仲居君グラサン美容院
先日2カ月ぶりくらいに美容院に行ってきたんですよ。んで今回は、たまたま休みが取れたってんで平日に行ったんですね。しかも朝一の人が少ない時間。いざ美容院に到着すると、いつもの美容院のいつもと違う雰囲気に、少し緊張してくるくらいだったんですよ。
というのも私は、過去幾度となく美容院で失敗をしてきているんですね。男子歓迎の言葉につられて入ったら女性ばっかりで、「まじで来よったw」みたいな感じで半笑いで会話をされたり、あだ名で自己紹介するちょっとヤバめの美容師さんに当たったり、美容院ではまぁまぁ色んなことがあったんですよ。だからいつも行っている美容院とはいえ、いつものとは違う雰囲気というのは、恐怖でしかないんですね。
「いらっしゃいませ。犬井様ですか。」
受付をしてくれたのは、腕にバッチリタトゥの入った、令和では仲居くんしか使っていない薄青透明のサングラスをかけたお兄さん。若干ビビりながらも、タトゥー仲居グラサンについて、とぼとぼと席へついていくわけでございます。
「今回担当をさせていただく、田中です。よろしくお願いします。」
見た目にそぐわないとても丁寧なお兄さん。腕に入ったタトゥーの先の指を見ると、爪は紫のネイルがされていて、顔をあげると耳たぶにイカリングぐらいの穴が開いている。
「今日はどうしますか?」
サングラス越しに、僕の目をガッと見つめるお兄さん。
僕は言った。
「あぁ…あの…前に来たのが2ヶ月ほど前だったので、伸びてる長さで言うと2センチくらいなのかなぁと思ってるので、基本的にはその長さできっていってもらえたらとはおもってるんですけど、今日は朝だし休みだからわっくすとかじぇるとかつけてなくて、いや!休みだしって言うか美容院だからってのもあるんですけど!いつもなら、いつもならジェルでしっかり固めるようにしてるんですけど今日はつけてないんですけど、いつもならジェルで前髪あげてるので、全然長さとか前より短くても前髪をあげられればいいかなぁと思ってて、横とかはあんまりじょりじょりするのは怖いなぁとは思ってるんですけど、ちょっとバリカン入れてもらうのは全然良くて、後ろとかは、良い感じに長さ合わせてもらえたらいいのかなぁと思うのと、うえは、あっ上って言うかトップですか!トップの感じ!トップの感じはなんていうかフワって言うか、良い感じって言うかあの…その…」
緊張しすぎてカットの指示が早口キモオタ。
俺がタトゥー仲居君グラサンだったら、間違いなく根性焼きしてる。
そこからも「良ければどうぞ」と言って渡された雑誌を読む用のタブレットで、できるだけグラビアのおっぱいを見ないようにして、読みたくもないビジネス書を読んだり、シャンプーを受けている間も「湯加減大丈夫ですか?」に対して、元気に「はい!」と言って、顔に乗せられている紙を吹き飛ばして嫌な顔をされながらも、散髪は進んでいきました。
その後切られた髪への喜びをアピールしようと、「すごいい感じです!僕横がバリカンでじょりじょりになってるの嫌いなんでちょうどいいです!」と言った後、『タトゥー仲居くんグラサンのニット帽の下が、バリカンジョリジョリだった場合…?』と不安になり、うつむきながら店を出ることになるのでございました。
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