さん、今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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