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春休みの特別体験! 京都嵐山オルゴール博物館の魅力とは?

【約2,500文字、写真18枚】

 小5の娘が「オルゴール大好き! オルゴールオルゴール」という。宿題もなにも無い春休み、オルゴール博物館へ連れて行くことになった。
 入場料、大人は1,000円もするではないかっ。嵐山にあるから場所代かと訝しんだ。だが、博物館員さんによる実演や仕組みの解説、歴史の話など存分に楽しませてくれた。

天龍寺や野宮神社の近くにあります

■information
京都嵐山オルゴール博物館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺立石町1-38
電話番号:075-865-1020
開館時間:10:00〜17:00まで(博物館最終受付 16:15)
定休日:毎週水曜日 ※開館・閉館予定日は変更になる場合がございます。
料金:大人 1,000円 / シニア 700円 / 大学 700円 / 中高校生 600円 / 小学生 300円
事前予約:不要
所要時間:約45分
混み具合:誰かいるていど
写真撮影:全て可能
webサイト:https://www.orgel-hall.com/


京都 嵐山にきて、オルゴール?

店内1階
最近の曲もあります♪

 店内1階には販売用のオルゴールが陳列されている。アニメ「スパイ×ファミリー」もあったりする。ちょうど片手で持てるほどの大きさ。
 お試しくださいと案内されたので、喜んでゼンマイを回してみた。正直、クリアな音ではないが、そこがまたいい。 「指先に反響が伝わってカワユイ♪」とオルゴールの音色を楽しむ。最近の曲なのに、なぜか懐かしい音がする。

2階の博物館へ

 オルゴールの歴史は、1900年代の前半に姿を消す。産業革命による急速な発展に起因するという¹。

館内はこんな感じ

 上品なコレクションが並ぶ。なぜか気持ちのいい安堵感もある。「~大自然のメロディーと同質のものを感じずにはいられません。」¹

 ちなみに、「オルゴール」という名称は和製英語らしい。オランダ語の「オルガン」とローマ字読みの「オルゲル」が変化したものらしい。

 博物館員さんが個別に案内してくださる(たまたま空いていた?)。

 へえー、なるほどー。
 あれ? 
 娘はどこだ?

何をみておるの?

なんじゃこりは?

三日月と道化師 1999年(スイス) フランソワ・ジュノ作

 三日月に張った弦を弾こうとする道化に、三日月が舌を出すらしい。道化師の眉が音符で描かれていたり、歯がリアルだったり、印象的な造形から目が離せない。
 こちら、西洋の自動からくり人形で、「オートマタ」というらしい。時計のメカニズムを基に作り出された。ゼンマイを動力源として、オルゴールの音にあわせて複雑で繊細な動きをしてくれる。

曲芸師はハシゴの上で、片手倒立をしてしまう! 台座に仕掛けがあるらしいが、動力は1本のワイヤーだ?! 

 こんな話がある。ミリタリー・ミニチュアのポーズを開発していた模型会社のタミヤ。アニメ作家の大塚康生さん(代表作「ルパン三世 カリオストロの城」「未来少年コナン」など)からアドバイスを受けたときのこと、
「〜デフォルメしたほうが迫力が出る。走るにしても、まっすぐ走らせるんじゃなく、障害物を避けるような感じ。ちょっと体をねじるような。この、ちょっとが重要なんだ。そうすると、グッとリアリティが増すんだよ」²

 ここもリアリティのレベルが高い。大塚さんがいう「ちょっと」の動きがあるんだろうなあ、よくできておるなあと声がでてしまう。

 娘は、「夢にでそう」と、引きつった笑顔をしている。

 私、博物館員さんと目があう。
 コレクションはこれだけではありません。すんごいのがあります、と仰る。
 行こう行こう、早く行こう。

世界最古!!!

 博物館員さんは重々しく「こちら、世界最古のオルゴールでございます」。
 「へえ〜」と娘。
 「へ? えぇぇぇー!?」と私。

世界最古のオルゴール 1796年(スイス) アントア・ファーブル作

 初期の作品が、超・小型というのは驚きだ。最古のオルゴールは、大きな古時計より一回り大型のイメージがあった(勝手なイメージです)。だが、本物は、直径が3センチしかない¹。
 オルゴールは音をよくして、長時間演奏するために、大型化していったらしい。
 時計職人アントア・ファーブルによって発明・制作された。もともと金製の「印章」だった(日本でいうハンコみたいなもの)。偶然の産物ともいえる発明だったらしい。

 世界初のオルゴールが生まれて約200年。今もその美しい調べを奏でてくれる¹。

※最古のオルゴールを嵐山でご覧になりたい場合は最新情報をご確認ください。↓こちら

 他館へ貸し出されることも少なくないとか。本場スイスへの出展もあるらしい。どうして嵐山にあるのかなどの経緯も詳しい。

やっぱり気になるオートマタ

 「こちらの上品な彼はどう?」
 音楽を奏でながら、右手が動き、帆船の絵を描くらしい。紫の服は龍の柄で、東洋を意識して制作されたんだとか。

リトル・プリンス アンドロイドNo.4 1999年(スイス) フランソワ・ジュノ作

 不気味さはなく、上品なお顔だこと。
 将来、こんな彼が、娘と一緒に挨拶に来てくれたりしたら、私はどうしたらいいのでしょうなあ。

黄色い紙の絵は彼が描いた帆船です

「なんで裸足なん?」と娘。
 …しらんがな。

お人形と目があう

フランス人形のオートマタたち

 オートマタ専門の職人と、フランス人形のメーカーの共作。着用している服も一流の職人が手間をかけており、服飾文化の資料としても一級らしい。

 夜中にこの部屋を覗き見る勇気などない。なぜ怖いのか。人間とオートマタの境界が曖昧だからだろうか。
 アンドロイドに「人間らしい見かけ」を追求する石黒浩さんが、制作に苦悩する一コマを思い出した。
 石黒浩さんを悩ませたのは「実在の人間そっくりに作るのがいいのか、あるいは何か少し加工した顔で作るのがいいのか」³という問題だったという。
 手始めに実在の人間そっくりに作ってみる。人間一般を代表するような平均的な造形とした。すると、アンドロイドは作り物のような不気味な顔にしかならなかった³。

 こちらの人形たち、子どもらしい顔なのに、不気味さがある。大塚康生さんが言った「ちょっと」の動きが少ないのかもしれない。

 オルゴールの音色とオートマタは、普段使っていない感覚に触れてくる。少し不思議でファンタジックな体験であった。

〈おまけ〉

 父親らしく「おみやげ、500円までなら出してあげる」といってみたが、ショップにそんな安価なオルゴールはない。500円で買えるものは、せいぜい博物館限定マスキングテープくらいだ。
 そこで彼女は、運命を賭けることにした。(お小遣いを出すのは嫌らしい)

レッツ・ガチャTime!

 オリジナルグッズの運試しガチャだ。
 1回500円。
 ラインナップは、

S賞 オルゴール
A賞 エコバッグ
B賞 レターセット
C賞 マスキングテープ

 まあ、
 C賞のマスキングテープか、当たってA賞のエコバッグかな。

ガチャガチャッ
ガチャガチャガチャ
ゴトッ

 何? なに?

 …紙切れ?

カプセル金色やん!

 奥から店員さんが来てくれた!!

 S賞のオルゴールを当ててしまった強運娘。
 しかも「鬼滅の刃」のテーマソングだった。

 娘、オルゴールを聴きつつ、「また行く、絶対行く。明日行く」とおっしゃっている。

ソース;
¹:リーフレット「京都嵐山オルゴール博物館」ギド・リュージュ ミュージアム
²:田宮俊作『田宮模型の仕事』文春文庫、2000
³:石黒浩『どうすれば「人」を創れるか』新潮社、2011


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