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映画『フェイブルマンズ』

スピルバーグの自伝的作品とのこと、映画への愛でハッピーなものを想像していたらそういう牧歌的なものではありませんでした。
初めて見た映画での列車の衝突事故シーンを、買ってもらった贈り物の列車たちで再現して壊してしまい、母の助言でそれを次には撮影して残すところから映画との関係が始まっていきます。映画というもののおもしろさも残酷さもかすかに感じる始まりです。
映画を撮るということは時に演出など及ばない、そこにあるものをただ映してしまう・映ってしまうことがある。それまで演出を楽しみながら意のままに家族の日常を演出して夢中になっていたサムが、家族とのキャンプで思いがけず鮮やかに母の感情を撮ってしまい、母自身にとっても意識の底に閉じ込めていた感情が明るみになっていく。この出来事は戦争映画で友の感情を演出して映しとることに応用されて映画は成功するのですが、反対に家族の方は崩壊していきます。
神ではない人間が世界を演出するということ自体何か背徳的なことのようにも思えてきますし、不意に撮れてしまった何かの中にこそ映画の怖さと強さが表れるのかもしれません。その怖さと力に震えながらそれでも映画を撮り続けずにはいられない、スピルバーグの初心みたいなものを感じました。

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