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光の絆

幾度目かの別れ。
もうこれっきりの思いを秘めて、
今日 わたしは 母に再三のさようならをする。

―なんとなく家族がうまくいってなかった、
なんとなく居心地が悪かった。
だから外の世界がまぶしくて、十数年前わたしは家を出た。

母とは、たまに旅行へ行ったり食事に行ったりする位の付き合いは維持していた。
謂わばそれらは、わたしなりの懺悔。
母を一人残した罪悪感への穴埋め的イベントだった。


あと五分もすれば、この飛行機は飛び立つ。
呼び出されても、すぐにはもう会えないそんな距離の街へ。
幾度となくしてきた小さな別れも、都度の罪悪感も、もうこれっきりなのだ。

日入り過ぎ、灰色の空に紫や桃色に棚引く雲が郷愁を誘う。
飛行機の窓から、空港の建物。
屋上の見送り場に、スマホのライトを点灯し大きな弧を描き大手を振るう母の姿を見つけた。

‐お母さんはここよ、いってらっしゃい‐

これっきりにならない罪悪感は、いつか素直な愛へ昇華できるだろうか。