ITじいさん
毎日元気に出社して、お馴染みのブラック企業ライフをゆるく送ってるわけなんですけど、最近、おじいちゃんが入ってきたんですよ。
おそらく定年退職後の、65歳くらいだと思います。部署は一緒なんですけど、絡みもあまりなく、なんかよくわからないおじいちゃんなんですよ。どこからきたかも分からないんで、わんちゃん迷い込んだ可能性もあるんですけど、パソコン支給されてるんで、おそらく採用はされているんだと思います。
そんなおじいちゃんが、この前おもむろに僕のところにやってきたんですよ。
「あのぉ。犬井さん。ちょっとよろしいですか?」
ほとんど地肌の髪の薄い頭をさすりながら、メガネのおじいちゃんが僕の横にきて言うわけです。
僕は「さっき、僕が怒鳴られながら、『他の仕事すんな!』と言われてるの聞いてなかったのか?」と思いながら、おじいちゃんに呼ばれるまま席に向かったんですね。
「あのぉ。この、PCなんですけどね。」
パソコンのことをPCって言うタイプのおじいちゃんっておるんや。おじいちゃんって、みんな「コンピュータ」っていうと思ってた。
「ネットには繋がるんですが、社内のサーバーにアクセスができない様子でして。」
みてみると、社内フォルダーにアクセスしようとして、エラーが表示されている。
「犬井さん。なんとかしてくれませんでしょうか。」
「まぁ...みてみましょか...」
そうして仕方なく、おじいちゃんのパソコンを見てみるんですが、これがまぁうまいこと行かないんですね。これまでも何度か、社内のパソコントラブルの対応してましたけど、本当ににっちもさっちも行かないんですね。
僕がそうして戦っている間、後ろでおじいちゃんはずーっとこっちを見てるんですね。
「どうですかー、犬井さんー?」
「なんか繋がらないですね...」
「でしょー!私もね、何度やってもダメでした!」
「はぁ...」
「そうですかそうですか!ダメですよね!」
「......」
やたらと嬉しそうなおじいさん。子育て世代パンチがここまで出かかったとき、おじいさんが言ったんです。
「こっちのサーバーからの接続のせいかなぁーとも思ったんです!」
「お!なるほど!」
おじいさんにしては、IT知識がすごい。
「じゃあこっちを切ったら...」
「でも、ダメだったんですねぇー!」
ITじいさんって、こんなに人にヘイトを貯めるんやな。
やべぇ、初めて年金ブッチしそう。
結局おじいちゃんは、自分の無知のせいではないとホクホク顔を決め込み続け、僕は終わらないトラブルに追われながら、並行して怒鳴られまちのトラブルが燃えていくのを感じるのでありました。
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