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特許事務に向いている人・いない人

今年もゴールデンウィークが終わりましたね。4月から特許事務担当者として働き始めた人たちが「わたしってこの仕事に向いていないのかも…」と悶々としたり疲れを感じたりするタイミングかと思います。
知的財産系のお仕事はまだまだマイナーなので、特許事務とはこういうものと知っていて応募される初心者の方は少ないですよね。わたしも何も知らないままこの世界に飛び込んだ者のひとりです。
「初心者OK」と書いてあるから入ってみたけど向いてないのかも?
とちょっと悩んでいる人にむけて、今日は「特許事務に向いている人」というテーマで書いてみます。

特許事務は、事務所によって求められる仕事の範囲が非常に異なるユニークな職業です。
大きな事務所で事務内でもかっちりと分業体制の敷かれているところは、決められた仕事を間違いなくこなすことが重要課題になります。取引先が大企業メインの場合は、先方の指定するデータベースソフトを複数使いこなし煩雑なルールに従う必要もでてきます。
中小規模の事務所の場合、顧客が大企業から中小ベンチャー、個人事業主まで多岐にわたり、国内外案件問わずあらゆる仕事が事務に任せてもらえる傾向があるのですが、それでも事務所によって仕事内容には差があります。
なので、今回は「中小規模の特許事務所で重宝されるのはこんなタイプ」という観点で書きました。


特許事務に向いている人の傾向7つ

1.整理整頓が好き

紙書類がメインの事務所でも、電子ファイルしかない事務所でも、これは絶対に外せません。
ひとつの案件が調査に始まり権利として登録されまで、たくさんのドキュメントが発生します。それらを案件ごとにきちんとファイリングしたりフォルダ内を整理したりする必要があります。整理整頓が好きな人なら、特許事務担当者の素質があります!

私生活で部屋が雑然としていても問題はありませんが、ファイルやフォルダ、ショートカットでPCのデスクトップが埋め尽くされているような人はちょっとやばいかもです。

2.ルールどおりに作業をすることが得意

特許事務は特許庁というお役所相手の仕事です。提出する書類に様々なルールがあります。
所内でも、1で書いたようにドキュメントの整理整頓には共通の徹底したルールがつきものです。事務所内外のルールを遵守しながらの地道な作業の積み重ねが得意だと、求められる作業に苦痛を感じないと思います。

3.調べ物が苦にならない(知的好奇心が旺盛)

刑法などとちがい知財関連の法律はよく改正されますし、制度の運用も年単位で変わります。最近では様々な書類について押印や提出が不要になりました。また、中小規模の特許事務所では「恒常的な業務ではないけれどたまにある大事な仕事」もちょいちょいあります。例えば外国特許庁に商標の使用証明を提出するとか、利益相反での権利の移転登録申請などです。
そういうときに、自ら制度を調べて必要書類をリストアップしたり、適切な書面を整えたりするのが苦にならないというのは、特許事務担当者として大きな強みになります。

4.フットワークが軽い

事務はあくまでも事務です。弁理士や技術者が動きやすいように環境や資料を整えたり、消耗品の購入やファイルの整理、郵便局へ庁提出書類を出しにゆくなど雑多な仕事があります。3で書いたようにたまにしかないけれどややこしい案件も発生します。
そういう時に「わたし、それはやりません」とにべもなく断ってしまう人よりも、フットワーク軽くえり好みせず仕事をさくさくさばける人のほうが、チームとしては大助かりです。

5.論理的な思考ができる

これは若干高度かもしれないのですが、論理的な類推をしたり論理的整合性をチェックする視点を持てるようになると、対庁手続きの書類作成で迷わなくなります。「Aの手続には委任状が必要だった。それならBの手続にも必要なのでは?」等、考えられるようになると手戻りや確認作業が減って仕事がスムーズに回るようになり、お客さまにも迷惑がかからず自分も不安に陥らずに済みます。

それ以外にも、データベースソフトや期限管理用のアプリを使いこなしたり、整理番号の付与ルールなどを考えたりするには、ロジックを組み立てそれを守る姿勢が欠かせません。個人の感覚で適当にデータを入力したり運用をアレンジしたりしたら、データベースはあっという間に矛盾をかかえることになります。また、思い付きでなにかをすると、後になって想定していなかったケースに対応するのが難しくなり身動き取れなくなります。
ロジカルに考えて、ファイルやフォルダを始めデータ全般を整理できる人は一緒に働いていて安心感があります。

6.間違い探しが楽しめる

庁提出する書類は公的な書類として記録されます。当然、書式には厳密な決まり事がありますし、日本語がおかしいとそれが公的な書類として残ってしまって恥ずかしいものです。ほとんどの事務所が、間違いを防ぐために案件管理用のデータベースソフトから書類のひな型をエクスポートして書類作成していると思いますが、そもそもの出願人情報が間違っていたり、人が書類を選択する際にうっかり間違えてしまったりすることもあります。最終的に人が目視でチェックするのですが、これを楽しめる人だと特許事務としては最強だと思います。

7.他人の立場に立ってものごとが見られる

特許事務のお仕事の中でもお客様とのコミュニケーションは、たいへん重要な位置を占めています。
特許事務担当者は、様々な業種・世代の方々に対して、特許権や商標権を取得するまでのあらゆる手続のお知らせをお送りし、回答を促したりする窓口係でもあります。一般の方とプロとをつなぐ架け橋のような役割ですね。

こちらの世界にいったん入ってしまうと感覚が鈍りますが、知的財産に関する手続や書類名はやはり独特で、一般の方々にはなじみが薄いのです。
「出願手続きが完了しました」「外国出願はいかがされますか」等のお知らせを送ったら、思いがけない反応や質問が返ってくることがあります。その体験を踏まえて顧客に対して対応やレターの文章を工夫し、的確な提案をしたり顧客が望んでいることをかなえたりするには、やはり他人の立場に立ってものごとを見る姿勢が大事です。

ちょっと固い内容になっちゃいましたが、すべての条件を満たす必要はありません。三つぐらい「まぁ、そうかも」と思えるものがあったら、たとえ今「特許事務に向いてないかも…」と悩んでいたとしても、そこを伸ばしてもう少し特許事務を頑張ってみてほしいなと願っています。

posted by Rika