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新宿駅、掴まなかった君の腕〜28歳の誕生日に思う〜

どうも、のむらです。
今までのnoteを見てるとわかるかもしれないんですが、私はいわゆる「恋愛体質」というやつでして。


恋をするとイキイキする。何気ない日常がとても楽しく感じる。灰色だった世界の色が鮮やかに彩られていく。
相手の知らない一面を見つけて更にときめいたり、その場にいなくても相手のこと考えたり…ワクワクするのです。

そんな私の、恐らく一生忘れない恋の話をします。

ーー今からもう6年前の9月15日。
一人の青年が、23歳という若さでこの世を去った。私より3つ年下。
肝臓癌だった。見つかったときにはもう手遅れで、ほとんど手の施しようがない状態だったのだと思う。
救急搬送されたことを彼のSNSで知っていた私は、なんとも言えない気持ちだった。まだ病名は書いていなかったが、嫌な予感しかしなかった。

なんでだよ、なんでこうなるんだよ。
私は君と、東京に来たら仲直りする予定だったのに。今度はちゃんと素直になろうって決めたのに……。
信じたくはなかったし、こんなことは思いたくなかったが、彼は恐らくもう長くはないのだろうと悟っていた。

確かに「ちょっと痛い目見たら良いのに」って思ったけど、ここまで痛い目見てほしいなんて思っていないよ。私の気持ち分かってほしかっただけなのに。

***
この彼が住んでいるのは、東京からだいぶ離れているところだった。牛肉が有名なとこ。

この人のfacebookの顔写真を見たとき、何故か会わなくちゃならないと思った。本能的に感じた。そこから遠方ながらも一生懸命連絡を取って(共通の友人なども居たので助けになった)、頻繁に連絡をする仲になった。交流したくて仕方なくなった。

彼の好きな人の話や相談をされて、複雑な気持ちになったりしたけれど、些細なことでも連絡をしてくれて、とても嬉しくなった。お姉様って呼んでくれて。遠いのに、近くなったような気がした。

でも些細なことがきっかけでこじれて。
今思っても結構ひどいことを言われたと思う。私も彼の自尊心を傷つけてしまったのだとも思う。にしたって、ひどいことを言われたと思った。
もうこの人とは付き合わなくて良いや、と思ったこともあった。半年くらい考えないようにしていた時期もある。
でも、心の底ではわかっていたのだ。
本当はちゃんと話すべき、話し合うべきだったと。それを正面からぶつかることを怖がって避けてきてしまった。
後で一生後悔するとも知らずに。

話せば旧知の仲のような心地の良さがあった。音楽仲間として、熱い心を持った彼とはずっと仲良くしたかったんだ。
そのまま本心をちゃんと口で伝えていれば、伝えられていればまた違ったのかもしれない。でも、私達は本音でそのままぶつかり合う勇気もなかった。だから、ラインの長文で大喧嘩したんだ。
ラインの長文喧嘩、マジでろくなことにならない。100%行き違い間違いナシ。

 かくかくしかじか、彼が一度うちに泊まったことがあった。もちろん手を出されることもなかったけれど(付き合ってもいなかったし)、翌朝目が覚めて、洗面所で歯を磨いていたら、彼も隣に来て一緒に歯を磨き始めて、恥ずかしすぎて慌てて洗面所を出たのを覚えている。思わず吹き出しそうになったわ。
カップルみたいじゃん、いきなりやめてよ。

出かけるという彼に、おにぎりを持たせてあげた。東京に来て少しでも多く思い出を作ってほしいと思った。
冷たい雨が降る中「行ってきます!」と元気に言ったあの姿が忘れられない。



彼と最初に東京で会った数週間後。また東京某所でご一緒することになった。最後は新宿駅で、彼と二人になった。
お互いに気まずさもあって、(彼は男友達の家に泊まることになっていた)駅のホームで並んで黙りこくった。私は酔っ払ったフリをして、俯いていた。

「オレ、ホーム反対側だった!じゃ!」
気まずそうに足早に去っていった彼。
私はなにも言えず、呆気にとられるだけだった。
電車に乗ると、彼にラインをした。
『気をつけて帰るんだよ』
すぐ既読がついた。
『おう』

…本当は分かっていたよ。
反対側の電車に乗るの分かっていて、わざとこっち来たんでしょ。仲違いしたままは良くないって思ってくれたんでしょ。
ごめんね、臆病で。
素直になれなくて。
つまらない意地を張ってしまった。

本当はずっとわかっていた。
私はあのとき、新宿駅のホームで
君の腕を掴むべきだった。分かっていて、わざと掴まなかった。
掴んでいたら、なにか変わっただろうか。
ずっとずっと、後悔している。

また続き書きます。




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