人間関係をマシにする進化心理学的な方法
タイトルの通り、人間関係の苦手な人が、進化心理学という心理学の一種を活用して、人間関係をマシにする方法を書きました。
その方法は「人間関係の苦手な人向け」です。理由は、そもそも人間関係の得意な人間は、進化心理学に頼らなくても人間関係に困らないからですね。
「なぜ進化心理学を採用するのか?」というと、人間関係に困っている人間というのは、理屈っぽくて、感情を扱うのが苦手なので、標準的な心理学をインストールしようとしても、内容に根拠がないように思われ、くだらなく感じられて、かみ合わないからです。論理的な正当性を重視する面倒くさい人間には、人間の心理を進化のメカニズムで説明するという面倒くさい進化心理学だったら納得してインストールできるだろうという意図があります。
わかりやすい構成にするため、5W1Hに分けています。参考にした本として進化心理学者のロビン・ダンバーの「人類進化の謎を解き明かす」を土台にしています。以下で参考にしたページを示すときは、「本(ページ数)」の形で指定していきます。より詳しく知りたい方や、さらに深掘りして自分なりの方法を模索したい方は、そちらもあわせて読まれることをおすすめします。
When(いつ)
霊長類の日中時間の過ごし方
人間関係をマシにする最初のステップは、「いつマシにするのか」ということです。人によっては、仕事や生活に忙しく、とても人間関係を充実させてるどころではないという方も多いでしょう。
進化心理学では、霊長類の日中時間での過ごし方を下の4つのカテゴリーで分類することで、時間の過ごし方を考察します。(本、84-85ページ)
摂食
移動
強制的な休息
社交
社交に使える時間には限界があります。日中活動時間のうち、食事と移動、休息の時間を引いた残りの時間で社交、人づきあいをすることになります。
社交に使う時間を増やすには、日中活動時間を長くして(睡眠時間を削って)食事、移動、休息を削ることになります。
とはいえ、生きるために必要な時間を削ることは、身体的精神的にきびしい選択でもあります。そのため、他の人間の個体と一緒に食事を摂ることで、食事の時間と社交の時間をまとめるといった方法が考えられます。
さらに、社交の時間の量を増やすのでなく、社交の時間あたりの質を高める方法もあります。ここでの質とは、進化心理学的なメカニズムを理解して、人間関係をマシにする時間効率、タイムパフォーマンスの高さのことです。
優先順位や生活リズムが人それぞれなので一概にいえませんが、自分に合う時間の使い方を考えることが重要です。
年間最大社交可能時間
例えば、優先順位が「自分の時間を大切にしたいが、少数の友人とは仲良くしていたい」と考えているとします。食事と移動(と仕事)、休息(ここでは自分の時間を含む)といった生活に必要な時間と起きている時間との差が、社交に使える時間の最大値、つまり「年間最大社交可能時間」になります。年間最大社交可能時間が、「少数の友人とは仲良くしていたい」時間を上回れば、その人の優先順位は実現可能と分かります。逆に年間最大社交可能時間を下回れば、その人は生活にかかる時間を見直す必要があるとわかります。
計算の具体例
具体的に計算しましょう。ある人(仮にAさんとします)が、時間の使い方が、1日のうち、食事3食合計1時間、移動2時間、平日8時間労働、土日祝日0時間労働、休息1時間、睡眠時間7時間と仮定します。
すると、平日と土日祝日でそれぞれ社交に次の時間が使えると分かります。
平日:24-(1+2+8+1+7)=5時間
土日祝日:24-(食事1+睡眠7)=16時間
年間祝日数が15日としますと、年間平日数は大体365*(5/7)-15=245日です。
年間土日祝日数は、365-245=120日です。
一度計算を整理します。
年間平日数:245日
年間土日祝日数:120日
これで、ある人(Aさん)の年間最大可能社交時間は次のように計算できます。
年間最大可能社交時間:(5*245)+(16*120)=3145時間
この最大社交時間は、上の計算で考慮しなかった、入浴や娯楽などの時間を除いた時間です。そのため、実際には可処分時間はもっと少なくなります。
さて、Aさんは、人間関係については、「仲の良い友人が5人いて、彼らとは月に一回、3時間ずつ一緒に過ごしたい。すごい仲が良いわけではないが、年に2時間は会って話せるような関係の友人を増やしたい。今の生活だと、何人ゆるい友人との関係を維持できるだろうか?」と考えたとしましょう。
Aさんが、年間最大可能社交時間を全て人間関係に費やすと仮定して、「年に2時間は会って話せるような関係の友人」をX人増やせるとします。そして、「仲の良い友人」5人との関係を継続させながら、新たに交友関係を増やすと仮定すると、ゆるい関係の友人の最大数「X」は、次のように求まります。
「仲の良い友人」5人と過ごす時間:3*5*12=180時間
「ゆるい関係の友人」X人と過ごせる時間:3145-180=2965時間
「ゆるい関係の友人」一人と過ごす時間:2*12=24時間
「ゆるい関係の友人」X人=2965/24=123人
このように、Aさんは「仲の良い友人」5人と、「ゆるい関係の友人」123人の合計128人の人間関係を築けることがわかります。この数字は後で説明する「ダンバー数」の150人とおおむね一致します。平均的なホモ・サピエンスの人間関係把握能力とAさんの能力が同じならば、友人に関する記憶や情報をコントロール限界を超えないので、脳の処理能力的にも可能とわかります。
Whenの総括
このようにして、普段の生活リズムから、年間最大社交可能時間を計算し、自分の理想の人間関係のスタイルを想像して、友人一人当たりに使う時間を仮定すれば、最大友人数が理論的に計算でき、ダンバー数との比較をして、脳が処理できる範囲かどうかの判定も行えます。
友人との過ごし方の理論的な計算方法をここまで検討したので、以下では、年間最大社交可能時間を最大限に活用するタイパを高める方法を書きます。
具体的には、「どこで」「だれに」「なにを」「なぜ」「どうやって」働きかけるアプローチが合理的なのかについて書いています。
Where(どこで)
友人になりうる人間と出会うための最適な場所は、自分と興味の近い人々が集まるコミュニティと言えます。なぜなら、友人関係という長期的な関係を維持するために、共通の活動なり話題なりが必要ですが、そうしたテーマが最初から存在することが出会う段階で担保されている人を探すのが時間的にコスパが良いからです。もし、興味関心が違う人間とエンカウントしても、最終的に「この人とは話が合わないな」という理由で大抵関係は切れます。それなら最初から話の合う確率の高い人間との接触回数を最大化する戦略を採用するのが合理的ではないでしょうか。以下では具体例を挙げてみます。
ノミトモ
お酒を飲むのが好きな人なら、「ノミトモ」というアプリがおすすめです。
「ノミトモ」は恋愛・婚活目的の合コンセッティング用のマッチングアプリとして使われることが多いですが、恋愛・婚活に限らない飲み会募集が毎日掲示板にアップされています。基本無料です。有料会員になると、個人へのDMをいきなり送れるようになるなどの機能が解放されますが、基本的には課金はしなくても楽しめます。また、飲みの場でラインを交換することで、内内での飲み会をアプリを通さずに開催することが、アプリの常連者の間で通例となっています。なぜなら、毎回知らない人も来るかもしれない募集をするのは疲れるからです。最初に一回だけ常連の多そうな飲み会に参加し、その場でラインを交換すれば、あとは都内や大都市圏でなれば頻繁に飲みのお誘いが届くことになるでしょう。アプリのリスクとしては、出会い目的で変な行動をすると、ノミトモのユーザの中にかつての2ちゃんねるの住人が一部いて、晒しあったり容姿の誹謗中傷などをしているケースがあるので、ガツガツせずに純粋にお酒を飲むのが好きとかでなければおすすめできないアプリではあります。そのため、プロフィールの名前やアイコンはできれば特定されない形式で始めるのが安全です。恋愛でも、もしかしたら出会いもあり得ます。複数人での飲み会が苦手で、場に慣れたい人もおすすめです。
GRAVITY
疲れていて、年齢層が若め(学生〜社会人2、3年目)で、愚痴を共有したい気持ちのある方は、GRAVITYというアプリがおすすめです。基本的にはXの投稿(ツイート)をするような感覚で日常を呟けば良いです。私の友人でこのアプリで出会った人と交際したというケースもありました。ガチの恋愛系のマッチングアプリよりも、プロフィールで判断されにくいのが良い点です。
koetomo
中高生〜大学生くらいの方には、「koetomo」がおすすめです。現代の若者はボイスSNS経由で他校の学生と出会って、X、Instagram、TikTokbの連絡先を交換して仲良くなって、交際に発展するケースが増えています。悪い大人も紛れ込んでいる場合もあり、注意して使う必要がありますが、音声通話での会話の相性を確認してから、カラオケなどで仲良くなる流れは合理的です。
星の王子様
大学生〜サラリーマン、OL、既婚者の多い、愚痴を共有するアプリとしては「星の王子様」が挙げられます。このアプリではメッセージを送るためにはポイント購入が必要です。毎日ログインボーナスがもらえるので、実質的に無料で使えます。このアプリも、「彼氏が欲しい」「彼女が欲しい」と多くの男女がぼやいているので、毎日のログインボーナスがある程度貯まってから住まいが近そうで趣味の似ている人にメッセージすれば出会えたりします。ただし、アカウントのほとんどが星の王子様のキャラクターのアイコンで、年齢や性別、住まいがわからないユーザが大半なので、効率的に出会うのは難しいという問題もあります。そのため、基本は匿名のぼやきに共感される目的で使い、運が良ければ実際に会えるくらいのスタンスがおすすめです。
ラインのオープンチャット
具体的なアニメなどの好きな作品がある人で、同じ作品のファンとグッズを一緒に買いに行くなどで仲良くなりたい方は、ラインのオープンチャットで作品名を検索すれば、その作品のファンと交流できます。何月何日にどこで何のグッズを買うかなどの交流情報が流れるので、そのタイミングでお店に行けば、一緒にくじを引いたり、手に入れたグッズをチャットで貼ることで自分の存在をアピールできます。あまり楽しそうにしすぎるとオタクたちにジェラシーを与えるので不健康ですが、適度な自己顕示欲は良いでしょう。
Meetup
外国人の友達を増やしたい時は、「Meetup」というアプリがおすすめです。自分の住まいの近くで開催される国際交流関係のイベントが募集されます。例えば、数百人規模の飲み会(パーティー)から、美術館での合同鑑賞会、裸婦のデッサン会、日本文化の体験会など、外国人目線の面白い日本文化を味わえます。明るいユーザが多いので、気分を盛り上げたい時に便利です。
Yenta
仕事と絡めた人間関係を広げたい時は、Yentaというアプリがおすすめです。アプリの仕様はマッチングアプリのTinderと似た形式で、気になった人ならスワイプ、気にならない人はスルーする二者択一形式で、プロフィールから興味のある人とはメッセージを開始します。大抵は予定を合わせてzoomでのビデオ会議をして、話が合ったらオフラインで会うという流れになります。経済やビジネスに興味のある人が多いので、経済を勉強する比較的良心的な勉強会に誘われたり、ビジネス書を読む交流会に誘われることが多いです。一見マルチのように見える会もあるのですが、参加すると一回500円程度で最近流行りの本について知れたり、自分が読んだ本をプレゼンすることで、表現力が高まります。日経新聞のネタを仕入れて話すと好印象になります。
ヴァーチャルランチクラブ
起業や副業、営業や人材紹介などのよりビジネス色の強いオンライン会ではヴァーチャルランチクラブがあります。知らない人への営業を練習したい時や営業トークに飲まれないように精神を鍛えたい時に使うと良いでしょう。
社長メシ
学生で他大学の学生と交流したかったり、食費代を浮かせつつ都内のうまい飲食店での食事をしたい時におすすめなのが社長メシというサービスです。このサービスは、大学生と中小企業の社長が飯屋で社会について話すというマッチングがされます。学生は無料で普段行かないような店で飲み食いし、ベンチャー創業の話や小中規模のマネジメントの話、社会情勢などについて勉強もでき、その場に居合わせた他の大学の学生とも交流できる一石三鳥のサービスになっています。就活目的だけでなく、社会勉強として使えます。
CAMPFIREコミュニティ
共通の趣味の人をオンラインサロンに入って探したい時は、CAMPFIRE社の運営するCAMPFIREコミュニティで探すと良いです。理由はその透明性です。CAMPFIREコミュニティでは、会の参加人数が表示されているので、個人が運営するオンラインサロンよりも規模感が明確にわかります。運営の基準に見たないオンラインサロンは申請しても通らないので、質が担保されているメリットもあります。おすすめは月額が0円~1000円のコミュニティに入って様子を見ることです。外から見ても実態はよくわからないことが多いので、入ってから継続するかを判断したほうが時間の節約になります。おすすめは「自分が持っている本の著者が運営しているサークル」または「今まで見たYouTube動画で面白いと思った人が運営しているサークル」です。なぜならオンラインサロンを探そうとすると、自分に合わないのに勝手に面白そうと思い込んでしまうことがあるのですが、探そうと意識しなくても面白そうと思ったことがあるということは、本当に自分の好みに合う確率が高いことが予想されるからです。逆に、サロンの募集は魅力的に見えるけど、運営者が具体的に今まで何をしてきたのかわからないサロンは外した方が良いです。
peatix
ビジネス目的だけでなく、一緒に勉強する人を探したい時は、peatixというイベント告知サイトでイベントを探すと良いです。オフラインの参加でも、オンラインの視聴でも対応しているものが多いです。無料参加できるものもあります。開催場所が書店のオープンスペースのイベントは透明性が高く、怪しい人と出会うリスクも少ないです。イベント開催側としても便利です。
awabar
スタートアップの社員や起業家の交流スペースとしては、六本木のawabarが有名です。価格は一般的なバーの価格帯の印象です。ポイントは客にXなどのSNSでよく見かけるスタートアップ関係者がいるということです。店内では出資の相談から新規事業の相談まで、ざっくばらんに会話がされています。店内に客が勤めている会社のロゴが壁一面に貼られており、一般に知られる規模までスケールしたスタートアップのロゴから、すでになくなった会社のロゴまで貼られており、諸行無常と熱気を感じられる空間になっています。
DMM.make AKIBA
ものづくりや電子工作などのギークな趣味のある方は、DMMが運営しているDMM.make AKIBAがおすすめです。法人向けのコワーキングスペースという括りになりますが、一般の方向けに定期的に開催される電子工作教室などに参加することで、電子工作好きからハードウェアオタクまでつながれます。YouTubeで作品を発表している人や、サイバーパンクを体現している人まで個性の強い人が多くて面白いです。作った作品を展示している人もいます。
技研ベース
プログラミングのようなソフト開発から、3Dモデリングのようなハードまで手広くものづくりするコミュニティとして技研ベースがあります。店内にはディープな技術書やロボットアニメのプラモデルが展示され、濃いオタクがたくさんいます。技術に関する具体的なアドバイスをし合う文化もあるのでものづくりに行き詰まった時にいくとヒントがあります。定期的に食事会に参加し、ご飯を食べながら技術について話すことで知識と知見が増えます。
Whereの総括
現代はインターネットのおかげで、同じ趣味の人を探しやすくなりました。ここまでいろんなアプリやサービス、イベントスペースを紹介しましたが、最大のポイントは「あまり知られていない場所」にいくことです。なぜなら有名になってしまったサービスや場所には悪い大人が集まって質が下がり、良い出会いを邪魔されるリスクがあるからです。XやInstagramは、あくまで出会ってから連絡先を交換するツールとして使う方が良い場合があります。出会いがないという言葉を聞きますが、出会いの場は実は色々あるのです。まずは手軽に始められるオンラインの交流から徐々に始めて、慣れてきたらオフラインで交流するのがおすすめです。居心地の良い場を探しましょう。
Who(だれに)
相性の良い人の特徴
イベントに出かけて、いろんな人と出会ったら、自分は誰と相性が良いかが気になる人もいるでしょう。そんな時、進化心理学は関係の長続きする人の特徴を教えてくれます。参考図書の次の言葉が参考になるので引用します。
親近感を生み出す六つの性質
重要なのは、親近感が次の六つの性質の共通する数で予測できることです。
言語
出身地
学歴
興味や趣味
世界観
ユーモア感覚
三つ以上で強い友情が生まれるので、国内で同じ興味や趣味の人を探せば、次の二つは共通します。
言語(日本語で話せる)
興味や趣味(イベント/コミュニティで出会う)
共通点の質問アイデア
もう一つの共通点を探す方法として、それぞれの項目について以下の無難な質問をすることで、出会ってから早い段階で友情が生まれやすいかどうかの判定が可能です。
出身地→「出身地はどちらですか?」
学歴→「学生時代は何の科目が好きでしたか?」
世界観→「好きな偉人はいますか?」
ユーモア感覚→「好きなお笑い芸人は誰ですか?」
地元ネタの対策
出身地は質問しやすいですね。相手が自分と同じ出身だった場合に備えて、自分の出身の都道府県の有名スポットは片っ端から現地に足を運ぶことで、話題提供できるようになります。以下の項目の知識を仕入れると安全です。
食事
名産品
観光スポット
伝統文化
政治
地理
気候
産業構造
歴史
方言
営業のように多くの人と話す職種なら自分の出身以外の都道府県についても詳しくなった方が良いと思います。自分の地元について話せるようにして、相手がどんなネタを振っても対応できるように準備をすれば十分でしょう。
学歴の探り方
学歴については、あまり親しくない段階で直接質問することは失礼にあたるリスクがあるので、FacebookやLinkedinのようなSNSの学歴欄で調べます。
世界観の探り方
世界観は、Xでフォローしている政治家から党派性を推測したり、芸能人の不倫や犯罪といったニュースに対する反応を観察するのが無難な方法です。
ユーモア感覚の探り方
ユーモア感覚については、好きな芸人を質問する他に、次の項目を調べればわかります。
好きなお笑い番組
好きなインフルエンサー
SNSでも次の項目を調べれば推測できます。
フォローリスト
いいね履歴
リポスト
他にも、最近笑ったことを質問して、自分も一緒に笑えるかどうかによって「ツボの近さ」が生理的に判定できます。ユーモアの質だけでなく、好きなユーモアのジャンルや方向性もチェックすることで確度がより高まります。
Whoの総括
進化心理学者ダンバーの指摘の興味深いのは、、友情はつくるものではなく、生まれるものだということです。友達の最大数を増やすために、多くの人が好きだと表明している物事を吸収して、最大公約数的な趣味のリスト作りをしたくなる気持ちもわかりますが、自分の感性でつまらないと思うものは、結局はつまらないと感じてしまったりするものです。したがって、無理やり趣味を増やそうとしたところで、後には疲労と余計な知識だけが残ります。そんな苦労をするくらいなら、真に自分が興味を持てるものを大切にして、無理のない範囲で趣味を趣味として続けながら、同じ興味関心の人の中で、地元や価値観、笑いのツボの近い人を探すのが良いのではないでしょうか。
What(なにを)
エンドルフィンの分泌
適切な時間(When)で適切な場所(Where)で適切な人(Who)に出会った後は、一体何をすれば良いのでしょうか。進化心理学的にはエンドルフィンという神経伝達物質が分泌される行為を一緒にすれば関係性が深まるといえます。
エンドルフィンは幸せを感じさせる物質です。霊長類は毛づくろいしあうと分泌されます。エンドルフィンは以下の行動をするときにも分泌されます。
笑い
食事
音楽
酒
ここからはそれぞれの項目について具体的に何をすると良いかを書きます。
笑い
第一に、一緒に笑うことがエンドルフィンを高めると言います。毛づくろいとは異なり、笑うことは複数人で同時にエンドルフィンを分泌できるので、時間効率が良いのです。参考図書の該当部分を以下に引用してみましょう。
笑いを共有するため、ユーモアの感覚が近いことはここで重要になります。また、自分なりに面白いと思うことを自分自身が言えるようになることが、笑いへの近道です。普段から笑えることがないかアンテナを立てましょう。
食事
第二に、一緒に食事をすることがエンドルフィンを分泌させると言います。食事も笑いと同様に、複数人で同時にエンドルフィンを出せるので、効率が良いと言えるでしょう。参考図書の該当部分を以下に引用してみましょう。
相手との関係がうまくいかないと、一緒に食事を取るのも嫌になってしまうことがありませんか。一緒に食事を取らないことで、エンドルフィンが分泌されなくなり、ますます相手との心理的距離ができてしまいます。そのため相手との関係を良くしたいときは、食事に誘うことが合理的だと言えます。
音楽
第三に、音楽もエンドルフィンを分泌させます。食事や笑いと同様に音楽も複数人で同時に楽しめるという利点があります。カラオケやライブなどでは自然と仲良くなれます。参考図書の該当部分を以下に引用してみましょう。
音楽活動の種類にかかわらないというのは面白いですね。興味や趣味の中で音楽の好みが近い人を探すのも良いです。好きなアーティストが同じだと、歌詞やメロディーに共感するツボが同じ人なので、話が合いやすいですね。
酒
第四に、酒を飲むこともエンドルフィンを分泌させます。令和の日本では、ノミュニケーションは敬遠されがちですが、嫌な職場の飲み会でなければ、基本的には楽しいです。参考図書の該当部分を以下に引用してみましょう。
打ち上げなどで乾杯をするのも、イベントや大仕事が終わった後でも相手と人間関係を良好にする上で有効です。飲みの場で失敗することとのトレードオフにはなりますが、飲み会に顔を出すことで人間関係の保険になります。
Whatの総括
よく笑い、よく食べ、音楽で集い、酒を味わう。陽キャっぽいことをすれば良いということです。今まで陽キャでないという人は慣れないかもしれないですが、場数と知識がモノを言う場面もあります。場数は親しい人と積み、知識はお笑いやグルメ情報、流行の音楽や酒の雑学を仕入れれば良いです。
Why(なぜ)
安全が欲しいから
人間関係が必要な一つ目の理由は、安全が欲しいからではないでしょうか。孤立した状況だと、敵に襲われないか心配になるといった防衛本能が働き、味方を探し求めるようになります。道に不良がいたら、学校から帰るときに複数人で帰ることで、カツアゲされなくなるといったメリットがあります。大人になっても同じです。多くの人と支え合うことで、生存率を高めます。
寂しいから
人間関係が必要な二つ目の理由は、寂しいからではないでしょうか。もし、あなたがあまり他人と一緒にいなくても寂しさを感じない人であったなら、交友関係、恋愛、結婚、子育てなどに魅力を感じないかもしれません。でも精神的に強い人は少ないです。寂しいからという理由で他人を振り回すのは不健康でおすすめできませんが、寂しくても平気と強がるのも不健康です。
役に立ちたいから
人間関係が必要な三つ目の理由は、役に立ちたいからではないでしょうか。Amazon Primeに課金すれば、月額500円でも無限にエンターテインメントを楽しめます。それにもかかわらず人間関係を求めるのは、自己完結の喜びで得られないものを求めているからです。人と関わり、自分が誰かの役に立つ実感を得ることで、自分が生きていることを肯定する自尊心が生まれます。
Whyの総括
人間関係を求める理由として典型的なものを挙げました。心理学において、マズローの欲求段階という、人間の欲求が段階的に生まれるというモデルがあります。生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の順で欲求が生まれるというアイデアです。上で挙げた人間関係を築く理由は安全欲求、社会的欲求(所属欲求)、承認欲求(自尊欲求)へと対応します。
How(どうやって)
ダンバー数
ダンバーの発見の中で有名な概念としてダンバー数があります。いろいろな共同体の規模を調べると、メンバーの数が150人に近いというものです。その150人という数字をダンバー数と呼んでいます。狩猟採集社会の集団レベルは6つの層に分かれており、それぞれの層に適切な機能があるとされています。
家族:~5
血統:~15
バンド:~50
共同体:~150
やや大きめの共同体:~500
民族・言語的集団:~1500
右の数字は集団の人数の上限です(本、278-279ページ)。共同体の機能は、資源の交換や仲間の襲撃への備えなどがあるとされています。資源の交換は「資源のある場所に関する情報の交換」を含みます。仲間の襲撃への備えは「襲撃への防御」を意味します。すなわち、どうやって人間関係を築くかは「資源の情報を教える」ことと「仲間を襲撃から守ること」の二つが重要とわかります。具体的には、相手が得する情報を教えたり、相手が困っている状況とわかったときは可能な限り助けるといった行動が適切とわかります。ダンバー数を超えるとフォローしきれなくなるため、人間関係の拡大策には「ダンバー数を超えるまでは広げて、ダンバー数に達したら維持する」のが人間の脳の情報処理能力的には最適な関係構築アプローチと言えるのです。
友情が壊れることを防ぐ方法
基本的に、男性は浅く広い人間関係を好み、女性は深く狭い人間関係を好む傾向があります。友情が壊れることを防ぐ方法も男女で違うと言われます。人付き合いのスタイルは人それぞれなのでマクロの傾向は実践的な知見にはつながりにくいので、友情が壊れることを防ぐ方法に限定して引用します。
男性の友人との思い出話は「誰々と一緒にこんなことをやったんだ」という「武勇伝」になりがちなのに対し、女性の友人との思い出話は「誰々と前にこんなことを話したんだ」というエピソードトークになることを振り返るといかにもと言えます。この傾向を意識することで最適な戦略がわかります。
男性に対するアプローチ
男性に対するアプローチは、「一緒に〇〇をしよう」になります。具体的には狩りに近いことが望ましいです。スポーツ、食べ歩き、合コン、ゲームなど対象を追いかける生物学的な渇望感を満たす活動に誘い、協力したり競って能力を磨いたり優劣をつけることが良いです。勉強や仕事を一緒にやるのも良いです。少年漫画のように「ライバルと書いて心の友と読む」を地で行く関係をつくることで、一人のときより結果が出やすくなる恩恵があります。
女性に対するアプローチ
女性に対するアプローチは、「一緒に会話をしよう」になります。具体的には相手の最近あったことを聞いたり、愚痴を聞いたり、自慢話を聞いたりなど「相手が話したがっていることを聞く」がポイントになります。基本的には自分が話すのではなく、話をさせたほうが無難です。「沈黙は金」なのです。
Howの総括
適切な場所で適切な人と出会っていれば、細かいアプローチはあまり意識をしなくても良いです。ただし、男性に対しては会話でなく、一緒に取り組む活動を提案することが鍵というのは忘れてはならないポイントです。まずは自分が楽しめることを見つけて、それに相手を巻き込んでいきたいですね。
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