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ばあちゃんが楽しそうにしていると嬉しい

一昨日、ばあちゃんとタイの話をしていた。
来月私はタイに行くので、
どこに行きたいとか
あれが食べたいとか
そんなことを話していた。

急にばあちゃんが
「あんたマッターホルンて知ってるか?」
と聞いてきた。
私はマッターホルンについて全く知らなかったので
マッターホルンとは何かと聞いた。
すると、
「おばあちゃんはマッターホルンに行ったことがあるんや。
スイスにあるんやで。ほんまに良くってなあ。
おばあちゃんの国語の教科書にマッターホルンの絵が載ってたんや。
おばあちゃん、マッターホルンってどんなところやろ。
こんなに綺麗な場所なんやろかと思って
行きたい行きたい行きたい行きたいってずっと思ってたんや。
おばあちゃんが30になる前やったかなあ。
おじいちゃんと行ったんや。
お金はいっぱいいっぱいなくなったけど
行ってよかったんやあ。」
とビールを片手に酔いながら
楽しそうに言った。

私はその場でGoogle検索して
マッターホルンの画像を見つけた。
ばあちゃんにその画像を見せると
「こんなもんじゃないんや。もっともっと綺麗なんやで。
ホテルのすぐそこにマッターホルンが見えてな、
綺麗なんやあ。」
と言っていた。
「マッターホルンって山なの?
うちのすぐそばにいっぱい山なんてあるのに
山が良かったの?」
と聞くと
「そうやで。全然違うんやで。
ここら辺の山なんてたいしたことないがな。
あんたマッターホルン知らんなんてちゃんと勉強してきた?
マッターホルン知らん人と喋っててもしゃあないわ!」
と笑われてしまった。


ばあちゃんが楽しかった頃の話を聞くと
にこにこしてしまう。
楽しそうに話してくれるので
私も楽しくなる。
それと同時にばあちゃんは人生後半私のせいで台無しになったのに
昔はこんなににこにこ話してくれるくらい楽しいことがあったんだ。
と思うと少し悲しくなった。

ばあちゃんにそれを言った。
「ばあちゃんは今ハムちゃんずのせいで楽しくないと思うけど
ばあちゃんに楽しいことがあったのがわかると嬉しい。」
と言った。
言いながら途中で泣けてきてしまい
涙を腕でぬぐいながら言うと
「おばあちゃんは反対にあんたが来てボケてる間がないから
それも良かったんかもしれんで。泣いたらあかん!」
と少し困ったような顔で笑っていた。


マッターホルンのことをにこにこ楽しそうに話すばあちゃんを見て
マッターホルンに行ってみたくなった。
部屋に戻ってからもう一度マッターホルンのことを考えたが
もしばあちゃんがいなくなってしまっても
今日話したマッターホルンのことは忘れないし
いつか行ける時が来て
その時にばあちゃんがこの世からいなくなっていたら
マッターホルンの山を見ながら今日のことを思い出して
悲しくなって寂しくなって泣くんだと思う。


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