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第85回:思い出し笑い「平成を駆け抜けた柳家喬太郎落語生活30周年記念」(&ツルコ)


第85回:平成を駆け抜けた柳家喬太郎落語生活30周年記念

*intoxicate vol.142(2019年10月発行)掲載

落語情報誌「東京かわら版」7月号の特集は「僕らと平成の30年、そしてこれから」ということで、平成元年に入門した落語協会の柳家喬太郎、入船亭扇辰、林家彦いちの3人による対談でした。特集の扉ページには、新宿・末廣亭の楽屋で火鉢を前に並んだ二ツ目時代の3人の若い写真と、同じ構図で撮影された現在の写真が並んでいます。どちらも落語を長く撮り続けてきた横井洋司撮影というステキな演出。いい記念写真ですね。火鉢は新しくなってますが、3人は歳を重ねての貫禄が出てます。平成の30年間は、落語家人生が始まり、切磋琢磨してきた時代だったんですね。3人とももう若手ではなく、立派な中堅どころなんだとしみじみ。令和時代は3人揃ってさらに円熟していく時代になるかと。「心技体」という落語会を長く続けている同期の3人ですが、今年は30周年ということで、それぞれの会に他の2人をゲストに迎えての独演会を行います。


 最初は、すでに8月に銀座の博品館劇場で2日間行われた独演会「林家彦いち 噺家になって30回目の夏なので、銀座で、祝ってもらいます。」の2日目に、喬太郎と扇辰がゲスト出演しました。お次が、「柳家喬太郎 落語家生活30周年記念落語会ザ・きょんスズ30」で、下北沢のザ・スズナリで11月1日から30日まで、1ヶ月(休演日あり)公演というすごい企画! 先輩から後輩、落語だけでなく講談や浪曲、曲独楽や紙切りの色物さんまで、日替わりでゲストが出演、千秋楽は師匠の柳家さん喬登場です。喬太郎の演目も出ていますので、選ぶ楽しみもありますが、これできることならすべて行きたーい! 扇辰&彦いちは21日に揃ってゲスト出演です。そしてラストが12月の扇辰独演会なのですが、こちらはこれから発表になるようですね。


 喬太郎は、最新CDが8月にリリースされました。「柳家喬太郎落語集 アナザーサイド」という他の人の作品を取り上げた創作落語シリーズの6作目。前作の4作目と5作目は小泉八雲の小説を喬太郎が落語にした作品でしたが、八雲落語、ぜひこれからも続けてほしいです。王道の落語研究会での高座を収録した全集も出ていますが、こちらの作品は別面の喬太郎な感じ。うまく言えないですが、まさにアナザーサイド。今作では江戸川乱歩の「二廃人」を取り上げています。記念すべき第1作の2席目が乱歩の「赤いへや」でしたね。「二廃人」は二人の男の会話で進行していく話で、収録されているのはネタおろしの初演高座。もう1席の「サソリのうた」は、舞台共演が縁で一緒に落語会も行うようになった劇団「猫のホテル」主宰の千葉雅子(「ザ・きょんスズ30」11/27にゲスト出演)作の、女子刑務所が舞台の落語です。出囃子も「怨み節」という凝りよう! この噺、仕草が見えないと音だけでは伝わりにくいところもあって、客席がすごくウケてるので、何してるか見たーい!フラストレーションが。ぜひライヴで観たい! 喬太郎演じる女性をこれでもかというくらい堪能できる1席です。


 落語協会顧問、柳家小三治の人間国宝になってからの初CDが、この6月から6ヶ月連続リリースされてます。朝日名人会シリーズで、1999年から2011年の平成時代の高座を収録。すべて2枚組です。1作目が「猫の皿」と「長短」なんですが、1枚に2席収まるんじゃ??と不思議に思いながら聴いてみて納得。CDにも本にもなっている有名な「マクラ」なんですねー。「猫の皿」も「長短」も20分に満たないんですけど、それぞれのマクラがたっぷりその倍以上! 訥々と語られる小三治マクラ、人間国宝の麗しい歌声を披露してたりもして、この話はどこに着地するんだろうと思いながら延々と続語りに引き込まれ、そこからすんなりと落語に入っていく心地よさったらありません。1枚に1席収録ですが、2席聴いたくらいの満足感あり、です。最後の2ヶ月のリリース作品は「ま・く・ら」なので、これがまた楽しみなんですよねー!


CD『柳家喬太郎落語集アナザーサイド』
「二廃人」「サソリのうた」
[ コロムビア COCJ-40929]

CD『朝日名人会ライヴシリーズ 柳家小三治Ⅰ』
「猫の皿」「長短」
[ 来福 MHCL-2807]2CD

CD『朝日名人会ライヴシリーズ 柳家小三治Ⅱ』
「青菜」「鰻の幇間」
[ 来福 MHCL-2809] 2CD

CD『朝日名人会ライヴシリーズ 柳家小三治Ⅲ』
「付き馬」「二番煎じ」
[ 来福 MHCL-2811]2CD

CD『朝日名人会ライヴシリーズ 柳家小三治Ⅳ』
「厩火事」「品川心中」
[ 来福 MHCL-2813]2CD

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