見出し画像

#313 「個性の尊重=自分本位」と考えることは正しいのか?

 日本の社会では、「集団」という概念が大切だとされ、その影響を受けた教育もまた、一人ひとりが所属する学校、部活などにいかに貢献できるかという考え方が優先されてきたように思います。

 今の教育現場では「個性の尊重」という価値観が浸透しつつあります。私たち一人ひとりの存在が、ある集団の存在よりも大切であるという、今までとは逆の思想だと思われるかもしれません。

 集団を重要視してきた日本において、「個人の尊重」と聞くと、なぜか「自己中心的」であるとか「自分本位である」というネガティブなイメージと繋がる傾向がありますが、本当にそうなのでしょうか。

 『社会福祉の専門家が語る、ここまでやるフランスの子育て支援〜親に子育てを任せきりにしないフランスの育児・教育システム〜』という記事を見つけました。ビデオジャーナリストである長野光氏が『一人ひとりに届ける福祉が支える フランスの子どもの育ちと家族』(かもがわ出版)を上梓したフランス子ども家庭福祉研究者の安發明子(あわ・あきこ)氏にインタビュー。安發氏が現在のフランスの教育制度について語っています。

「個としての自分を大切にする」というと、「自分が一番大事」と受け取られてしまうかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。

 日本で「アタッチメント」という言葉は、特定の相手との間の関係性や親密さを意味しますが、フランスの幼児教育における「アタッチメント」とは、自分が相手とちゃんと関係性を築いて、「ノー」と言いたいときは「ノー」と言えるようになることです。
「ノー」をはっきり言うことができれば、自分にとっての「イエス」も分かる。「ノー」を言うことができれば、他の人の「ノー」も尊重することができる。
「あの場所では自分らしくいられなかったけれど、環境を変えたらすごく自分らしく過ごせた」という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。自分に合った環境を得ることは、自分の個性や能力を発揮する上でとても大切です。
 自分で選択していくことはもちろん大切ですが、子どもの頃から自分の意向を自覚し言葉にできるようになることがとても大切です。

と安發氏はインタビューの中で語っています。

 集団の中に埋もれた中では、自分自身への理解が結果として薄くなり、自分のキャリアの方向性を自分自身で決められなくなる。自分の人生に対する責任もまた軽薄になってしまうのかもしれません。

 個人の尊重とは決して、集団を大切にしないという対立する概念ではない。そんなことを思わせる記事でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?