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第62回:思い出し笑い「ヅラじゃない、八雲だ!」(&ツルコ)


第62回:ヅラじゃない、八雲だ!

*intoxicate vol.117(2015年8月発行)掲載

 落語すきなのに、落語を題材にした映画とかドラマは気になって観ることはあっても、漫画となると古谷三敏の『寄席芸人伝』(古すぎ??)しか読んだことなかったんですよね、これまで。落語の世界を描いている漫画として、現在「ビッグコミック・オリジナル」(小学館)で『どうらく息子』、「ITAN」(講談社)で『昭和元禄落語心中』がそれぞれ連載中ですが、『昭和元禄落語心中』のアニメ化が決定し、石田彰さん(NON STYLEの白い方の人ではなく)が落語家役で出演というニュースに俄然興味が! 


 この『昭和元禄落語心中』は、主人公の強次(これ、志ん朝の本名ですね)が刑務所に服役中、慰問に来た落語家・有楽亭八雲の古典落語「死神」を聴いて一目惚れ、出所後まっすぐ寄席を訪ねて、八雲に弟子入りを志願。自分の芸は残さないから弟子はとらないと通してきた八雲だったのに、帰るところがないというこの青年を引き取ることにし、噺のなかではお馴染みのぽーっとしたキャラクターである「与太郎」と名付けるところからお話が始まります。落語は“古くさいもの”となってしまっている昭和50年代頃を舞台に与太郎が噺家として成長していく姿を描きながら、八雲と同じ日に入門したライバルであり親友でもあった助六との若かりし日を描いたさらに前の時代のお話にも遡ります。


 アニメでは、与太郎役は関智一さん、「昭和最後の大名人」である師匠の八雲を演じるのが石田さんで、この役は「これまで演じた中で歴代最高齢」なのだそうです。それにしても、「大名人」を演じて、落語までやらなければならないというのは声優さんにとっては相当プレッシャーですよね。与太郎だって、前座のうちはともかく、だんだんうまくなっていかなければならないわけですし。というわけで、興味津々で7月に発売されたコミック7巻の特典アニメDVDを観てみましたら、関智一さんの与太郎くん、なんと「出来心」という落語を一席フルで演じちゃってるじゃありませんか! 実は関さん、立川志ら乃師匠の客分のお弟子さんなんですよね。春風亭吉好さんというヲタク落語を得意とする噺家の「もえよせ!」という落語会にゲスト出演をした関さんがトークコーナーで話されていたのですが、声優をはじめた頃、増岡弘さん(マスオさんでお馴染み)に勉強のために落語を勧められて落研のような所に入ったけれど厳しくて挫折。後に、落語家と声優という声の仕事つながりの対談で出会った志ら乃さんに弟子入りすることになり、落語の稽古をつけてもらっているそうなんです。関さんによると、八雲役の石田さんも相当落語がお好きで、落語会などにも足を運ぶほどだそうですので、石田さんの落語も期待できますね! 石田さんは以前、「落語CDドラマ〜3つの愛〜」(元氣プロジェクト)という、古典落語の作品の登場人物それぞれを声優が演じるという試みの作品に出演して、「ねずみ」の左甚五郎、「幾代餅」の清蔵、「厩火事」のおさきの亭主などを演じていました。今回はコミック8巻(8/7発売)の特典DVDで、石田さん演じる大名人・八雲の落語、それも与太郎が初めて聴いて弟子入りを決意した「死神」が聴けるみたいなので楽しみです! 秋には関さんと石田さんの落語、CD化もされるみたいですよ。


 以前、TVドラマ「タイガー&ドラゴン」で岡田准一さんや長瀬智也さんが、映画「しゃべれどもしゃべれども」で国分太一さんが噺家になったことで、ジャニーズファンや若い人たちがかなり落語に興味をもってくれましたが、今年はアニメのほうで、新たな人たちから落語が注目されるようになるかも? ガンダム好きのかたなら、師匠がアスラン・ザラで、弟子がイザーク・ジュールっていうのでワクワク、しますか?

CD『昭和元禄落語心中音楽噺其の一』
v.a.
[ スターチャイルド KICA-3251]

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