見出し画像

勝手にファンド評価 Vol.8「ロボアドバイザー ウェルスナビの分析(その3) 2022年7月末基準」

こんばんわ。
元ファンドマネージャーのJackです。
8回目の記事を書きます。
前回に続きで、内容はロボアドバイザーのウェルスナビの評価で3回目です。
今回は、ウェルスナビのポートフォリオの資産構成等について書こうと思います。

なお、これは元ファンドマネージャーが徒然なるままに、個人的趣味で分析をやってみた感想文を公開しているだけです。
投資助言とか、アドバイスではありません。投資判断は、ご自分の責任でやってください。
また、情報の正確性も保証しません。個人的な感想文として読んでください。

それでは、始めていきます。

1.ウェルスナビの投資対象資産

ウェルスナビの資産構成は、ホームページのWhitePaperという資料で開示されています。
投資対象は、米国株、日欧株、新興国株、米国債券、物価連動債、金、不動産の7つと表記されています。投資対象の上場型投信ETFの銘柄を見ると、もう少し詳しくわかります。以下のとおりです。

※ウェルスナビのホームページ ”WhitPaper” の情報に基づき、作成。           

上記は、ウェルスナビのホームページのWhitePaperからの情報をまとめたものですが、少し資産の表記と実際の中身が違うようです。
日欧株とありますが、投資対象ETFのVEAのポートフォリオ構成は、欧州地域 52%、日本を含む太平洋地域 37%、米国を除く北米地域 11%(2022年7月末)で、日欧株というより、米国を除く先進国株式(日本を含む)というのが実体のようです。
また、物価連動債とありますが、これは米国の物価連動国債が投資対象です。表記だけ見ると、先進国の物価連動国債に分散投資するように受け取っちゃいますが、米国のみの物価連動国債に投資するようです。
最後に、不動産ですが、これも米国のリートが投資対象です。名前からすると、グローバルに投資するものに感じますが、米国のみに投資するものです。

ちょっと、表記が実体に合っていないので、以下のとおり、修正します。

上記がウェルスナビの投資対象のまとめですが、ひとつ目につくのが、米国の資産が多いことです。株式は米国株、債券は米国債券・米国物価連動国債、オルタナティブは米国リートが米国市場の資産です。また、金はロンドン市場の価格にトラックするETFに投資しますが、金価格は米ドルベースであり、特にロンドン現地のローカル商品ではないので、これも米国の資産にカウントしていいかと思います。他は、新興国株には、あまり大きなウェイトは配分されないでしょうから、結局、米国を除く先進国株(日本を含む)以外は、大半が米国の資産になると考えられます。さらに、すべてのETFが米国上場で米ドル建てです。
つまり、ウェルスナビのポートフォリオは、株式も債券もリートも通貨も米国、米国、米国で、米国だらけなのです。良く言えば、米国の成長に徹底的に乗る、悪く言えば、米国と心中する、ポートフォリオです。

2.アセットアロケーションの推定

アセットアロケーションは、投資対象資産のそれぞれの①期待リターン・②実績リスク・③相関係数、④制約条件があれば、計算できます。それぞれのコースにつき、目標リスクに最も近いリスクで、リスク1単位あたり最も高いリターンを期待できる最適なポートフォリオを導出します。
ウェルスナビのホームページのWhitePaperで、2022年3月時点の4つの情報がすべて開示されているため、それを使って計算してみました。

上表は、リスク許容度別に、コース1~5まで推定したポートフォリオのアセットアロケーションです。
なお、目標リスク13.70%のコース5は、制約条件からリスク13.70%のポートフォリオは作れず、最大リスクは12.44%で、そのリスク水準のポートフォリオを作りました。結果、コース4のリスク12.30%、コース5のリスク12.44%はかなり近いものになりました。(ちゃんと合ってるか、わかりませんが、私の計算結果はそうなりました。)

以下は、アセットアロケーションのうち、米国資産とその他に分けたものです。

米国エクスポージャーは、最大のコース1で88%にも達し、最小のコース5でも55%もあります。加えて、資産のうち現金2%を除いた98%部分については、すべて対米ドルの円レートの変動の影響を受けます。
このように、具体的な数値で見ても、ウェルスナビは、米国の成長に徹底的に乗る、あるいは、米国と心中する、ポートフォリオだということが確認できます。

3.まとめ

これまで書いたことをまとめます。
1.投資対象資産は、米国株・米国を除く先進国株・新興国株・米国債券・米国物価連動国債・金・米国リート。米国市場のものが多い。
2.推定したアセットアロケーションでは、米国エクスポージャーの比率が全5コースで55~88%にも達する。さらに、現金2%を除く98%は、米ドルと日本円の為替レートの変動に晒される。したがって、ウェルスナビは「米国の成長に徹底的に乗るポートフォリオ」、あるいは「米国と心中するポートフォリオ」だと言える。

ウェルスナビは、徹底的に米国にBetしたポートフォリオと言えます。
今は、急速に円安ドル高が進んでおり、パフォーマンスは極めて良好だと思います。しかし、為替は水物です。米国の急激な利上げで、インフレが落ち着く一方、景気が悪化すれば、今度は利下げが始まります。景気を下支えするために、米国はありとあらゆる手段を使って、ドル安方向へ強力に為替を誘導します。

ウェルスナビに投資する場合は、個人個人の資産の中で、米ドル建てのエクスポージャーをどれだけ持つかという視点が必要だと思います。米ドル建てのエクスポージャーの枠内で、ウェルスナビに投資をすべきと思います。

次回は、ウェルスナビのポートフォリオの特性を考えてみたいと思います。
今回はこれまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?