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ホグワーツレガシーは文句なくいいゲームだろ、禁じられた呪文バンバン撃てるし

初めに

ホグワーツレガシー、メインをクリアしました。
このレビューにいかがでしたか?という言葉は二度と登場しない。未プレイのカスが小遣い稼ぎに書く文章よりは、ずっとあなたにとって役立ってくれることと思うので、ぜひ参考にしてくれ。頼む。


体験としてとても楽しく、今ならネトフリでハリーポッター全作観れるから、観てからやってほしい。逆にハリーポッターを観て面白くなかった場合はわざわざやる必要はないと思う。ファンディスクの性質を持つ以上、それは前提で、にもかかわらず未修でもある程度楽しめてしまうことのほうがこのゲームの特殊性とも言える。もちろん、褒めている。
体験の質に大きな差が出てきてしまう以上、いくらハリーポッターが「古典」になってしまっているとしても、最低、1巻は履修した方がいいと思います。

さて。
19世紀のホグワーツを舞台にした、一連の事件を追う物語は、ジャンルで言うならオープンワールドゲームであり、ホグワーツの外にも結構な広さの世界が広がっているのが意外な点かもしれない。風景が一変するほどの地理感ではないものの、クエストと探索には十分な広さだ。メインのストーリーはめちゃくちゃ面白いわけではないけれど、まあつまらないというほどのものでもない。盛り上がりとしては十分だ。原作のワクワク要素(トロルとの戦いや、禁じられた森の探索、ポートキーやポリジュース薬による変身など)を忠実に取り込みつつ、ハリーポッター特有の、ちょっとくどいほどの家族愛が垣間見え、いい感じに爆発とかが起き、いい感じに解決する。

気になるホグワーツの作りこみについて。
練られている。至高の領域に近い。
心配しなくていい。それだけしか言えない。
あなたが廊下を歩けば壁の絵画は優しく微笑んでくれる。ゴーストが急に壁から現れて、広間の生徒は吠えメールで親からお叱りを受けている。あなたは温室でマンドレイクを栽培することもできるし、隻眼の魔女の像の裏からハニーデュークスの地下に行ける。

そう、ホグズミードに行けるのは嬉しい誤算だった。こちらも極めて細かく再現されている。雪をかき分けて行くことこそできないものの、ストーリーの進行に応じて季節が変わるので、ハロウィンや雪混じりの屋根を楽しめる。

大広間っていいよね。毎日そこでしかご飯食べられないことに目をつぶれば…


また、あなたは飛ぶことができる、箒で。
飛行術の授業はもう受けただろうか。クディッチは残念ながら開催されていないが、まああんなクソゲー1年生のときにシーカーに選ばれでもしない限り普通は楽しめないので、それほど問題ではないだろう。

そしてあなたは飛ぶことができる、ヒッポグリフの背に乗って。
野生の魔法生物は密猟の憂き目にあっていることをご存じだろうか。後にニュート・スキャマンダ―さんは自分のカバンのなかに魔法生物の動物園を作ってご満悦になっていたが、魔法生物をカバンで捕まえることは本作でも可能だ。動物たちと触れ合ってゲットしたアイテム(毛や羽)は装備の強化にも使える。


要するに、あの世界でやりたかったことを相当カバーされていて、
そしてそれがゲームプレイに落とし込まれている。


ホグワーツレガシーを語るうえで、最も重要なのはこのポイントだろう。
ホグワーツのウォーキングシミュレーターとしては、満点と言える。しかしそれだけなら数時間で飽きる。
このゲームは魔法界で冒険できるのである。
それはつまり、原作とは関係のない、ゲームとしての面白さをいかにミックスできるかという話になる。

ゲームシステムへの原作要素の落とし込みが異常にうまい


ただ世界観を再現することと、それを遊びに落とし込むことは天と地の差がある。
そこが非常に上手だったから、面白いゲームになっている。

授業を受けて、呪文を覚える。授業シーンは世界観を崩さないものであるうえで、システムはゲーム要素としてすっきりと整えてある。
薬草学で育てた薬草を使って、魔法薬学の授業で鍋をかき混ぜる。いわゆるクラフト要素だ。
呪文学でアクシオ(呼び寄せ呪文)を学べば、多くの物体を引き寄せることができる。暗いところはルーモスで進めるし、物体を移動させるならばウィンガーディアム・レヴィオーサが最適だろう。
洞窟や地下墓地内で、取れる選択肢から謎解きの正解を考えるという意味では、ブレスオブザワイルドの祠に似た雰囲気もあった。もちろん、比較にはならない。オープンワールドの話をするときにBotWを持ってくる人間は、相当親しんでいるか、あるいはオープンワールドゲームをBotWしかやったことない人で、世のほとんどのアフィ記事は後者なので無視して構わない。(そもそもプレイしていない可能性も高い)
ただ、フィールドスキルが複数与えられている状態で。それを組み合わせて行う謎解き要素、という意味では「ゼルダの伝説」がわかりやすいだろう。

当然、闇の魔術に対する防衛術の授業も健在だ。
原作では教師陣が多数の人間的、あるいは社会的問題を兼ね揃えていて終始緊張感があったが、今作の先生はそんなことはない。かといって温厚かと言うとそうでもなく、あの教室につり下がっているクソデカドラゴンの白骨標本は先生がとってきたというのだから頭も自然と下がる。
彼女は闇の魔法使いが最も恐れる魔法のひとつ、エクスペリア―ムスを初め、戦闘に役立つ呪文を教えてくれる。というか呪文ってほとんど戦闘に役立つ。

ホグワーツは常に強者を欲している。

かのハリーポッターも、エクスペリア―ムスの詠唱が異常に早口だったことで生き残ってきたと言っても過言ではないし、先達としてお手本を見せてやろうという気概にも満ちてくるはずだ。

一点、パトローナスは少なくとも、メインクエストでは登場しなかった。原作再現という意味ではそこだけが少し残念だけれど、ゲーム上、対ディメンター特化の魔法は扱いにくいだろう。そのあたりの温度感が、信じられないほど上手い。

探索(フィールド、宝箱、その他収集要素のあるリワード)を主軸として、戦闘をそのための要素として構築している。多くの場所でレベリオ(姿を現せ)をかけると、フィールドガイドのページが現れる。各地(ホグワーツの船着き場、寮の得点の入る砂時計、校長室前のガーゴイル、その他もろもろ)のガイドは、原作ファンにはたまらない仕掛けであるうえ、これが経験値に繋がっているのは素晴らしい。探索の面白さ、あるいはファンの喜びが、そのままゲームシステム上のリワードとして設計されている。

早い話が、聖地巡礼というやつだ

呪文習得のシステムがちょっとしたミニゲームなのも、単純に見えて上手いと思う。習得って何かしら負荷が必要な行為だから、ワンクッション挟むのはいいアイディアだ。簡単にバリエーションも増やせるし。

箒で空を飛ぶということが、オープンワールドにおいてどのような意味を持つのかということ


飛行について

これは飛べて嬉しい!だけではない。もちろん飛べて嬉しい!を引き延ばすためにちょっとしたレースミニゲームがあるのも良い(あってくれよ、と思ったらあったので)。

飛行は間違いなくユニーク要素だと言える

当然といえば当然だけれど、飛行を前提としたマップ作りを意識している。
本作のゲームシステムとしての飛行の本質は、上下の移動が簡単にできる、という部分だと思う。
ほぼ全地域で箒が使えて、垂直上昇、降下が可能なので、崖がちの地形が負担にならない。多少見つけづらいギミックも、上空から見渡すことができるのはユニークさに繋がっている。
崖と山、つまり起伏のある地形は、フィールドを複雑に見せるのに大切な要素だ。ホグワーツの城も、デカい湖に峻厳とそびえる威容こそが味となっているわけで、世界観の再現に険しい崖は欠かせない。箒で移動が容易な分、地形にコントラストを大きくつけることができているのは上手いと思った。
ちなみにファストトラベルは煙突飛行粉(フルーパウダー)だ。ゲームシステムの肝となる要素がいちいちファン心をくすぐる。

戦闘について

レベリオで索敵、目くらまし呪文としてステルス要素が搭載されている以上、ステルスキルはどうなるかと思っていたら、まさかのペトリフィカス・トタルス(勇敢なるネビル・ロングボトムに10点が与えられたことで有名な魔法ですね)。こうしてホグワーツに転入した、成績優秀で人望も厚い主人公は、姿を隠してこそこそとならず者に近づいては、背後から石化魔法をかけまくるというユニークな戦闘スタイルを確立させていく。
闇の魔法使いと正々堂々戦うのは後世に任せ、自分は影に徹する。その割には妙にオシャレな帽子をかぶり、ヘンテコなメガネをかけているのだから始末に負えない。

エイムはほぼ自動であるため呪文連打とガードのタイミングさえ外さなければ難しいものではない。一方で、間合いを瞬時に詰めてくる敵や雑な配置は若干のストレスになる。とはいえこの程度は、ホグワーツ城の出来を思えば文句をつけるほどのことではない。

唯一、ラスボス戦はひどい。薄々感じていたけれど巨大ボスのアクションはHPに比して単調で、ちょっとどうしようもない。
というか、選択肢が自由にあるアクション戦闘のラスボス戦って、その売りである自由さを制限せざるを得ないものが多いので、どうしてもつまらなくなるのかも。これはホグワーツレガシーが悪いというよりはオープンワールドゲームあるあるかもしれない。

装備について

本作は装備品が攻撃力、防御力を決定するモンハン形式をとっている。スキルも装備ごとに様々だ。学生生活に攻撃力、防御力のパラメータが必要な時点で相当面白いが、「クルーシオのダメージを増加させる」メガネを手にしたときはさすがに爆笑してしまった。退学処分しろ。

スキル「残酷Ⅰ」←許されざるだろ

この装備品、本作最大の問題があって、初期状態での所持上限数がとても少ない。探索で得られるものが装備品かお金しかないため、ちょっと探索を楽しんでいるとすぐに持てなくなる。
他の要素を進めることで所持上限は増えるのだが、装備は結局ひとつしか身に着けない以上(回復薬の所持数上限などと違って)、その数をリワードとして設定するのは筋が悪いと感じた。
前述したように探索が骨子となるゲームなのだから、それを妨げる要素はインセンティブよりもストレスのほうが大きい。
そして、特定の宝箱やクエスト報酬を覗いて、手に入る装備品がランダムなのもネックだ。ある程度プレイヤーのレベルに応じているのだろうか、以前大きな宝箱から手に入れた装備が、その辺の野党の小箱から出てくる装備に力負けすることがザラにある。せっかくフィールドを作りこんだのだから、それなりの説得力を持った報酬が欲しかった。フレーバーテキストをちょっと足してもらうだけで、ずっと没入感は増したように思う。

全体を通じて

ファンディスクみたいなゲームが、これほど上手く作られていることって滅多にない。
ホグワーツを舞台にしたオープンアクションゲーム、とはよく言ったもので、ハリーポッターを未修の人でも、それなりに楽しめると思う。
原作の世界観が持つ力が大きいとうのもあるけれど、一番は原作のごちゃごちゃに詰め込まれたちょっともうキモいほどの要素を解体し、取捨選択した開発者の努力だと思う。びっくりした。

城にある絵画が動くときに僕たちの心も動くこと、それこそが物語の持った力であり、時を越える魔法なのだと感じた。たとえ原作者が今どんな発言をしていようが、物語が生んだ世界と、その物語によって生まれたあの日の自分の感動を、否定する必要はない。

ゲームとしていわゆる各地の敵対NPC拠点や、収集要素を散りばめたのも、新鮮さは薄いけれど違和感も無い。ホグワーツ城とホグズミードの作りこみを考えると、バランス的にもちょうど、といった印象。ローカライズやUIが十全とはいいがたいものの、余って補えるほどの熱意を感じた。

原作、映画を観たことがあって、興味があったらプレイして損はない一作だと思います。絶賛ではなくても、酷評されるものでは決してない。やりたいこと(ホグワーツ城を歩く体験、複数魔法を組み合わせたテンポのいい戦闘)に注力して、まとめきった、いいゲームだと思いました。

最後に、ホグワーツの叡智に満ちたクイズでも。

知らねえよ。


FAQ

・ダイアゴン横丁へは~
→残念ながら、行けない。でもオリバンダーの杖の店はホグズミードにも出店しているから安心してほしい。

・魔法生物は~
→捕まえることも、お世話することも、ものによっては乗ることも可能。ニフラーが財宝を盗んでいるなど、ふふっとなるサブクエもちらほら用意されている。

・サブクエストのNPCキャラクターに個性が無い。
→よく聞くんだけど、キャラクターにものすごい個性があるオープンワールドゲームってじゃあなんですか?と思う。グラセフとかに出てくる狂人たちを指しているならなるほど仕方がないけれど、ホグワーツにはそぐわない。個性たっぷりのキャラクターに出会いたければJRPGか、ソシャゲをやったほうがいい。
顔の造形が似たり寄ったりで覚えにくいというのは確かにあって、ゴーストオブツシマやホライゾンゼロドーンで感じたのと同じだ。こう、キャラを美形にしすぎると怒られるみたいなポリコレの文脈を孕んでいることもあって一概に否定できるものではないので、このあたりの議論は難しい。

・ポリコレが~
→有色人種の生徒が多い印象は確かに受ける。とはいえ、原作でもまあまあ出てくるので気になるほどではない。はっきり言って、ゲームの主題ではない。


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