平成の音楽を振り返る④  ~アイドルの概念を変えたSMAPと嵐~

 平成の時代も、昭和と同様にアイドル歌手が華々しい活躍を見せた。
 平成を代表する男性アイドルと言えば、ジャニーズ事務所のSMAPと嵐が二大巨頭だ。
 何と言っても、音楽業界においてジャニーズ事務所の影響力は、すさまじく、ジャニー喜多川、メリー喜多川が送り込むアイドルは、いつも音楽業界を席巻する。

 そして、SMAPと嵐には、昭和のアイドルと大きく異なることがある。それは、活動の幅が大きく広がり、人気が長期にわたって持続するようになったことだ。

 昭和のアイドルは、作ってもらった歌を歌って踊る偶像のような存在であった。
 あまり人間性は伝わってこず、数年で歌が売れなくなって姿を消してしまったり、解散という道を選ぶのが通例であった。
 それゆえ、テレビ番組にはゲスト扱いで出演し、ほぼ冠番組を持たなかったし、持ったとしても長く続かなかった。

 しかし、平成の時代に入って、SMAPが大きく変えた。
 SMAPが変えたアイドルのイメージは、革命と言ってもいいほどだ。

 自ら冠番組を持ち、歌や踊りだけでなく、司会もトークもコントも料理もドラマも地方ロケもやる。
 そんな広がった活動の幅の中で、それぞれの個性が際立ち、様々なドラマやバラエティー番組で活躍するようになった。
 アイドル1人1人の人間性までが露わになったことで、ファンとの距離が縮まり、幅広い年代の人々に受け入れられて、アイドル寿命が飛躍的に伸びたのだ。

 アイドル1人1人に根強いファンがつくことで、それが音楽活動にも大きく好影響をもたらした。
 どんな楽曲を出しても、それなりにヒットするようになったのだ。
 楽曲の力でなく、アイドルの人間力と個性を前面に打ち出した人気によってCDを売る時代が訪れたのだ。

 そして、ときに「夜空ノムコウ」「らいおんハート」「世界に一つだけの花」などといった名曲が発表されると、大ヒットにつながっていった。
 「夜空ノムコウ」は作詞スガシカオ、作曲川村結花、「らいおんハート」は作詞野島伸司、作曲小森田実、「世界に一つだけの花」は作詞作曲槇原敬之という、超一流が務めていることも特筆に値する。
 SMAPは、1991年のデビュー以降、最初は売り上げが伸び悩んだものの、音楽以外に活動の幅を広げることに成功して音楽が売れるようになり、国民的アイドルにまで登り詰めた。
 まさに時代を変えたアイドルである。

 一方、嵐の方は、SMAP以上に、平成らしいアイドルだ。SMAPが敷いた線路に乗って、あたかも当然のように多方面での活躍を見せた。
 楽曲売り上げの安定感は、SMAP以上で、発売したシングルは、基本的に週間1位を獲得する。これまでの活動期間の中で、嵐が週間シングルトップ3に入らなかった楽曲はない。

 SMAPがCDデビュー時から約2年半、週間1位を獲得できなかったのに対し、嵐は、デビュー当時から圧倒的多数のファンがついていた。
 デビューシングル「A・RA・SHI」が既に97万枚を売り上げている。
 しかし、それ以降の楽曲で、世間で大ヒットした、というタイプの楽曲はない。
 現時点で、嵐にミリオンセラーシングルは1曲もないのだ。
 それでも、常に出す曲が安定したヒットを続けているのは、まさにグループとしての人気が突出しているからである。

 昨日、嵐は、2020年限りでの活動休止を発表したが、デビューから活動休止まで、全くと言っていいほど浮き沈みなく売れ続けたアイドルとして、歴史に名が残り続けるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?