CASEに関わる最新海外動向 (2021年6月)

2021年6月7日~7月10日

この期間の重要な動向

■ Teslaは世界第5位に相当するスーパーコンピュータを自社開発し、Autopilotと今後の自動運転AIを実現するニューラルネットワーク用に特化して利用。

■ バイデン大統領がEVへの移行を加速するための$174Bの計画を策定した後、VW、GMは共に米国のEV販売計画を大幅に拡大。

■ VW、GM、Ford、Stellantis、Renault、Volvo、Porsche等が自社のバッテリー開発能力、製造能力に大幅投資をおこなっている。

■ Porscheの主要工場は既にカーボンニュートラルであり、今後グリーンエネルギーに切り替えないサプライヤーとの契約は破棄。(欧州では工場レベルの再生エネ利用が既に拡大している)

■ Waymo、GM/Cruise等で自動運転開発への投資も引き続き拡大。(自動運転を実現出来る企業は更に絞り込まれる)

■ 中国では、中国自動車メーカー協会が業界との協力で車両データプラットフォームを構築済みであり、各社自動運転開発に必要なデータを購入可能となっている模様? (利用が拡大したら脅威)

以下詳細です。

◎◎◎ 中国の動向 ◎◎◎

★ 中国の自動車メーカーはまもなく中国自動車メーカー協会の中央リポジトリから自動運転開発に必要なデータを購入できるようになる

◇ 自動運転の開発には、何千テラバイトものセンサーデータを収集、分析、解釈して、最終的に人間がハンドルから完全に手を離しても、道路、高速道路、障害物をナビゲートできるようになるまで、インテリジェント車両の頭脳を「訓練」する事が必要。
◇ 過去3年間、中国自動車メーカー協会は業界のプレーヤーと車両データプラットフォーム (VDP: Vehicle Data Platform) の構築に取り組んできており、既に利用可能になった。

◎◎◎ 米国の動向 ◎◎◎

VW、GMはバイデン大統領のEVシフト政策により米国の販売計画を大きく見直す

◇ 米国のバイデン大統領がEVへの移行を加速するための$174Bの計画を策定した後、北米でより多くのEVを製造販売する準備を更に強化。
◇ 6月14日、GMは計画投資を$35Bに引き上げた。

 ◎◎◎ 欧州の動向 ◎◎◎

欧州の自動車販売は、依然パンディミク前のレベルに満たない

◇ 欧州の自動車販売は3か月連続で、1年前の落ち込んだ水準から上昇したものの、パンデミック前の水準を大きく下回っている。
◇ 欧州のコンシューマと他のセクター全体でコンフィデンスが向上しているにもかかわらず、自動車市場の回復は遅い。

★ 欧州でEV化が予定通り進んでいるのはボルボとVWだけ

◇ 欧州で主要OEM 10社が2030年までにEVに移行する準備ができているかどうかというT&Eのランキングは、自動車メーカーの計画の野心と質に大きな違いがあることを示している。

◎◎◎ EVと自動運転の動向 (Tesla) ◎◎◎

自動運転AIをトレーニングする新しいスーパーコンピュータ(世界第5位)を開示

◇ 既にTeslaのAutopilotと今後の自動運転AIを実現するニューラルネットをトレーニングするために使用されている。
◇ 約1か月以内に「AI Day」を開催し、AI人材のリクルートを強化する。

漸くFull Self-Driving Beta v9をリリース

◇ より直感的でカスタマイズ可能な、まったく新しいユーザーインターフェース(UI)を設計。
◇ カメラ画像のみに依存するコンピュータービジョンシステムであるTesla Visionが使用されており、レーダーは利用していない。
◇「ベータであり、最悪の場合間違った動きをするかもしれないので、ドライバーは常にハンドルを握り、道路上の安全に特別な注意を払わなければいけない」とTeslaもリリースノートに記載。

2021年Q2に201,000台出荷の新記録を発表

◇ 製造は206,421台で納入は201,250台。前四半期は185,000台の記録だった。出荷の99%はModel 3とModel Y。数回出荷開始が遅れたものの1,890台の新型Model Sを納車することができた。

デリバリーイベントで、Model S Plaidの新しいモータを説明し、さらにクレージーなRoadster用モータに関しても触れた

◇ 新しいRoadsterのトルクと回転数をさらに上げるためのアイデアがいくつかある。 新しいTesla Roadsterの開発は今年完了し、2022年に生産開始予定。

Model S Plaidがペンシルベニアで火災を起こし、ドライバーを一時閉じ込めた

◇ Model S Plaidは顧客に出荷された最初の250台の車両の1台。原因は調査中。

自社の保険事業向けに、Autopilotの使用と多くの運転習慣の大量のデータを分析し、保険料をより正確に設定するプログラムを開発している

◇ 安全性評価の為の要素は、ABS アクティベーション、1 日の平均運転時間、Autopilotの無視されたアラート回数、前方衝突警告数、安全でない車間距離で走った時間、極端な加速とブレーキによる速度の変化。ユーザはアプリでこれを確認でき、毎月の保険料に最大50%影響する。

◎◎◎ EVの動向 (VW/Audi/Porsche) ◎◎◎

VWは米国でID.4 AWD Pro BEV SUVの販売を、インセンティブ後$36,175で開始

◇ 全輪駆動EVとしては米国で最も安い。最初のユニットは2021年の第4四半期にディーラーに到着する予定。

Audiは2026年迄に新車はEVのみとし、内燃機関の車の生産は2033年迄に終了する

◇ 既に今年、Audiは内燃エンジンを搭載したモデルよりも多くのEVを市場投入した。2025年には、Audiは20以上のeモデルをラインナップする。

Audiは2-3年以内にEVがガソリン車と同等の利益率になると見ている

◇ Audiは今年約200万台の車両を納入しているが、2030年までに売上が300万台まで増加すると見込んでいる。現状はガソリン車ほど収益性が良くないことを意味している。

Porscheはサプライヤーにグリーンエネルギーへの切り替えを要求

◇ Porscheが認定したグリーンエネルギーへの切り替えを行わないサプライヤーは、長期的にポルシェとの契約の対象とは見なされなくなる。

Porscheは新しくセルフォース社を設立し、バッテリーセル製造に参入

◇ バッテリーセルメーカーであるCustomcellsとの新しいパートナーシップで設立。焦点は、超高性能バッテリーセルの製造で計画規模は1,000台分に相当する100MWh、高性能モータースポーツ車両にのみ使用される模様。

Porscheは突然のパワーロスの問題で、Taycanをリコール

◇ Taycanが動作中に12Vの補助バッテリーが切れると、車両の電気モーターやその他の重要なシステムに電力を供給する800Vのバッテリーパックが遮断される可能性がある。Porscheのみならず、これまでFord、Volvo、GM、Teslaでも12Vバッテリーに問題があった。

◎◎◎ EVの動向 (BMW) ◎◎◎

BMWは顧客や為政者の関心を得る為に、よりグリーンな工場を宣伝する

◇ ミュンヘン近郊のディンゴルフィング工場でBEVであるiX SUVの連続生産を開始した。この工場は、近くの川から水力発電を供給している。BMWは、2030年までに車両1台あたりの排出量を80%削減することを計画。

◎◎◎ EVの動向 (GM) ◎◎◎

EVへの掛けを更に拡大し、投資を30%増やし$35Bとした

◇ 2025年までに30車種以上のプラグイン車と合計4個所のバッテリー工場に$35Bを費やす為、過去8か月で2度目の投資増額を発表。当初、2025年までに$20Bを費やす計画だったが、11月には$27Bに引き上げたばかり。

米国カリフォルニアの地熱鉱床からEVのバッテリーの主要成分であるリチウムを調達するために、オーストラリアの鉱業会社と契約を結んだ

◇ カリフォルニア州エネルギー委員会は、この地域が年間60万トンの炭酸リチウムを生産する可能性があると推定している。これは$7.2Bに相当する。

◎◎◎ EVの動向 (日系) ◎◎◎

トヨタはEVのみに焦点を絞るのは時期尚早だと言う

◇ 6月16日の年次株主総会で、トヨタの今後30年間の商品ラインナップには、EVだけでなく、無数のオプションが含まれると幹部が語った。トヨタは非EVも世界の自動車市場で永続的な役割を果たすという姿勢を堅持している。

ホンダの米国最初のEV SUVは ‘Prologue’という名前で2024年から販売される

◇ ホンダが外装と内装、GMがドライブトレインを設計し、GMのUltiumバッテリーパックを使用する。Prologueは、2040年までにラインナップを完全にEV化するためのホンダの取り組みの始まりで、2025年以降は、ホンダ独自の「ホンダe-Architecture」に基づいて構築された一連のEVをリリースする予定。

◎◎◎ EVの動向 (その他) ◎◎◎

Stellantisは7月8日、「EV Day 2021」を開催しEV戦略を発表

◇ EV市場に300億ユーロを投資し、欧州と北米にイタリアを含み5つのバッテリー工場を構築。2030年までに欧州の売上高の70%以上、米国の40%以上を低排出ガス車(BEVまたはHEV)にすることが目標。イタリア新政府は、約250億ユーロの欧州連合の回復基金を新しいインフラストラクチャに投資し、その金額を国内基金で補充し310億ユーロ以上の投資を計画。

Volvoは6月30日、「Tech Day」を開催しの新しいEVコンセプトを発表

◇ Volvoの安全運転システムは、通常の発想と逆で、衝突や衝撃につながる可能性のある特定の状況下で人間のドライバーをオーバーライドして衝突を避ける、という発想。

RenaultはフランスでのEV製造ハブに向け、中国のEnvision Groupの事業ユニット(AESC)とバッテリー供給の契約を締結

◇ フランス北部にEV製造ハブ向けにバッテリーを製造する計画。これは、EVへの十分なバッテリー供給を確保するための欧州の自動車メーカー間の競争が加速している事を示している。

NIOのES8が欧州で量産承認を得た

◇ NIOは主力SUVであるES8について、欧州の全車型式認証(EWVTA: European Whole Vehicle Type Approval)を取得したと発表。この認証により、NIO ES8の大量生産、およびEU内のすべての国でのナンバープレート登録が可能。

NIOとXPengの両社が6月とQ2の出荷新記録達成

◇ NIOとXpengは、6月それぞれ8,083台と6,565台。第2四半期は合計でそれぞれ、21,896台と17,398台で新記録。これは、中国でのEVの採用が急速に進んでいることを示している。

AppleはBMWの元幹部で最近EVスタートアップCanooの元CEO兼共同創設者のUlrich Kranz氏をEVプロジェクトの推進の為採用

◇ Canooのバンはバッテリーパック、電気モーター、すべての車両の電子機器をコンパクトなモジュールプラットフォームとして設計され、Canooは他のメーカーに販売またはライセンス供与することを望んでおり、Appleは2020年の初めにスタートアップと話し合いを行っていた。

◎◎◎ EVの動向 (全般) ◎◎◎

米国でもEVが拡大する中、HEVの人気も上がっている

◇ 米国人は今年の第1四半期に、HEVの4倍BEVを買ったが、4月の米国の自動車登録の6%がHEVとなり、BEVの2倍以上となった。 第1四半期には、トヨタが米国で販売した車両の4分の1近くがHEVで、前年の12%から増加。ホンダでも、HEV のCR-V SUVが今春10倍に急増。HEVの新しい購入者は高齢者である傾向があり、その多くは南部と中西部に住んでいる。それは古い車の所有者が実用的でより環境に優しい車を購入している。

内燃機関エンジンのピークは既に過ぎているかも知れない

◇ 2017年、世界で消費者は85M台以上の乗用車を購入し、その後2018年、2019年と減少し、2020年にCovid-19により急落し、4年前に内燃エンジン車販売のピークに達していた。昨年、EVは乗用車の総売上高の4%以上、商用車市場の1%を超えたに過ぎなかったが、二輪車と三輪車の44%、バスの39%がEVだった。乗用車をネットゼロに向けるには、2030年までに世界の乗用車販売のほぼ60%がゼロエミッション車である必要がある。

EV関連のSPACによる資本調達ブームが、EVの製造から充電インフラ向けに更に拡大する可能性がある

◎◎◎ EVバッテリーの動向 ◎◎◎

パナソニックは2021年3月迄にTeslaの保有全株式を約4,000億円で売却

◇ この売却は、コーポレートガバナンスコードガイドラインに従ったパナソニックの株式持ち合い方針の見直しの一環。パナソニックの新CEOは、Teslaのバッテリーをさらに大量生産し、会社をより効率的にすることで新しい成長分野に投資するために$数Bを投入するという2年間の使命に着手した。

CATLは3年前の上場以来1,150%以上の利益を上げ、時価総額がVWをわずかに上回る1.05兆元($160B)となった

◇ 今後は、①自動車だけでなく、二輪車、電動ボートまで、さまざまな輸送手段にバッテリーを供給する。②定置型エネルギー貯蔵の能力を拡大する。昨年は中国の電力会社であるState Grid Corpと合弁事業を開始した。③鉱業などのセクターにゼロエミッションの重機を供給し、これらの業界がトラック、掘削機、ドリルをより安全で自律的な運用に切り替えることをより迅速に行えるようにする。

◎◎◎ 自動運転の動向 ◎◎◎

NHTSAは、TeslaやWaymoなどの企業が、衝突を認識後1日以内に、運転支援と自動運転システムに関連する事件を報告することを義務付ける

◇ NHTSAはさらに、自動車メーカーによって報告されたデータを公開すると述べている。WaymoやZooxの完全自動運転車も含まれるが、本来のターゲットはTeslaのAutopilotの様な人間が介在する高度なADAS機能の安全性向上。

GMのクルーズ部門は自動運転シャトルの量産前製造を開始

◇ 2020年1月に発表されたOrigin車両約100台の組み立てをミシガン州ウォレンの施設で開始しており、今年の夏に完成した後、テストに移行する予定。完全品生産は2023年初頭に開始される予定。

Waymoは、CruiseがGMから$5Bの融資枠を発表した翌日の6月16日、$2.5Bの資金調達を発表

◇ Waymoは今回と合計で$6B近くの資金を得ることになる。

テック企業(例Apple)の車への執念は、運転中のドライバーの目の時間を得る事が全て

◇ 2030年までに世界中で5,800万台以上の車両が自動運転になると予測される。米国人は2016年に307.8時間、週に約6時間運転をしていた。これは、人が目覚めている時間の間に消費者の注意を引く最後の残された時間だ。テック企業には、自動運転導入によりできた時間や移動コスト低下からより大きな事業機会が見込まれる。

◎◎◎ その他 ◎◎◎

中国の$1130億のグルーン債権は混乱のルールの中にある

◇ 国際的には債権を全てグリーンプロジェクトに充てることが要求されているが、中国ではグリーンボンドの最大50%を銀行ローンの返済と運転資金の補充に使用することが許可されており、中国の$113Bのグリーン債権市場における資金がどれだけ実際に環境支援のプロジェクトに費やされるのか、評価が難しくなっている。



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